始 ま り



眠らない街ザナルカンド

「シューイン兄ちゃん、待って!!」

、お前は待ってろ」

「ヤダ! あたしも行く。レンさんを助けに行くんでしょ? あたしだって召喚士だもん。役に立つよ」

「けど・・・・」

「兄ちゃんに何か遭ったらあたし一人ぼっちになっちゃうんだよ」

・・・・解った。けど無茶はするなよ」

「うん!!」


二人は僅かな荷物を持つとカガセド山に向かうためバイクを走らせた。

       
「間に合うかな?」
       
「大丈夫だ。レン達の隊はまだベベル軍のいる場所に出発してないから」
       
「じゃあ兄ちゃんは何処に行くつもりなの?」
       
「ベベルの首都だ。あそこにこの戦争を終わらせる事の出来る武器があるんだ」
     
「それじゃあ、ベベル側が使えば終わるじゃない。どうして使わないのかな?」
       
「作った奴らにも制御出来ないらしい・・・・。だから俺が使ってやるんだ」

       
「だだいじょうぶなの? ほんとに・・・・」
       
、怖くなったか?なんならお前は止めろ。そしてここから違う国に逃げろ」
       
「怖くないよ!兄ちゃんを一人で行かせる方がもっと怖いよ」



     


ベベル軍研究所

       
「うっわー兵隊さんが一杯だ。兄ちゃんあたしが召喚獣を呼び出して引き付けておくからそのうちに・・・・」

「馬鹿な事言うな!! お前をそんな危険な目にあわせられるか」

       
「でもさっき聞いた話じゃ、もうレンさん達はベベルに着いてるじゃない。時間が無いんだよ?」
       
「くっ ・・・・」
       
「大丈夫だよ。いざとなったらバハムート君を呼び出すから。彼はあたしを守ってくれるよ」
       
「そうだな・・・・。あいつはお前を守るために召喚獣になったんだもんな」
       
シューインはの頭に手をそっと置いた。
      
「なあに? あたしはもう子供じゃないよ」
       
「そう言うのは彼氏が出来てから言う言葉だ」

       
そう言うとの金茶の頭を撫でた。
       
「頼むぞ
       
「任して!!」



       
研究所は混乱した。
       
いきなり召喚獣が現れて施設を攻撃し始めたのだ。

       
「イクシオンさんお願い。時間稼ぎなのよ。破壊はゆっくりとね」

       
は何故か召喚獣に敬称を付けていた。
召喚士になる勉強を始めて知った事実。       
祈り子はエボンが無理やり能力ある者を祈り子にしていたのだと知った。       
彼女も狙われた。けれどそれは幼馴染の少年に寄って阻まれた。       
彼女がそれを知った時には少年はバハムートと言う召喚獣になっていた。

       
「兄ちゃん着いたかな。もうそろそろこっちもやばいわ。
イクシオンさん、ありがとう。もう少し頑張ったらバハムート君と交代ね」

       
はイクシオンにそう語りかけた。


       
その時
       
「おい!お前ここで何をしている?」
       
「あっ」
       
「お前はザナルカンドの召喚士だな。この騒ぎの原因はお前の仕業だな来て貰おう」
       
「それはちょっと・・・・遠慮しておきます」
       
はイクシオンの側ににじり寄った。

       
「動くな!! 動いたら撃つ」

       
「はい、そうですかって言う訳にはいかないの。イクシオンさん」
       
の一言でイクシオンはエアロスパークを放つ。
       
辺りは瓦礫とかし煙と埃で当たりは灰色となった。

       
(いまだ!!)
       
はイクシオンの背中にしがみ付いた。

       
「飛んで、お願い」

       
イクシオンは思いっきりジャンプした。
       
「ふーこれでなんとか逃げれるかな・・・」

       
けれどもその希望は叶えられなかった。兵の打った弾がに当たったのだ。

       
「う・・・そ・・」

       
弾は背中から入り肺に到達していた。

       
「シュー・・・インにいちゃ・・・あ・・ん」

       
の手はイクシオンから離れて地面に叩き付けられた。


       
「うっ・・・・」
       
の命のともし火は消えかけていた。力の消失と共に召喚獣も消えていた。

       
「このガキはもう死ぬ。他にも仲間がいる筈だ。探せ!!」

       
ベベルの兵達はをそのままにシューインを探すため施設の奥へと戻っていっった。

       
(あたし・・・死ぬの? 困ったなー兄ちゃんに怒られちゃう。
それに異界送りして貰わないと迷っちゃうよ。あっ目が見えなくなってきた・・・)

の意識はそこで途切れ次第に体は冷たくなっていった。



       
? なの? いやー」
       
どれくらいたった頃だろうか。一人の女性が冷たくなったを見つけた。
       
「どうして貴方がここに・・・ここで冷たくなってるの? どうして・・・・」
       
(レンさん・・・あたしより兄ちゃんを助けて!! 聞こえないかな? 気づいて!)

       
・・・今、異界送りしてあげるからね」

       
レンは杖を持つと異界送りの舞を舞い始めた。

       
(あっなんか暖かい・・・・レンさんの気持ちが伝わってくる・・・レンさんありがとう)
       
・・・?」
       
「えっ? 見えるのレンさん? あたしの言っている事解る?」

       
、貴方まさか異界に行けないの? わたし間に合わなかったの?」
       
「大丈夫だよ。テヘヘ・・・ただ兄ちゃんを助けて欲しくて」
       
「シューイン? 彼も此処に来てるの? まさか彼ももう・・・」
       
「レンさん時間がないの地下に行って。兄ちゃんはそこにいるから」
       
「どうして地下なんかに・・・何があるの」

       
「戦争を終わらす事の出来る兵器だって言ってたよ。それでレンさんが死ななくて済むからって」
      
「だからって・・・貴方が死んだら何もならないてしょう」
       
「へへ失敗しちゃった。だけどレンさんの異界送りのお陰で迷わなくて済むから。さあ早く兄ちゃんを・・・・」

・・・・」
       
はレンにそう言って微笑むと光となって消えていった。

     


     

1000年後のべベル
       
       
「それでは貴方、行って来ます。ユウナの事をよろしくお願いします」
       
「ああ ゆっくりしておいで。子供が産まれたらすぐにユウナと行くからね」
       
「そんな無理です。アルベルト族は動き回ってるんですから・・・動けるようになったら帰ってきますから。ねっ」

       
幼いユウナを抱きしめると彼女はルカ行きの船に乗り込んだ。
       
「シドさんによろしく言っておいてくれよ」
       
「ええ」
       
ブラスカとユウナは妻であり母である女性が乗った船をいつまでも見送っていた。
       
「よろしかったのですか? ブラスカ様、身重の体で旅に出させるなど」
       
「アーロン・・・妊娠は病気じゃないそうだ。それに安定期に入ってるから大丈夫だ。心配なの私達の方さ」
       
「何故です?」
       
「戻って来るまで、私とユウナが生活出来るのか、とっても疑われてね。私は家事が下手らしい・・・・」
       
「ああ、それで私に一緒に住んでくれと頼まれたのですね。奥方様は」
       
「そうらしい・・・・さあユウナ帰るよ」
       
「ハーイ」


       
数ヵ月後、ブラスカの許に妻のリィナから連絡が届いた。
       
女の子が産まれたと言う知らせだった。

       
「ユウナ、お前に妹が生まれたよ。お前はお姉ちゃんになったんだ。わかるかな?」

       
ユウナは首を傾げる。
       
まだ二歳にもならないユウナには理解できない事だった。
       
けれど父親の喜びの笑顔を見て楽しい事だということは解ったのだろうニコッと笑うと

       
「ママは?」
       
「もう少し待っててくれるかな。まだすぐには帰ってはこれないから・・・・」
       
「うん」
       
「今日はお祝いにケーキでも食べようか」
       
「ワーイ」
       
「どうしたんですか二人ともはしゃいで?」
       
「産まれたんだ。今連絡が入った」
       
「ほんとうですか! おめでとうこざいます。男の子ですか?」

       
「いや女の子だ。金茶の髪で青い瞳だそうだ」
       
「ブラスカ様・・・・」
       
「なあに住む所はベベルじゃなくても良いんだ。さすがに彼女もここに残りたいとは書いてなかった」


       
リィナはアルベルト族出身だったので、ベベルの者達に嫌がらせを受けていた。       
けれども彼女はブラスカにベベルを離れようとは言わなかった。       
ただ彼女と結婚したために寺院で出世の道を絶たれたブラスカをとても心配していた。
       
しかしブラスカ本人はそんな事は全く気にしてはいなかった。       
彼には愛する妻と娘がいるそれで十分だった。

       
「名前はどうするんですか?」
       
「リィナには男の子だったらライ。女の子だったらにするよう伝えてある」
       
「それでこれからお祝いですね」
       
「ああ、何か食べに行こうと思ってね。アーロンも行こう」
       
「はい、そうさせて頂きます」

しかしその喜びは二ヵ月後大きな悲しみとなってブラスカの許に帰ってくる。