出会い



      ザナルカンドの海

       「ティーダ、こっちこい」
       「ヤダ」
       「ちぇっ そんなんじゃブリッツの選手には為れないぜ・・・」
       「ジェクト この子まだ小さいのよ。波がこっちに向って来るのが怖いのよ」
       「解ってるよ。ちょくら海に入ってくるからお前たちはそこで見てろ」
       「ジェクト!!」

       ジェクトは止める妻のルイの声を無視して海に入っていった。
      
       「こんなに気持ちがいいのにティーダの奴め、そうだ!こんど泣いても入れてやるからな」

       ジェクトは岸から少し離れた所でプカプカと浮いていた。
       岸ではティーダが母親と砂遊びをしている。
       一人でいるのも面白くないジェクトは岸へと向きを変えようとした。
      
       「んっ?なんか聞こえる」

       ティーダ達の許へと戻ろうとした時何か聞こえた様な気がしてジェクトは沖へと向きを戻した。

       「なんだ、ありゃ!?」

       何かが自分の方に漂ってくる。その物は微かに動き信じられない声が聞こえる。

       「嘘だろ!?」

       ジェクトは耳を疑ったが僅かに聞こえるその声は赤ん坊の物だ。
       彼は急いでその物体の所に泳ぎだした。

       「おめえ、どうしてこんな所にいるんだ?」

       ジェクトは物体を覗き込みながら言う。

       「だー!!」

       中身はやはり赤ん坊だった。
       赤ん坊はジェクトを見つめるとキャッキャッと笑った。

       「おめえ・・・っとこのままじゃ風邪ひいちまうな。今、助けてやっからな」

       ジェクトはなるべく赤ん坊が濡れないよう庇う様に泳ぎだした。
       岸を見るとジェクトの様子に異変を察知したルイが心配そうに彼を見ていた。

       岸になんとか辿り着くとルイとティーダが駆け寄ってくる。

       「ジェクトどうしたの!?」

       「よう、こんな物拾っちまった」

       ジェクトは二人にそっと赤ん坊を見せる。

       「まあ!!」

       「おとうと!!」

       「おっティーダは弟が欲しかったのか。よしこいつは今日からティーダの弟だ。」

       「うん!」

       「ジェクト!?そんな事勝手に決めていいの?」

       「あん?大丈夫だって。こいつは俺の所に向って漂ってきたんだ。俺達の家族になりたくてな!」

       ジェクトはそう言って赤ん坊を抱き上げた。

       「あー ティーダも!!」
       「よし!」

       ジェクトは赤ん坊をルイに渡してティーダを肩に乗せると

       「名前を考えなきゃな」

       と笑った。


       家に戻るとルイは赤ん坊を着替えさせるためにお風呂場に連れて行った。
       その間ジェクトとティーダは赤ん坊の名前を考える事にした。

       「うーんジェクトとティーダの間をとってジェーダはどうだ?」

       「めっ」

       「だめか・・・・それじゃあショーンでどうだ」

       「うん」

       「おいティーダ、おまえほんとに解ってっのか?」

       「うん!!」

       じゃれあっている二人にルイが声を掛けた。

       「おっ上がったか。ちびの名前決まったぞ!ショーンだ」

       「ジェクト・・・・その名前はだめよ」

       「気にいらねえのか?」

       「ちがうのこの子女の子よ」

       「えっ!?おんなか?」

       「!!」

       「「えっ??」

       「
       「よし解った。こいつは今日からだ。いいかティーダ、は女だからお前が守ってやるんたぞ」

       「うん!!」

       それはまだ幸せだった頃の風景。




      数年後 ベベルの船着場

       「ユウナ、いい子でいるんだよ」
       「はい、とうさん」
       「ユウナちゃん、安心しろブラスカは俺が守ってやっからな」
       「ジェクトさんありがとう。ジェクトさんも怪我しないでね。またジェクトシュート見せてね」
       「クーいい子だなユウナちゃんは」

       そう言うとジェクトはユウナの頭をクシャクシャと撫でた。

       「おいジェクト」
       「なんだよアーロン。お前もユウナちゃんとお別れしたいのか」
       「違う!!せっかくの親子の別れを邪魔するな」
       「すまねえブラスカ・・・・つい・・・・俺ちょくら用たして来る」

       ジェクトは頭を掻きながらその場を離れアーロンもその後を追った。


       「ジェクト?どうした」
       「なんでもないって。ありがとなアーロン、俺って気が利かなくてよ。ユウナちゃん見てるとを思い出してな」
       「お前の娘の名か?」
       「ああユウナちゃんより二つくらい下でな。金髪に海の青と同じ色の瞳の大人しい子だ。
        上の兄貴はティーダって言うんだがこの頃俺に反抗的でな」

       ジェクトは愛しい者を見るように海を見つめていた。

       「会いたいだろうな・・・・」
       「ああ、だからブラスカがここから連れ出してくれると言ってくれて感謝してるよ。
        ガキどもはまだ小さいし、あいつも体が余り丈夫じゃないんだ」
       「そうか・・・・帰れるといいな」
       「ああ」

       そう言ったジェクトの声は心なしか寂しそうだった。


      

       「ー!!」
       「お兄ちゃん、お帰りー」
       「また こんな所に・・・・風邪引くぞ。家に帰ろう」
       「もう少し、お母さんにもたのまれたし・・・」
       「無理だって!!あいつを待ってたって・・・」
       「兄ちゃん!!どうしてそんな事言うの?お父さんに帰ってきて欲しくないの」
       「だって母さんもも泣いてばっかりじゃないか、父さんがいなくなってから・・・・」
       「ティーダだって泣いてるよ」
       「違う!目にゴミが入っただけだ」
       「そっか・・・・」
       「ほら帰るぞ。明日俺も一緒に此処に来るから・・・」
       「うん!」

       は知っていた。兄のティーダが父のいなくなった日の夜中
       そっと家を出て父のジェクトを探していたのを・・・・。

       ジェクトは海で溺れたと周りの大人は言った。
       酒に酔って海に入り溺れたのだと・・・・。
       心無いものは妻子を捨てて何処かに行ったのだろうという噂を
       口にする者までいた。
       負けん気の強いティーダはそんな噂が耳に入るのを聞くたびに不機嫌になり
       父親を憎んだ。
       自分達を置いて行方不明になったジェクトを。
       そんな彼の拠り所は母と妹のだけだった。


      一年後

       「離せよ!!俺はとは絶対に離れない此処でと二人で暮らすんだ!」
       「無理なのよティーダ、お前達の母親のルイは死んでしまって子供達だけで暮らさせる訳には行かないの。
        会えなくなるわけじゃないんだから、ねっ」
       「駄目だ!!」

       ティーダは母親の姉だという女性の手を振り解くとを連れて行こうする
       男の手に噛み付いた。

       「いてっ!!」
       「ティーダ!!止めなさい」
       「絶対とは離れない!!」
       「お兄ちゃん・・・・」
       
       けれども所詮子供の力で大人に勝てるはずもなくとティーダは引き離される。
       ティーダは懇願するが子供だけで住まわせれる筈もなくはジェクトの親戚だという夫妻に手を引かれた。

       「さあちゃん、行こうか・・・・」

       は涙を溜めた瞳でティーダを見つめた。



       ¨カチャッ¨と扉が開いた。

       「待ってくれないか」
       「どちら様ですか、貴方は?」
       「その子供達の父親ジェクトの友人だ」
       「えっ?」
       「ジェクトに子供達の養育を頼まれた。俺に預からせて欲しい」
       「そんな 一年前にジェクトは海で死んだんだよ。どうやってあんたに頼むんだい」
       「虫の知らせでも会ったんだろう。いなくなる前に頼まれていたんだ。
        何かあったら頼むと。俺はその後ここを離れていたから・・・」
       「でも・・・・」

       「ティーダと言ったな。と離れたくないのだろう」
       「うん」
       「は?」
       「もお兄ちゃんと一緒にいたい!」
       「そう言うことだ。心配なら時々見に来ればいいだろう」

       その男の言葉に大人達は少し安堵の表情を浮かべながらも文句を言いながら家を出て行った。

       「あの・・・・一応、お礼を言っておくアリガト」
       「あの名前はなんて言うんですか?」
       「アーロンだ」
       「アーロンさん・・・・父さんのお友達?ブリッツの選手なの?」
       「見たことないよアーロンなんて」
       「お兄ちゃん」
       「ティーダ、ジェクトが心配してたぞ。男のくせに泣き虫だって」
       「なっ!!」

       ティーダは怒って家を飛び出していった。

       「まずかったか・・・・」
       「アーロンさん宜しくね」

       はそんなアーロンが好きになれるそんな気がした。