CDプレーヤーの再生波形:デジタルの穴

フィリップスのポータブルCDPが壊れたのでこれを機会に本格的CDPを物色していたのですが、 CCCDの問題やパソコンのCDRに押されてか現状オーディオメーカはCDPに力を入れていません。 さらにDACの実験結果や諸説紛々をみるとさらに逡巡躊躇!

トラ技の2002年10月号(DSP特集)の付録の<フーリエ変換なっとく講座>を読んで、デジタル音痴の私のデジタル不信は一層深まりました。この10月号のCDにはDSPのソフトと並んでefuさんの信号発生ソフトWaveGeneとFFTソフトWaveSpectraが入っていて便利です。

デジタル録音すると方形波が10kHz以上でサイン波になることについて 2002/9月始め加銅氏の掲示板等で弦堂さんがDAT録音の経験を報告しています。他の方も5Khzの方形波再生には<2コブ駱駝>が現れるという。

Audio Check CD(1993年にAbbey Road Studioで録音されたもの)には方形波1KHzと5KHzが入っています。デジタルなら簡単に再現できると思っていた方形波を再生するとなんと5KHzが2コブ駱駝というか虫歯波形!1KHzもなんだかおかしい。オーディオ協会のTest CD−1(1985年ソニー製作)には方形波はありませんでした(というよりも、誤解?を避けるために入れなかったようです)。

最近OnkyoのSE−U55Xを買いましたので、手持ちの安物にて実験(オッシロ観察)の結果:

*パナの94年ごろのポータブルCDP Model SL-S350(1BIT DAC=MASH)でAudio Check CDの方形波1Kと5Kを再生: 1KHzは<細かいギザギザ>、5KHzは<虫歯波形>。虫歯=サイン波の子供を無理やり埋め込んでいるようだ(頂点の波形をつなげると逆相サイン波の連続)。

1KHz方形波の再生波形5KHz方形波の再生波形

*WaveGeneで5512.5Hzのパルスを出力>SE-U55XのアナログLINEOUT: Vector Linear Shaping Circuitという新しい(2001年発表)コンバータ搭載です。OnkyoのVLSCがどんなものか興味がありましたが、虫歯の大量発生! DACアルゴリズムの当然の帰結

*5512.5Hzのパルスを出力>SE-U55X>マルチビットDAC(解散したAudio AlchemyのDAC in the Box1994年発売): 画像はOnkyoと変わりがない

DAC間の違いは余り認められない(Audio Check CDの方形波5Kの再生波形はオッシロ上3DAC共通)。

WaveGeneの5512.5Hz=サンプル数8で4種類の波形を発生してPCのスピーカで試聴してみた。 サンプル数が2の乗数でない時、FFTだけでなくオッシロでもゴーストが認められる。 44100のサンプリング周波数ではオーディオ帯域内11ポイント(サンプル数2〜256)でしか波形精度が出ない?アナログ系の連続した測定器と違ってデジタルの測定系にはデジタルの穴があるようだ。 三角波と正弦波は区別がつきにくいが、方形波は明らかに違う(エッジが立って聞こえる) ノコギリ波は他の3波より大人しい。Onkyoのアナログ出力の波形を見ても明らかに違う。44100を因数分解すると(1*2*3*5*7)^2になるがこれは偶然だろうか? 標本化周波数44100Hzのルーツはビデオを記録媒体としたからと言われています。

上から、正弦波、三角波、方形波、ノコギリ波

有限離散時間系は本当のフーリエ変換(全周波数・全時間)ではないのだから、 サイン波の有限集合=現実の音波であるということ自体成立していません。 サイン波の子供達よりましな再生アルゴリズムがあるはずと思うのは素人の妄想なのか? DACよりアナログ回路・筐体の違いが音に出るのでしょうか? ブラックボックスDACを100万円の宝石箱に入れれば100万円!ただし宝石(=音楽らしさ)は付いてこない?!

DACが違っても波形上の差異は表れにくいようです。 結局ADCやDAC内では大きな違いはなさそうです(あるとすればホールド時間と遅延だけ)。 周波数の記録紙を切るようにすっぱり反射のない<理想のフィルター>が存在しない。 LPFが在る限り、インパルスが<正弦波の子供>や<さざ波>を生むのは避けられない。 理想的なシステム<直線位相LPF+ADC/DAC+直線位相LPF>でもサンプリング周期と信号の周期がずれていれば、 例の切り出し誤差と同様な変形が起こります。時計が時間の整数単位に合うのは24時間中24回しかないように、タイミングが合うのはむしろ稀有のような気がします。

同一メーカーの機器で録音・再生すればどうか? するとメカとしてはソニーかデノンかフィリップスしか選択肢はなくなるが、可逆性のフィルターを前後に使っているかは確認できない。 逆RIAA録音<>RIAA再生のように可逆性を実現するのはむしろデジタルでは難しそうだ。LP再生でもRIAAフィルターによって当然位相がずれます(EQの波形変形に付いては:EQの再生波形参照)が、デジタルほど高次のフィルターではないので影響は少ないと思います。 47研究所のフィルターなしのDACっていったい何なんでしょう???

もちろん、以上はすべてのCDPやDACが同じだと検証しているわけではありませんし、根本的に誤解していることがあるかもしれませんが、上記のようなデジタルの穴がない機器があるなら教えていただきたい、と思います。

CDのアルゴリズムでサイン波になる理由が途中のステージの関数にあることが分かります。 アルゴリズム(関数)の変更によって結果を方形波にすることもできます。 サイン波の子供を作る波形生成関数の名前は<sinc>と呼ばれていてLPFそのもののようです。方形波もサイン波の集合で表現されますー5kHzの方形波では実質4個の正弦波で表現されるのでかなりの虫歯はしょうがないのですが、ナイキスト周波数を上げても(約22波で表現される)1kHzの方形波でも分かるとおり軽度の虫歯状態になるのは変わりありません。方形波とDCは無限数のサンプリングが必要でデジタルでは禁手なのでしょうか?実際に方形波とかDCは音になりませんからこんな駄々をこねても無意味ですね。


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