西沢ボクシングジム

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二十九日目(前半)

珍しく定刻通りにメンバー全員が到着。
なぜかって?
そう、今回は西沢ジム初の遠征試合なのだ。


出発前にこれまで自分が経験してきたスパーを
改めて動画上映して再確認、緊張気味の顔。

直樹、荻沢君、小島君、高原君。

どの練習生にもちゃんと武器がある。

直樹はボディワーク、高原君はタフネスと手数、
小島君には右カウンターと人一倍の気合。

まだ2度目の参加となる新人荻沢君も
この時点ではスパーに参加するか未決にも関わらず
直樹と一緒に1週間、練習を積んだという。

(大丈夫、立派に戦えるはず!)
と信じつつも反面、明確な弱点もある。

直樹はスタミナに不安、
高原君と小島君は上体が立つので
マトモに食う危険性が残っている。

家具を移動させた鉄骨マンションの一室で
地味な活動をしてきた西沢ジムのボクサー達。

(俺達、果たして通用するのだろうか…)


軽自動車に期待と不安も一緒に乗り込んで
外環→東北自動車道を佐野インターへ走る。

助手席の小島君は話し続け、
後部座席は静まり返っている。

途中、渋滞で流れが悪くなるが
誰も文句を言わない。

もしかしたらこの渋滞を歓迎しているのかもしれない。
皆、心のどこかで到着を恐れているのかも…?

直樹は早くから眠ってしまい、
高原君は車に積んだボクシング書籍を読み、
窓際の荻沢君は近づいてくる山々を眺めている。

蓮田周辺でボンネットの潰れた乗用車を抜かすと
その後はビデオの早送りのようなドライブとなった。

結局、予定時刻の3時より1時間も早く
目的地であるWWF佐野ボクシングジムに到着。

車を降りて大きく伸びをして遠くを見る。
川沿いの砂利道、畑、青空、ボクシングジム…

「ちょっと早く来すぎたかな?」

窓から見えるジム内部にまだ練習生の姿はない。

鉄骨の階段をトントントンッと音を立てて上ると
一階の事務所から大場会長が声をかけてくださいました。
(私が若かったので入門希望の若者と思ったのかも?)

「どうも、西沢ジムの西沢です。
今日の練習試合、よろしくお願いします!」

その後、とても親切にもてなしてくれました。
(2階は夜の雰囲気?が漂うそば屋さん。)

素晴らしいジムの環境、そして素晴らしい大場会長。
いまや練習生数が120名に及ぶそうです。

おまけにジムを24時間開放しているとの事。

リングに張られたロープを掴むと
ジーンと込み上げてくる熱い想い。

(俺もいつか…! まずは仕事を頑張らねば!)

自分のジム活動との規模の差に驚きつつ、
大きな目標・方向性として勉強になりました。


帰り際に会長さんが案内してくれた事務所の中。
壁一面に張られた古いボクサー達のピンナップ。

手足のスラッとした二枚目ボクサーが
白黒写真の中でポーズを決めている。

(若い頃の会長さんだ…)

我々の車が遠ざかるまで見送ってくれた大場会長。
一日、本当にありがとうございました!

(後半ではスパー内容を報告します!)


二十九日目(後半)

まずは西沢ジム最重量選手、小島君。
相手は身長172p70s(推定)、A君(仮名)。

体格でやや上回る小島君だが、
A君はビルドアップされている感じ。

来る途中、車の中で小島君と何度も確認した
右カウンターで突き放す作戦を頭に置きつつ
西沢ジム初練習試合の開始ブザーを待つ。

「ブーッ!」

A君が背筋を立てたまま、距離をグイグイと詰めてくる。

その際に左拳を前方上空に漂わせているので
懐が実際よりも深〜く感じられるが、
ダッキング・スウェー等で頭が動く様子はない。

常に相手をジッと正視しているので
乱戦となれば高確率でヒットさせてくるだろう。

さて、右カウンターは通用するだろうか…?


小島君がストレートで威嚇するが、
A君は落ち着いてバックステップ。

適正な距離調整からスパー慣れが感じられる。

圧力を更に強めた小島君が間合いに入った途端、
A君の迎撃がファーストヒットする。

ここから熱い性格の小島君らしいチョイス、
カウンター迎撃を捨てて積極先手モードを選択。
(一瞬、自分や庄子君との初スパーを思い出す)

この選択によりスパーはミドルレンジの打撃戦に突入。
お互いに有効打を応酬、派手な展開となる。

共にダッキングをしない攻撃タイプなので
冷や汗タイミングがちょくちょく発生する。

この戦法を避ける指示を出そうかとも思ったが、
小島君本人の「打たれてもいいから俺は打ちたい!」
(直前のミット打ちからもそれは感じとれた)
という気持ちを尊重、じっと成り行きを見る。

下げガードから不意にフック、
突然の右ストレート、ボディ…

多彩な先制パターンから小島君が
落ち着きを維持しているのは確実。
が、打ち終わりを狙うA君のヒットも深い。

ほぼ互角のまま、初回が終了。

「打ち終わりのガード」だけを指示、
拮抗する展開の打破に期待する。

インターバルで切れを回復した小島君が
正面からいきなり有効打を奪う。
確かに正しい角度で入っているのだが、
A君の安定したバランスを崩すまでには至らない。
(鍛えてるなぁ…)

逆に中盤からやや動きの落ちた小島君に対し
A君の左攻撃が徐々に的中率を上げていく。

「!」

左フックから点火させたラッシュで
タフな小島君の身体が大きく揺れた。

(まずいか…?)

不安になりつつタオルを握っていると
天の救いのように終了ブザーが鳴ってくれた。

小島君は切れた唇で笑顔、A君と熱い握手を交わし、
打ちつ打たれつのナイス・スパーを締めくくった。

(久々の本気スパーに満足げ、A君ありがとう!)


続くスパー、西沢ジムは28歳のタフガイ、高原君。
相手は長身のハンサムガイ、高校生のB君。

体格でやや劣る高原君だが前回のスパーで
70s宇野君のパワフル攻撃を耐えきった実績がある。

スピードのある横田雄君に対しても
相打ちの連続で打撃戦を演じてみせた。

(空転さえしなければ善戦するはず…!)


開始ブザーと同時にB君がラッシュしてくる。
高原君はガードしつつ後退、有効打は最小限だ。

このまま怖がってしまうのが危惧されたが、
普段おっとりしている高原君は
意外なほど勇敢な一面を持っている。

即座にガーッと同じ数だけ打ち返してみせた。

興奮しがちな序盤の攻撃にも関わらず
キチンとボディアタックも混ぜた高原君、
ここから得意の乱打戦へと流れていく。

ここでハプニングが発生。

高原君のヘッドギアがずれて視界を塞いだ瞬間、
B君が逃さずに連打、最後に強打を直撃させる。

「!」

本来なら下を向いた瞬間に私が大声で指摘すべきだった。
もちろんすぐにパンチをまとめたB君は悪くない。
そして初弾ヒットで止めてくれたレフリーも正しい。

そして高原君もここで落ち込む必要はない。
技術的に追い込まれたんじゃないのだから。

再開後、メンタル面が心配された高原君だが
私の想像以上に手数が旺盛、気後れはない。

上背のあるB君のボディに有効打を決め、
追撃の左右ストレートで更に追いかける。

が、必死の高原君が単調な攻め口に陥ると
見切ったB君がヘッドスリップしつつ
カウンターの右ストレートを狙い始めた。

作戦は正しいのだが、B君の腰も高いので
その迎撃パンチに脅威となるようなパワーはない。

さて、この展開で打ち勝つのはどっちだ…?
(胃が痛くなってきた私、ちょっと前傾姿勢)

手数旺盛、常に追いかける高原君だったが、
力みと緊張からややスピードが落ち始める。

次第にB君の迎撃命中が目立ち始め、
更に高原君の焦りが加速してしまう。

強く打とうとする右がテレフォン化すると
悪循環への傾きはもう止まらない…

B君のコンビネーションが高原君を
ロープ際まで弾き飛ばし、スパーはヒートアップ。

更に追撃のボディが決まると
善戦している高原君の動きが止まる。

「ストップッ!」

残り時間僅かで一旦スパーをストップ。
(スタンディング・ダウンを採用)

再開後、高原君は攻め手を強めるが
ダメージング・ブローにまで至らない。
(完封されている訳ではない)

惜しい瞬間も何度かあったのだが
ここでスパー終了のブザー。

体格で劣る高原君は最後まで防戦一方になることなく
立派に自分のボクシング(主に手数)をしたと思う。

が、合理的な上下のコンビネーションを
磨いてあった分だけB君が上回っていました。

思えば完全な初心者だった高原君は、
西沢ジムを訪れてくれた練習生の最年長。

山積みだった課題を少しづつ修正、
着実に成長してきた成果は
リングで確実に発揮されたと思います。

もう高原君は初心者じゃありません。
立派な「ボクシング経験者」です。

当日は気落ちした様子だったけれど
スパー動画を見てごらん。
初心者とは呼ばないよね、これ。


続くスパーは直樹vsC君。(2戦目を掲載します)

ともに中学3年生だが身長で5p、体重で2s程度、
C君が直樹より上回っている。

これまで直樹は体の大きい相手とスパーを重ねてきた。
それほど大きなハンデにはならないだろう。

スパー開始から直樹がC君の周囲を旋回しつつ
先制打のチャンスを伺うがC君のフォームに隙はない。

逆に直樹がロープ際に詰まった瞬間、
C君の右ストレートが側頭部に軽くヒット。

読みづらいノーモーションの右は
今後とも食らう危険性大の予感。

どこかでカウンターを入れて警戒心を与えねば
この主武器をどんどん打ってくるだろう。

(でも直樹のカウンターは未完成だ…)

いきなり暗雲が漂う展開だが
直樹が現状の実力でどう乗り切るか、
逆に私は興味を持った。

カウンターのない攻防分離ボクシングだけで
ここからポイント逆襲できるのか、
それともこのまま八方塞りに陥るのか…

C君が徐々に手数を増してくるにつれ、
直樹の防御動作が忙しくなってくる。

その動作が攻撃に直結していないので
C君は直樹から怖さ(オーラ?)を感じていない。

互角の展開が続くが、ラウンド終盤に
C君が有効打を皮切りにラッシュ。

明らかなダメージングブローを当て
更に優勢を印象づけたC君に対し、
直樹は弱気のバックペダルを踏み始めた。

次のラウンドは更にC君の攻撃が加速。

直樹にカウンターがないと気付いたC君は
安心して攻撃重心のまま攻めてくる。

(今こそ、カウンター!)と心の中で叫びつつも
すぐに(ちゃんと教えていないか…)と後悔。

劣勢の直樹もどうにか直撃を避け続けるが
合間に繰り出す反撃は距離とタイミングが狂っている。

おまけに重心が後方に崩れているので
逆転を狙う右もその威力を失っている。

結局、バックペダル全開で
終了ブザーまで逃げ切る展開に終始。

ポイントをリードしている王者ウイラポンに対して
勝負すべき最終ラウンドに手が出ない挑戦者、西岡。
(初戦)

強敵相手に無傷で終えた事を褒めるべきなのか、
玉砕覚悟で攻めなかった事を叱るべきなのか…

今回は練習試合であって、世界戦ではない。

この失敗をビデオを何度も観てよ〜く勉強すればいいのだ。

精神的・技術的・体力的に悪い面が嫌なほど映っている、
成長するために必要な最高の資料を入手できたのだから!


最後は初心者、荻沢君。

ボクシング経験がまだ二日目なので
本来なら無謀だし危険なスパーである。

シャイなヤンチャ少年は自分から言い出さないが
(次は俺の番…! 暴れてやるぜ!)
なんて考えていたと思う。

私のアドバイスを聞いて大きくうなづくと
相手の体格や様子をじ〜っと見る。

D君は同じ学年、同じ体格。
ぱっと見た感じでは普通の中学生である。

恐面にピアスをして派手なTシャツ、
どう考えても不良度(?)なら
荻沢君が有利なのだが、果たして結果は?

まずはフェイントでD君を牽制しつつ、
そのパンチ軌道を落ち着いて見る作戦。

入ろうとするD君にも焦りが感じられ、
当てるタイミングを徐々に掴みつつある荻沢君。

感心すべきは直前に教えたバックステップと
後攻めの意識を健気に実行している点だ。

パンチのある荻沢君だけに
もしかしたら?の期待もある。

「!」

強引に入ろうとしたD君の側頭部に
荻沢君の左フックがベストに近いヒット!

バランスの崩れたD君に荻沢君がラッシュを仕掛ける。

(ダメだ! ここはじっくり行け…)

チャンスにパンチをまとめるのはセオリーだが
荻沢君にはコンビネーションもスタミナもない。

開始数秒で奪った有効打が新人を悪い方向へと導いてしまう。

ガードの隙間に拳が入って抜けなくなったり、
足を挫いてしまいスリップダウンをしたり…

最後は回復しつつあるD君に強引な攻めを行い、
相打ち気味のジャブでダウンを奪われストップ。

いさぎのいい玉砕となってしまったが、
荻沢君は悔しがりつつもどことなく満足な様子。


この後、体格の近い練習生同士でスパーリングを行い
ガッツンガッツン倒し倒され?で合同スパー大会は終了。


皆さん、お疲れ様でした。

この合同練習を企画された堀江トレーナー、
西沢ジム練習生に刺激を与えてくれた選手の皆さん、
随所でナイスジャッジされたレフリー及び
24時間ジムを開放している佐野ジムの大場会長、
飲み物やフルーツをご馳走してくれた美人の奥さん。

心よりお礼申し上げます!
ありがとうございました!
もっと練習して近い将来、再び伺います。
その時もよろしくお願いします。

(スパー動画は後日公開、申し訳ありません…)


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