音楽を聴いて絵をみて旅をして、何でもいいのですが、
ひとつテーマを見つけて川柳を連作します。
五七五の一行だけでなく、連作はすこし場面が広がります。
句と句が凭れあってもいけないけれど、
すこしワイドな制作の場があると興味を引く文体になります。
兆戦してみましょう。
私のわたくし探しの旅です。
2008年
文楽11月公演 ドラマ吟 本多 洋子
なぐさみは靭にせんと猿の皮
人の世の裏 さびさびと猿まわし
靭猿すっ頓狂に三番叟
恋激し小袖馬上の引き回し
愁嘆場 黄八丈には縛り縄
太棹は切々と鳴る 竹矢来
群集の一員となり刑を観る
口上は襲名披露 八重垣姫
狐火の青 ゆらゆらと十種香
みずうみを神の使いの白狐
姫か狐かキツネか姫か霧の湖
ひらりひらりと神通力の白狐
どろどろと太鼓 青々と狐
ぬいぐるみを忘れ女狐乱舞する
文楽はねて初冬の街に迷い出る



2008年12月 更新
国立文楽劇場
11月 公演
靭 猿
恋娘昔八丈
本朝廿四考

生なアートを食べる 本多 洋子
華麗な女を硝子に挟む
アートになったチョコレートの銀紙
朱に溶ける夢と 女の青い瞳
花びらを絞る 少女を描くために
透明になる 秋のまんだら
練り歯磨きだって 血にも肉にも
壁に囲まれて演じきる 長編小説
縫い合わせ垂らして 裏もごらんなさい
こっくりさんにうなされているボールペン
お刺身で食べる 新鮮なアート
風も洪水も自己中心の啓示
ふいに飛び立つ イタリア半島
夕焼けの中で五人は空瓶に
花も虫もチェスもわたしも 哭いている

2008年11月 更新
ある美術展をみて大変なショックを受けました。
芸術作品を描こうという意識もなく人の評価を気にすると言う事もなく、日常の生活からはおよそかけ離れた所で、自分の世界に没頭している人たちの作品です。
「そんなの芸術じゃない」と言う人と「それこそ芸術だ」と言う人に意見は分かれるかもしれません。
オリンピックの夏 本多 洋子
今も昔も大和なでしこは強い
バトンタッチの上手さで夢に辿りつく
完走した蝸牛なら褒められる
トランポリンであの世を少しだけ覗く
平均台の真上で剥す鬼の面
射程距離に置く曼珠沙華の赤
讃えてあげる先頭の蟻最後の蟻
CGの花火が空を占拠する
後戻りは出来ぬ北京の大時計
金メダルを数えて朝刊をたたむ
2008年9月 更新
2008年の夏は北京で始まり
北京で終わりました。
中国の威信を世界に見せ付けた夏でした。そしてテロや戦争の火花もチラチラした夏でした。
とにもかくにも無事終了しました。
これからどんな後遺症が現れるでしょうか。

お夏清十郎
許されぬ恋路の果の歌念仏
いとほしき殿御を想う波の音
しばらくは琴の調べの恋心
物狂い清十郎の笠を追う
袖を畳んでお夏の恋の震えている
夢か現か 清十郎か花笠か
逢えぬのはみな偽りの神頼み
神が裂く水も漏らさぬ恋の仲
笠も髢もかなぐり捨てる夏の恋
鑓の権三 重帷子(やりのごんざ かさねかたびら)
とろりとろりと娘心は油壺
腰もとに添い纏いたし帯を縫う
遠景に競馬ゆく蹄の音
今は昔 鑓の権三かキムタクか
一子相伝 愛の迷路の落とし穴
妻と母と女のいろの揺れ動く
帯に名残の その一念の蛇となる
弁解の出来ぬ成り行き 重なる帯
夜を這うて文楽の足カタカタ鳴る
密通の証拠に帯が残される
姦通は人畜の身の言い訳なし
無念なり五臓六腑を嘔吐する
妻敵討(めがたきうち)の伏見京橋 盆踊り
明るさのその影におく敵討ち
妻敵討もそのうちに載る瓦版



2008年8月 更新
文楽で川柳 本多 洋子
句会吟より 本多 洋子
胸を突く話に弱いさくらんぼ
燻ぶっているのはおとといの言葉
象の鼻取り沙汰される訳がある
象の鼻夢中になれるものがない
とりあえず一報をまつ白桔梗
したたかな女に傘を持たされる
あじさいの影を踏むのは止しなさい
いもうとの泣き声がする赤まんま
脳内革命 アカペラを聴きに行く
フェルメールの青なら夢中になれますね
2008年7月 更新
この夏は岩手宮城内陸地震に始まり、天災人災共に尋常ならざるニュースが日本列島を駆け走った。
「テーマで川柳」のテーマも今ひとつ絞りきれない現状。
今月はテーマのない川柳を取り上げてみたい。
つまり私の最近の句会吟から抜粋してみることにする。おのずからなる私のテーマが見えてくれば幸いである。

白神山地 本多 洋子
女どき男どきの原生林や創世や
その底にコロボックルの棲む青湖
くすくす笑う妖精なれば花うつぎ
竜神は息をひそめてブルーな日
ごうごうと水の柱をブナ林
朽ち木なお神の言葉を待ちわびる
無口になって小さな木の橋を渡る
湖青し神域に足ふみ入れる
てのひらに掬う心の水の彩
ちらちらとコロボックルの目と出会う
ぶなの樹は水の言葉を告げにくる
楡もクヌギもシンフォニー白神



2008年6月更新
今回のテーマも旅
中でも5月の白神山地は神域そのものの風情でした。
阿蘇草千里から阿蘇中岳
烏帽子岳中腹に広がる広大な草原を草千里という。
黒牛・赤牛それに馬たちが放牧されている。持ち主が解かるように、
背中には毛染めを使って印や番号が書かれていると言う。
草千里 牛には牛の暗証番号
草千里 馬であること人であること
草千里 犬の持ち込みお断り
ゆうゆうと時の流れる草千里
人間が小さくなった草千里
大型ロープウエーで阿蘇中岳火口付近まで登る。途中にはセメントで作ったパンケーキのような避難カプセルが設置されている。ガス発生は微量と言う事で火口を覗ける地点まで接近できた。もくもくと湯煙のような白い煙の立ち上がる中、雨水が溜まってそれが沸き立つている通称お釜というコバルトブルーの池が鮮やかに見えた。
中岳の半分ほどは黄泉の道
慟哭も怒りも見える噴火口
思い止まる岩石がある崖っぷち
神さまのお腹が見える噴火口
蟻むかでゲジゲジに効く硫黄の花





九重花公園
九重の山々を遠景に20万uにわたる広大な敷地の中に広がる花公園。
公園の入り口にはすでにハーブの香りがただよって、白馬に繋がれた
馬車が優雅に客をまっている。
なだらかな起伏の花壇には色とりどりのパンジーや芝桜チューリップなどカラフルな取り合わせが工夫され、九重の山並みとあわせて心も開放されたよう。
涅槃の姿にみえる阿蘇五岳も広大なお花畑の向うにゆったりと横たわってみえる。
涅槃像の胸のあたりの遠かすみ
連翹の芽吹いて哀しくなる黄色
ミモザは風に風はミモザの悲の色に
芝桜から妖精が駆けてくる
パレットの真ん中 九重花公園





九重夢大吊り橋
バスはやまなみハイウェイを通って、九重夢大吊り橋へ向かう。2006年に完成したこの大吊り橋は、標高777メートル、長さは390メートル、高さ173メートル、幅は1・5メートルの日本一の人道大吊り橋である。
九重鳴子渓谷にかかるこの吊り橋からは遠景にいつくかの滝の雄姿が望まれ、連山の雄大なパノラマが目前に展開する。
吊り橋の先は霞んで夢の夢
渡り切れば雲の向うの人となる
行って戻って此岸・彼岸の空中散歩
風の中鳥の気持ちになってみる
滝ふたつ龍の姿を借りている



熊野磨崖仏
次に訪れたのは熊野磨崖仏。これが思ったよりも険しい石段の続く山道。鬼が一晩のうちに石を積み上げて完成させたという伝説のしろもの。角度も急なら石のかたちも自然石そのままで、ごろごろと歩き難い。頑丈な手すりが施されてはいるものの、いったん足を滑らせたら救急車も来て貰えそうに無い難所。喘ぎ喘ぎ足を運ぶ。この石段を登りきったところの巨岩に不動明王と大日如来が刻まれている。



富貴寺
富貴寺は平安後期に宇佐神宮大宮司の氏寺として建立。


豊後高田 昭和の町
夕陽の町の昭和夢町三丁目
ブリキの金魚ぶりきのバケツ 昭和だな
駄菓子屋に美代ちゃんの声 紙芝居
キュウピーの目玉ぎょろりとセルロイド
子に戻る おからコロッケ頬張って



新幹線ひかり391号で早朝の新大阪を出て11時前には小倉に到着。観光バスに乗り換えて、先ずは豊後高田の昭和の町に着く。山並みを背景に古い佇まいの小さな商店街を散策。
2008年5月 更新
高千穂・九重・湯布院
国東半島 春紀行 本多 洋子
( 4月10日ー12日 二泊三日 )
白と黒 本多 洋子
過去は鋭角ユトリロの白い壁
蒼白のムンクと渡る橋がある
月光の不安を雫するムンク
乳白色の少女とモンマルトルの坂
額縁の隅にマドンナの自白
稜線を越えてしまった雪兎
浮雲に届くキリンの滑り台
決別のことばに触れる白い風
抱卵という白濁の中にいる
白地図に桃源郷を描き入れる
黒に黒かさねて温かいルオー
道化師の真後ろにある深い黒
闇を出て闇に戻ってゆく揚げは
花冷えの花びら 影に身を寄せる
螺旋階段ゆらりゆらりと黒あげは
苦しみを逃れる背腸抜いておく
双塔の影がひとつになってゆく
ドビッシーの雨だれを聴く穴の底
迷路からときどき洩れる四分音符
黒点に近づきすぎる揚げ雲雀
公園のベンチの孤独なカラス
2008年4月 更新

赦されてふらりと花の宴にいる
花の香にやすらいでいる塔の影
梅わらう寂しいことは忘れよと
宴から遠く離れている鴉
白梅の中にきのうを潜ませる
蕾からときどき洩れてくる吐息
白梅の秘密を守りきるかたち
風の指そっと紅梅にふれる
薄雲をひろげて梅の香を包む
竹の色 独りの水を堪えぬいて



2008年3月 更新
葛飾北斎は九十年という長い生涯にわたり、浮世絵版画や肉筆画等さまざまなジャンルで活躍をつづけた。
この展覧会では、貴重な肉筆画や北斎漫画、富嶽三十六景など130点程の作品が展示されていた。
北斎展 図録表紙 二股大根と大黒 諸国 瀧巡り
2008年2月 更新
画狂人 葛飾北斎展 於・高島屋 大坂店 20年1月



ピカソ 道化役者と子供
美術館 入り口



