ボクシングのゲーム、実写でボクシングのバナー(3)

西沢ボクシングジム
ボクシングのゲームの区切り画像

ある分譲マンションの203号室。

この住居の下部分は吹き抜けの通路となっており
騒音等で迷惑をかける心配もない。

10畳間に設置してある全ての家具に
移動用の滑車を取り付けてスペースを確保、
急造ボクシングジムを作ろうと考えたのが2年前。

少しづつ道具を揃えていって
実現可能な設備が揃ったのが1年前。

ついに入門希望の練習生が現れた…!

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西沢ジムの紹介
会長の独り言
スパーリング動画01(消失)
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スポンサー募集

初日〜四日目
五日目〜八日目
九日目〜十二日目
十三日目〜十五日目
十六日目〜十八日目
十九日目〜二十三日目
二十四日目〜二十八日目
二十九日目
西沢ジム活動休止
三十日目〜三十一日目
書き殴る近状

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ボクシングでダイエット
シャドーボクシング用のトレーニング補助ソフトです。
シャドーボクシング時(3分/1分)のゴングタイマーだけではなく、
「ジャブ!」などの音声指示があなたのシャドーを盛り上げます!

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初日

練習生第一号は中学2年生の少年(甥っ子)だった。
以前から彼が「ボクシングに興味がある。」とは聞いていた。

テレビで放送されているボクシング番組、
ガチンコファイトクラブで興味に火が付いたようだ。

身長は160p、体重は52sで
スポーツは得意との事。
現在は中学校の野球部に所属しており
日焼けをしている丸坊主だ。

部活動の練習で基礎体力はそれなりにあったので
西沢ジムでは最初から技術的な指導を心がけた。

ボクシングをやりたいということは
「殴りたい(もしくは殴られてみたい)」
という要素が強いと思う。

その気持ちが無くならないうちに(旬を逃さず?)
ボクシングの刺激を伝えるのが大事だと私は考えています。


最初にサンドバックの前に立たせて
フォームのチェック。

基本的に野球のバッターボックスと同じ要領で
右構えかサウスポーかの選択を決定します。

少年(以下、直樹)の場合、野球部の時も右投げ右打ち。
試すとシックリした様子だったので右構えに決定。

早速、左ジャブを打たせてみる。

するとなかなか体重の乗ったいいジャブを打ってみせた。
顎も下がっていて後ろ足のキックも効いている。

「テレビで見ていたし、一人で練習していたから…」

とりあえず、打つ時に右ガードが下がる癖と
左ジャブの主目的を簡単に説明した。

素直にうなずいて頭の中でイメージすると、
次からはキチンと修正して打ってみせた。
(癖になりそうな悪い芽は早めに摘まねば!)

ジャブの発射位置を数パターン、
左のフェイントから得る有効性、
打った後の頭位置移動やサイドへの移動、
これらを少しずつ説明して理解してもらった。
(どれもスパー時に痛感するだろう)


次に攻撃切り込み隊長となるワンツー。

とりあえず打たせてみると
これまた意外にもしっかり打ってしまった。
腰も回っているし、なにより打ち終わりにダッキングまでした。
(まだ教えてないのに…)

特に2撃目の右ストレートには
必殺の威力が感じられる。
(野球経験者の多くは右ストレートが強い)

続く左フックはいまいち体重がのらず
本人も首をひねっていたが、
右ストレートからの繋ぎで打たせると
体重移動のコツが分かったようでいい左フックになった。

残念(当然?)ながらアッパーに関しては
まったくダメだったので後日教えることにした。
(アッパーは他のパンチとまったく別の打法。
初日はシンプルな指導、必要な時期に伝授!)


次にボクシングで最も大事なディフェンスの指導。

打たれるとどんな悪い問題が起こり不利になるのか、
相手の先制打を空振りさせる有効性をじっくりと説明した。

まずは一番手軽で簡単なバックステップ、
次にダッキングやスウェーといった
頭の位置移動を伴う防御動作。

最後にガードである。

基本的に私はストレート系の攻撃をガードするのは
難度が高い割に得る物が少なく、
失敗した時のリスクが大きすぎると思っている。

のちの世界戦、全戦全勝全KOを引っさげて来日したムニョス。

ベネズエラからきたこの最強挑戦者は
日本屈指のガード技術を誇るセレス小林に対して
ガードごとブチ壊すようなストレートで迫った。

通常なら急所への攻撃を何度もガードされると
無意識にガードのない部分へ標的を移動させる。

標的が急所から外れた頃、セレスは主な防御方法を
密かにガードからヘッドスリップへと移行させ、
より攻撃的なスタイルへと自分を進化させるのだ。

名古屋のホープ、石原や浅井は
セレスの秘策により倒されている。

が、世界ランク1位のムニョスは標的を変えない。

徐々に最強挑戦者のストレートが
ガードごしの王者を弱らせていく…

苦痛に歪む我らがセレスの表情を思い出す。

やはりガードだけに頼ってはダメだ。
防御の基本は「避ける」だと改めて痛感。
(もちろん、ガードも必要です!
現在ではトラッシュ中沼が名手かな?)

直樹の側頭部に16オンスグラブを置いて
私の8分パワー・フックを受けさせてみた。

「ガードが成功したとしても、意外と痛いだろ?」

ふーんといった返事だったが、
どこ〜となく痛そうな表情。

どうやら通じたようである(?)。


基本的なポイントを教え終わったので休憩。
(水分摂取、新井田vs飯田をビデオ観戦しつつ…)

「よし、次はスパーリングやるぞ!」

そう告げた瞬間、直樹のキラキラした眼は
私にとって当分忘れられそうにない。

もちろん私は176p64sなので
パンチ軌道や圧力を教えるのが目的だ。

机の上にある小型のゴングを鳴らすと
直樹の口元が緊張で引き締まったのが感じられた。

私は直樹のガードが低かったので
早速軽く左ジャブをオデコにタッチさせた。

何度か同じ攻撃を繰り返したが
改善されないので
「ガードが低いか、距離感が狂っている」
と注意を促した。

今度は私のジャブに対して
前方にダッキング、ボディを打ってきた。

後で聞くと「はじめの一歩」で読んだので
ずっと考えていたそうだ。

いい動作だったので
「ナイスパンチ」と告げて
しばらく同じ左ジャブで同じ攻撃を
誘発させてみた。

次に私は右ストレートを交えて圧力をかけてみる。
中に入ろうとする直樹の顔面に右が軽くヒット。

「???」

これはスパーリング初体験の直樹にとって
頭の中を混乱させるのに十分なパンチ軌道だった。

途端に警戒心で重心が後ろにのってしまい
ボクシングのフォームが崩れてしまう。

仕方なくパンチをペタペタとまとめて
その状態の危険さと無力さを教え込んだ。

ちょっと休憩を入れて攻撃重心維持の重要さを説明。

「後ろ重心になったら即座に戻せ!」

スキーは転んで覚える、というが
ボクシングも打たれて覚える一面がある。

私は後ろ重心になるたびに
ちゃんと打って不利な状況を理解させた。

次第にボクサーの動きを習得した直樹は
重心問題を2時間くらいで克服した。

前方に避ける事で得られるアドバンテージを説明すると
ファイター的な動作も会得してきた。

初心者がみるみるボクサーになっていくのは
教えていてなんだか痛快な気分である。

終盤、疲れた局面で無意味なワンツーを繰り返したが
それ以外は指導を守り冷静沈着を心がけていたようだ。
(どんな状況でも熱くなってはダメ! クールにね♪)


直樹の初スパーから感じられた明らかに悪い点は、
打たれた直後に動きがピタッと止まってしまう点。

相手に打たれた直後ってのは
反撃のチャンスが隠されている。

剣道なら当たった瞬間に競技をストップするが
我らがボクシングはそのまま戦闘を継続。

打たれた瞬間、止まってしまったら勿体なさすぎる。

相手が攻撃した拳側の顔面ガードは
100%、間違いなく存在しないのだから…

諦める必要はまったく無い。
次回、意識して動いてみよう!


直樹は納得するまで返事をしないタイプ。

気が短い人なら「こいつ、すぐに返事しないぞ?」と
イライラしてしまうかもしれない。

私に技術的な指導を受けてから、
ひとつひとつの動作を試してみて
自分の中でキチンと理解してから返事。

時間こそかかるが納得できた動作は、
次のスパーで必ず使ってくれる。

教えやすいタイプ、かな?


直樹のシャドーを見ていて私の妻が
「あなたのシャドーとそっくりね…」
と言っていたが、私もそう思う。

最後に軽くミット打ちをして
初日の練習は終了。

直樹は興奮冷めやらない様子で帰宅した。

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二日目

前回の初練習日から2週間。
あれから直樹はどうしているだろう。

ボクシングをやりたい!という熱意を失っていないだろうか?
打たれたショックでボクシングが怖くなってしまったかも…?

家に帰ってからちょっとしたフラフラしたとの
連絡があったが、その後の状況を私は聞いていない。


一晩中ずっと東京を走りまわったおかげで
ボロボロの雑巾みたいに深〜く眠っていた私。

「直樹が友達を連れてくるってさ。」

私は徹夜明けの混濁したボーッとした頭で
妻の伝言をギリギリ聞きとった。

朝、直樹は同級生の少年を二人も連れてきた。
「お願いしまーす!」

一人は150p48s、
勉強もできそうな川村君。
小さな体にクリクリの瞳、かわいい様子ながらも
ボクシング初体験に賭ける意気込みが感じられた。

もう一人は身長160p48s、
眉毛を剃って精悍な顔つきをした片桐君。
「僕はいずれ本格的なジムに通う予定です。」
ちょっと緊張しているが、骨がありそうだ。

二人とも空手の経験があるという。

早速、サンドバックの前に立って
基本フォームとパンチの確認をした。

まずやる気の感じられる川村君からチェック。
「どうやるんすか?」
どうやら本物の初心者である。

両足揃い気味のスタンスを修正して
右構えから左ジャブを打たせてみると
力みすぎていて頭がブルッと動いてしまう。

右ストレートの際は後ろ足が
派手に浮いてしまうのでそれも修正。

直し甲斐のある川村君だが
どうにか直そうと必死に頑張っている。
「あれ? あれ?」
と自分の癖に驚きながらも
段々とフォームが修正されていった。

が、たくさん指摘すると混乱を招くと思うので
致命的な点のみを厳選してから川村君に伝達、
後はスパーの時に痛い目にあってもらおうと思った。
(その方が早く覚えると思うし…)


次は眉毛の無い片桐君。
彼も構えを知らない状況だった。
聞けば左利きだという。

西沢ジム初のサウスポー?と思ったが
何度かサンドバック相手に試した結果、
オーソドックスな右構えに落ち着いた。

利き腕による左リードジャブの威力が期待されたが
棒立ち姿勢のため、川村君以上に体重が乗らない。

本来、ダメージングブローとして機能するはずの右ストレートは
手打ち傾向が非常に顕著な上に顔面が危険な角度のまま露出。

危険な現状を指摘して私が正しいフォームを見せるのだが、
癖になっているようで修正されないまま時間だけが過ぎていく…

正直、指導者として焦ってしまった。

ボクサーとして本当に危険なフォームにも関わらず
それを修正できないジレンマに頭が混乱してしまったのだ。

片桐君にしてみれば恐らくこれまでの格闘経験で、
ある程度このフォームが通用してしまったのだろう。

「…」

荒療治だがこのままのフォームでスパーリング敢行、
危険を実際に体験して意識改革してもらうしか…


最後に西沢ジム第一号練習生の直樹。

毎日、腹筋と背筋を鍛えて今日に備えたという。
(妻から密告。なぜか俺には練習を秘密にしている?)

実際、サンドバックを打たせてみると
かなりの進化・工夫が感じられた。

多様性のある連打攻撃は
相当なシャドーの繰り返しのはず。

「お前、やってたな!」
というと嬉しそうにニヤッとした。

初心者の二人は直樹のサンドバック打ちを
ポカーンと眺めている。
ちょっと驚いている様子だ。


最初は川村君と私がスパーをした。

最初のスパーで重要なのは
ジャブを食うことだと思う。

そして覚えるのがジャブを避けることだからだ。

「お願いします!」

川村君は大きな声で挨拶すると
やる気満々で私と向かい合った。

興奮を隠せないのだろう、
彼の口元は笑っていた。

予定通りジャブを当てると
彼の場合、目をつぶってしまった。

その後、恐怖から前方を見れなくなってしまう。

「川村君、まず目を開けなきゃね」
「はい!」(大声)

とにかく今が楽しいようだ。
彼の笑いは止まらない。

漫画で読んだのだろう、
デンプシーロールの真似事や
ガムシャラな連打攻撃を必死で敢行する。

が、攻撃動作中に呼吸をしていないので異常に息苦しそう。
(このままでは勝手に死んでしまう?)

スパーをストップして
色々な点を指摘する。

特に無呼吸が続くのはどう考えても危険なので
タイのキック選手が多用している方法を伝授した。

「パンチを打つ時、彼らはシュ!シュ!っていうでしょ。
あれは声を出すことによって自然に息を吐ける、
っていう意味があるんだよ。」
「そうなんですか! ありがとうございました!」

それから彼は休憩時間にも関わらず
サンドバックに向かって声を出す練習を続けた。


次に眉毛のない中二、片桐君。

彼の場合、まずそのフォームだとジャブを食い続ける、
という現実を体験的に知ってもらう必要があった。

私のテレフォン・ジャブは当然のように
彼の顔面に連続してヒット(タッチ)する。

おまけに緊張のためか
攻撃に対して無反応なので
もろに直撃が繰り返される。

ちょっと戦意喪失気味だったので
スパーをストップさせて現状を説明する。

ちょっと打たれたのがショックだったらしく
うつむき加減で返事をするが、よく理解できないようだ。

その後もスパーを続けるが、
フォームが修正されることはなかった。

私は彼を長い目で少しづつ教えていこうと思った。
「今後、本格的にやる。」
と意気込んでいた彼が今、落ち込みかけている。

初日は体験するだけでも意味があるはず。
無理に矯正してもいい結果になるまい。

とりあえず利き腕から放つ左ジャブが
今の彼で一番いいパンチなので
その有効な使い方を指導した。


そして直樹と2週間ぶりのスパーリング。
経験者だけあって
表情にも余裕が感じられる。

二人の初心者も直樹のボクシングに興味深々といった様子だ。

同じように私はジャブでヒットを奪う予定だった。
が、直樹は想像以上に成長していた。

ジャブをヘッドスリップ気味に凌ぐと
ボディショットを繰り出してくる。

それは体重ものっていて、いいパンチだった。
かなり練習していたな?と私は嬉しくなった。

しばらくジャブによる攻撃で様子をみたが
それなりに対処ができていた。

前回の後ろ体重気味になる欠点も完璧に直っている。

次に右を交えて様子をみると
さすがに何度かヒットを許す直樹。

それでも恐怖せずに旺盛なパンチを打ってくる。
ファイティングスピリッツも合格だろう。

初心者の二人は「スゲ〜ッ」と驚いている。


次に休憩を挟んで、初心者同士のスパー。

ファイタースタイルの川村君、
利き腕ジャブで迎え撃つ片桐君。

お互いに同じ階級だと説明したので
主導権を握ろうと必死のスパーとなった。

ここで気になったのが
片桐君はラッシュに対して後ろを向いてしまう点、
川村君はバタバタしてパンチが手打ちになる点。

とりあえず現状では有効打を決める実力が
お互いにないので、川村君に新しいパンチを伝授した。

ラッシュ時にボディ攻撃一辺倒になってしまうので
肩より上でスイングさせるフックを教えてみた。
(坂本博之が下を向いたまま、
右をブルンッと振るう、あれだ。)

片桐君には唯一の武器である左ジャブを
最大限に活かすための適正距離を説明、
それを維持するためにフットワークで移動せよ!
とアドバイスしてみた。

再開後、接近に成功した川村君が
見事に頭上フックをヒットさせる。

棒立ち気味の片桐君は被弾しつつ反撃。

ここからは初心者特有のドロドロ乱戦。
(一度はその非能率を体験する必要アリ)

最終的には互角で終わった初スパーだったが
直後に片桐君は軽い頭痛を訴えたので氷枕で休憩。


次に経験者の直樹と川村君がスパー。

元気いっぱいの川村君だが
直樹の踏み込みストレートでダウン。

16オンスでダウンがあると思っていなかったので
ちょっと心配になったが、どうやら大丈夫。

なぜ受けてしまったのかを説明すると
川村君はよく理解してくれた。

直樹にも川村君との階級が違うことを理解してもらい
スパー時に力を加減してもらうことにした。
(もっと練習生がいれば…と
ちょっと贅沢に悩んでしまった。)


スパー後、ファイタータイプの川村君は
浜田剛史の世界奪取を収録したビデオで勉強。

世界レベルのパンチの鋭さに「スゲ〜!」と驚いていた。

この日はその後もスパーを繰り返して
全員がそれなりに成長して帰っていった。

片桐君の頭痛は幸いにして治ったのだが
パンチ耐久度には個人差がある。

今後、指導の際には16オンスだからといって
安心せずによく注意してスパーをやらせたい。

次回の成長を楽しみにしつつ…

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三日目

前回の練習が終わってから数週間後、
再び練習生が西沢ボクシングジムを訪れた。

今回は直樹と川村君、二名の参加となった。

前回、落ち込み気味だった片桐君は
不参加となってしまったが、
本格的なジムへ通いたい!という気持ちはまだ健在だと聞く。
(とりあえずは安心しました…)

聞けば二人とも毎日、
自主的にロードワークを重ね
腹筋背筋を鍛えての参加だそうだ。

重要なイメージトレーニングとなる
シャドーも板についてきた様子だ。

サンドバックを叩く二人から
基礎体力の向上に加えて
テクニックへの憧れが多分に感じられた。

今回の川村君はフットワークを課題として参加したのだろう、
スタイル変更の意思がヒシヒシと感じられた。

が、実際に動いてみると
両足が同時にステップしており
スムーズに手数が出ない状態。

足が動くとバランスが崩れてしまい
結果的に手数が出ないという悪循環に陥っていた。

目指す方向性は正しいので
ボクサー特有のステップ方法を指導して
常にスウェー状態やジャブを繰り出せるように
重心の徹底維持を念頭にステップの練習。

通常のフォームも棒立ち傾向があったので
とにかく重心を意識してもらった。
(が、最後まで修正されなかった。
一度ついた癖を克服するのは本当に難しい…)

逆に前回、手打ち気味だった攻撃は
繰り返したと思われるシャドーにより
格段の進歩を遂げていた。

ボディ一辺倒だった連打も
顔面へのフックを織り交ぜるために
油断のならない危険性を秘めている。

まずまずの攻撃力を身に付けているだけに
弱点である防御技術の甘さが心配である。

直樹はシャープな攻撃に加えて
スイング気味だった右フックに格段の進化をみせた。

左フック並みにコンパクトなそれは
コンビネーションに隠して使えば
十分に倒すだけの威力が感じられた。

最も驚いたのは左アッパーの会得だ。

威力というよりも打てる!という
事実が脅威となるパンチなだけに
攻撃の幅が多いに広がると思われる。

ミット打ちを終えて休憩後、
スパーリングで成長を確認してみる。

まずは私が川村君と手合わせ。

私のジャブを避けつつ懐に入り込もう!という意思が
その小さな体からヒシヒシと感じられる。

が、ジャブに対する反応が甘いために
なかなか思惑通りに戦うことが出来ない。

パンチに対する恐怖心が
行動を鈍らせているのだろう。

ボクサータイプとは相性が悪いのかもしれない。

試しに私がファイタースタイルで戦ってみると
想像以上に善戦してみせた。

手数に交えた右強打は迫力もあったし
私の反撃をクリンチで寸断する頭脳も発揮した。

「頭、使ってるね」
川村君は明らかに成長していた。
(が、依然弱点も残ったままだが…)


直樹とのスパーは完封を目指して行った。

序盤のジャブの差し合いから
細心の注意を払って無傷を徹底。

サンドバック打ちでは見事な技術をみせる直樹に
距離感の大事さを教えたかったのが目的である。

結果、八方塞りに陥った直樹は
中途半端な距離での反撃を狙い始めた。

悪循環だったので、
そこでも連打を浴びせてスパー終了。

圧力に屈して重心が後ろになってしまう点、
距離感をもっと徹底して磨くべきことを指導した。

休憩時間に話をしてみると
高橋君という同級生もボクシングに興味があるという。

次回、参加してくれるかもしれない。

3時間程、スパーとミット打ちを繰り返し
最後に直樹と川村君のスパーを敢行した。


序盤、ペースを握ったのは川村君だった。

パンチ力で劣る(そもそも階級も違う)彼は
頭を下げて突進&密着する際に攻撃を仕掛けると
そのままクリンチで反撃を寸断する、
というスタイルに慣れてきたようだ。

が、次第にバリエーション不足から
パターンを解析されてしまい
密着時に直樹の左ボディを浴びるようになる。

16オンスにも関わらず直樹のボディショットは
まずまずの破壊力があって
これまでも何度かダメージングブローとして機能してきた。

1分過ぎ、直樹の踏み込みながらの右ストレートが
遠距離で油断していた川村君の顔面にヒットする。

一瞬動きの止まった川村君のボディにすかさず
追撃の左が入ると、更に動きが鈍ったのでここでストップ。

ストップこそされたが、川村君は階級の違う相手に善戦した。

怖さを克服しながら作戦的に成長してきただけに
今後は防御技術の成長に期待をしたい。
そうすればもっと怖さから逃れることが出来るはずだ。

「どうやって踏み込むんですか?」

スパー後に色々考え込んでいた川村君は
試行錯誤した末に質問してきた。

こんな時にもっとも参考になる最高のサンプル…
前回も鑑賞したが、浜田vsアルレドントである。

改めて研究してみると、浜田は数種類の踏み込みを
3分9秒の間に何度となく繰り返していた。

踏み込みそうで踏み込まずに空振りを誘発させる。
右を打ちながら頭から突込み気味に踏み込む。
故障していた膝を柔らかく使って頭位置を常に動かす。
密着時にも下ばかりを向かずに顔面への攻撃を忘れない。
当たったら必ず追撃を放ち、相手をパニックに陥れる。

川村君、頭の中がいっぱいのようだが
時間をかけて整理していたようだ。
(もくもくとサンドバックに反復練習していた)


成長著しい直樹に関してだが
今回の練習の前にコンビネーションを課題として挙げた。

単純にパンチを連続で繰り出すのでは意味がない。
上下に散らしたり、パターンを変えてみたり、
ガードの隙間を狙ったり、強弱で揺さぶったり…

サンドバックに叩き込んだ直樹の攻撃は
まずまずの迫力で合格点に達していた。

さて、スパーリングでも機能するだろうか?

結果、ファイタータイプの川村君に対しては
まずまずの効果を上げたのだが
ボクサータイプの私には距離で完封されてしまった。
(頭の中がコンビネーションでいっぱいだったのかもしれない)

現状ではコンビネーションを放つチャンスすらない状態。

必殺コンビネーションを発動させるためには
ジャブによる着火点と距離感が絶対に必要だと痛感したようだ。

直樹の左ガードが低いが、これは人それぞれ。

代表選手として徳山の防衛戦をビデオで鑑賞したのだが
彼は左ガードに頼らずに、上体の動きとフットワークで対処していた。

結果、雪辱に燃える前王者の一撃を完封し
狙い済ました右ストレートによる一撃KO防衛を果たしている。

ただ集中力がなくなってきた時やダメージを負った時、
もしくはジャブでの制空権争いに敗れた場合、
このスタイルは極端に弱くなってしまう。

その弱点も踏まえた上で自分にあったスタイルを勧めた。
(結果、彼は左を下げて戦うスタイルに決めたようだ)

朝から3時まで動いたので徹夜明けの私は疲れてしまい、
練習後ちょっと横になったらすぐに眠ってしまった。

その間、彼らはテレビゲームに夢中だったようだ。

キャッキャッ言いながら遊ぶ姿はまさに中学2年生。
まだまだ強くなるだろう…


左がボクサースタイルの直樹、右がファイターの川村君。

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四日目

今回は直樹だけの参加となった。

川村君は前日の運動会の疲れで
今回は見送りとなった。

(というか、運動会の翌日に
もうボクシングをやりたいという
直樹のやる気にちょっと驚いた)

以前から購入を考えていたヘッドギアが
越谷のある店舗で980円だったので購入。

破格の値段だったので品質に不安があったが
チェックしたところ、何の問題もなかったので安心しました。

人間の顔面でパンチを受けて最も痛いのは、
やはり盛り上がった鼻だと思う。

そのでっぱりを完全に埋めてしまうので
ダメージの軽減能力は想像を超えるものだった。

ジャブを浴びた程度では衝撃を感じるだけで
ダメージはほとんど残らないと思う。

今回からヘッドギア導入にあわせて
カウンターを教えることにした。

今までは危険だと感じていたので
あえて教えていなかったボクシングの醍醐味。

まずは黒板(というか先生っていう玩具)に
ジャブを放つボクサーを書いて、
その重心移動を改めて説明。

それに対して、首を傾けながら
右クロスや相打ちジャブ気味の
カウンターボクサーを描くと
カウンターの意味は理解してもらえた。

実際に向かい合って仕組みを説明すると
やはり実戦で使用するのはちょっと怖いとの答え。

結果、存在だけを教えた程度で
いずれもっと深く勉強することになった。

スパー主体で今回の練習も進んでいったのだが
直樹のボクシングに対する意欲がありありと感じられた。

ヘッドギア着用の効果だろうか、
とにかく色々な攻撃を試すようになったのだ。

ボクシングの基本攻撃にも関わらず
最も勇気が必要といわれるワンツー攻撃を
積極果敢に飛ばしてきたり
これまた勇気が必要なボディショットを数種類も放ってきた。

そしてなにより相手の左ジャブを
柔らかく避ける術を研究したのだろう。

今まで攻撃に集中すると
どうしても上体が硬くなってしまい
ジャブを頻繁に食っていたが、
今回はリラックスしつつ的確な反応動作をして
左ジャブをヒョイヒョイと避けるまでに至った。


直樹がダッキングからスムーズにボディ攻撃!

逆に悪いヘッドギア効果もあった。

打たれても(以前と比べると)平気なので
少々ラフなボクシングで迫ってくる。

強いのが入ったので「大丈夫か?」と確認すると
「大丈夫です。」と言うので、続行するシーンが何度かあった。

どれもヘッドギアがなかったら
ダウン、もしくはそれに近い状況に追い込むパンチだったと思う。

「大丈夫」の言葉を信じて
そのまま打ち続けたのだが…

後で知ったのだが、直樹は練習後、私の妻に
「今日は効いたなぁ〜」と漏らしていたそうだ。

よく考えたらスパー中に「効きました!」って告白するのもある意味、
勇気がいると思うので、もうちょっと慎重に打とうと改めて思いました。

(なんといっても圧倒的な体格差があるのですから)

が、危険なポジションに安易に侵入したら
必ず打ってあげないと練習にならないのがボクシング。

ヘッドギアがあってもなくても
とにかく打たれないボクシングを目指せるように
改めて原点に戻った指導をしよう、と思いました。

今回の休憩時間に選んだビデオ鑑賞は
大場政夫とチャチャイを中心に描いたドキュメント。

まさかの試合展開、そして高速道路での後日談…

「えぇっ、この人死んじゃったの!」

永遠のチャンピオンが残した悲劇にもびっくりしていたが、
12Rに渡って繰り出し続けた旺盛な手数にも驚いていた。

休憩後のスパーでは影響されたのだろう、
積極果敢なワンツー攻撃が目立った。

練習後はいつものようにテレビゲーム。

難しいとされるバーチャコップやダイナマイト刑事を
楽々とクリアーしていく姿にビックリしました…

ボクシングのゲームの区切り画像

練習生に応援メールやアドバイス、送ってください。
こちらまでお願いします!

ボクシングのゲームの区切り画像

西沢ジムへ。
中央広場へ。
実ボクとは?/トップ/掲示板/ダウンロード/ボクシングの街/グラボクとは?/