タイタニック   監督/ジェームズ・キャメロン
2005. 7. 27

この映画はあまりにもベタすぎて、かえって嫌いな人が多いんだろうなぁ。 私も DVDを買いたくて買ったというよりは、最近とは定番となった DVD特価品として購入しました。まあ、アカデミー賞では「ベン・ハー」と並んで史上最多の11部門受賞、世界歴代興収第1位も記録していますし・・・。おすぎとびーこがこの映画のことをさんざん酷評していたのですが、確かに主演のケント・ウインスレットは太りすぎ! レオナルド・ディカプリオがアカデミー賞にノミネートされないことに抗議が殺到したということですが、この年は「グッド・ウィル・ハンティング」のマット・デイモンが良い演技でした。

ストーリーはベタベタなラブストーリーですが、SFX 技術は凄いと思います。氷山が船にぶつかってから沈没するまでのつぶさな描写は、やはりこれまでに「ターミネーター2」、「アビス」を作ってきた監督さんだなぁと感じます。ところどころに入る人間模様、例えば設計士が一人放心して時計を見つめているシーン、クラシックバンドが周りのパニックの中ずっと音楽を奏で続けるシーン、船長の最後のシーンは本当に「作られた」ような感じなのですが、それでも映画全体から見ると効果的だと思います。

前年のアカデミー賞がインディーズ映画(「イングリッシュ・ペイシェント」、「ファーゴ」、「スリングブレイド」他)ばかりノミネートされたこともあって、その反動で久々の大河メロドラマ=タイタニックが選ばれたとも言われていますが、確かに受賞すべくして受賞した映画。 それと忘れていけないのは「実話」だということ。 そのことがこの映画に重みを加えているのは間違いありません。


ターミネーター(完全版)  監督/ジェームズ・キャメロン
2005. 9. 25

上の「タイタニック」と同じジェームズ・キャメロン監督の作品です。既に何度もテレビ放映されているのであらためて DVD 鑑賞をすることはあまり無いのですが、やはりコレクションとして持つべき作品でしょう。 SFX 映画として外すことのできない1本です。

ほとんどの映画がそうであるように、この映画も1作目の期待を裏切らないように、言い換えれば「1作目よりも興業収入を上げるために」 SFX がスケールアップしています。とにかくジェームズ・キャメロンと言えば「映画史上最高の制作費」というのが映画広告の謳い文句になるぐらいに莫大な予算をつぎこんでいましたからね。 しかし、そのほとんどにおいて資金回収をできているのが凄い。 ターミネーター役が最高のはまり役のアーノルド・シュワルツェッガーの貢献も大きいでしょう。

ただ、「タイタニック」も含めてこの監督の脚本はどうも・・・。 「映画雑談」はあくまでも映画をお勧めするために書くべきだと思うのですが、この監督の脚本はストーリーがベタベタなんですよ。 この映画でも、あまりにもわかりやすいエンディングに対して批判的な方も多いでしょうね。 単純明快なストーリーと言えば聞こえが言いのですが、映画の途中で結末を予想できてしまうのがこの監督に対する好き嫌いが極端にわかれてしまう理由だと思います。実は「アビス」という映画もそうなんです。それでも私がこの監督の DVD をいくつか持っているということは、私自身の深層心理がこの監督の作品を欲しているということ。 気分が落ち込んでいる時、仕事で疲れている時にテンションを上げるためにはもってこいの映画です。


エリザベス  監督/シェカール・カプール
2005. 8. 12

主演女優のケイト・ブランシェットが、まさしく鬼気迫る本当に素晴らしい演技で「魅せて」くれます。この年(1999年)のアカデミー主演女優賞は「恋におちたシェイクスピア」のグウィネス・パルトローでしたが、できればケイト・ブランシェットに受賞して欲しかった!! 今でもそう思います。今年(2005年)、ケイトはマーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ主演の映画「アビエイター」でアカデミー賞助演女優賞を受賞しました。「リプリー」他、助演でも見事な演技を見せてくれますが、彼女の真価は主演でこそ発揮されることに間違いありません。 非常に綺麗なオーストラリア出身の女優さんですが、この「エリザベス」で彼女のことを初めて知って以来、それをはるかに上回る見事な演技力に注目しています。この映画をきっかけに「ギフト」という映画の DVD を購入しました。その話はいずれまたということで。

タイトル通り、イギリス史上稀代の名君、そして「鉄の女」と呼ばれたイギリスのエリザベス女王の若い頃から即位するまでを描いた叙事詩です。一国の主としての苦悩、女性が蔑まれる時代、日々暗殺に狙われる不安、女王という立場の孤独・・・。そして、それらを全て踏み越えて「鉄の女」として生き続けることを選んだエリザベス、それを演じるケイトには、それこそ身震いします。かえすがえすもこの映画で主演女優賞を受賞しなかったのが残念。 いえ、決してグウィネス・パルトローの演技が良くないと言っているわけではありません。 彼女が出演している「愛しのローズマリー」も大好きです。しかし、この年に関しては実在する女王を見事に演じきったケイト・ブランシェットに受賞して欲しかったなぁと思うのです。

奇しくもこの年は「恋におちたシェイクスピア」で、ジュディ・デンチが同じエリザベス女王役を演じてアカデミー賞助演女優賞を受賞しているので余計に話題になりました。それ以外にもジェフリー・ラッシュやジョセフ・ファインズが両方の映画に出演しており、2つの映画には共通点が多いのです。「恋に〜」でのエリザベス女王はあくまでも端役なのです(出演時間が僅か7分でアカデミー賞助演女優賞を受賞したことも話題)が、両方の映画を見比べてみるのも良いかもしれません。


バイオハザード  監督/ポール・アンダーソン
2006. 1. 31

私は、いわゆる「クールビューティ」と呼ばれる女優さんが好きです。古くは「キャット・ピープル」のナスターシャ・キンスキー(今はどうしてるんだろう?)、最近では上にも書いた「エリザベス」のケイト・ブランシェット、「ピースメーカー」のニコール・キッドマン、そして今回紹介するミラ・ジョボビッチ。 ちなみにケイトとニコールはオーストラリア出身、ナスターシャとミラはヨーロッパ出身の女優さんです。

ミラ・ジョボビッチを初めて知ったのは、「レオン」で一躍時の人となったリュック・ベンソン監督作品「フィフス・エレメント」に出演した時。 「一度では覚えられない名前」とその映画の強烈な個性に惹かれて「ジャンヌ・ダルク」(同監督作品)も見ました。この女優さんは何といっても「目」に圧倒的なインパクトがあって、本人も監督もそれを意識して画面に演出します。断っておきますが「目で演技をする」という意味ではなく、瞳の色が外国でもなかなか見かけない色なので、自然と目の方に視線が向かうという意味です。このバイオハザードもそういうミラの個性、そして抜群のプロポーション(モデル出身)、しかしそれだけではなく、この映画のために猛練習を積んだというアクションシーンがいかんなく発揮された作品となりました。

ストーリーは「テレビゲームの映画化」 + 「ゾンビ映画」が合体したもの。 ちなみにバイオハザードは「生物災害」という意味で、遺伝子組み換えなどの生物研究によって引き起こされる災害の事。 映画も文字通りの内容です。ミラが出演していなければ完全に B級だったでしょうね。 映画宣伝の効果は確実にあると思います。しかしそれを大ヒットに結びつけたのは、やはりミラの個性でしょう。 まず、女性のアクション映画という作品が頭に思い浮かびません。 「エイリアン」はアクションというよりは SF 映画だし、「キル・ビル」は映画の内容よりもクエインティン・タランティーノという監督の名前が先に浮かんでしまう。 そういう意味ではヒットが難しいと言われるジャンルで続編も製作されるという快挙を成し遂げました。


コピーキャット 監督/ジョン・アミエル
2005. 8. 28

どう言えばいいんだろうか。 10年も前に公開されストーリーとして非常に面白い映画なのですが、最近の世の中を悪い意味で予見しているようなテーマで、ある意味怖い。 日本でもこのテーマを扱った映画が SMAP の中居正広主演「模倣犯」というタイトルで公開されました。過去の殺人事件をコピーして連続殺人を繰り返す犯人と、それを追いかける女刑事、いやいやながらも事件に巻き込まれる心理学者との息詰まるサスペンスです。

女刑事には「ピアノレッスン」でアカデミー賞主演女優賞を受賞したホリー・ハンター、心理学者に「エイリアン」シリーズで名を馳せたシガニー・ウイーバー、2枚目のイメージを捨てて犯人役に扮したハリー・コニック・Jr. (メンフィス・ベル他)が見事な演技を見せてくれます。ホリー・ハンターが「カメレオン女優」と評価されるのがこの映画を見て何となくわかりました。正直、顔や容姿があまり印象に残らないのですが、主演も助演も難なくこなせるという「どんな役にもなれる」演技力を感じます。

わかる人はわかるのですが、この映画を最後までじっくりと見た後に、もう1度冒頭シーンを見ると「どきっとする恐怖」があります。と言うよりもこの映画を楽しむための「隠しコマンド」という表現がぴったりかもしれません。 それに気づいた時、エンディングよりも怖さを感じました。ここで言いたいんですがね・・・。ヒントは「この映画を1回見るだけではわからない」。 1回見るだけでは絶対にわからないんですよ。それに気づいた時「他にも隠しコマンドがあるのでは?」と、この映画を何度も見たいという欲求にかられます。


マラソン・マン  監督/ジョン・シュレンジャー
2006. 2. 10

この映画は DVD の購入ではなくテレビからの録画です。全く予備知識を持たずに映画を見ると新鮮ですよね。 最初は主演俳優がダスティン・ホフマンだということもわかりませんでした。上に書いた「コピーキャット」や「逃亡者」のように最近もストーリーで楽しませてくれる映画は多々あるのですが、70年代から 80年代初期というのはロシアとアメリカの冷戦の頃で、非常に質の高いサスペンス映画やスパイ映画が続々と製作されたようです。この映画は言うなれば「静かな恐怖」。 ショッキングな映像で観客に訴えるのではなく、俳優のセリフと効果的な音響で観客を惹きこむ演出は最近の映画は本当に少なくなりました。 時代と言えばそれまでですが。

この映画を御覧になった方はおわかりだと思いますが、やはりこの映画の重要な役どころは「ローレンス・オリビエ」です。実は、私がこの名俳優の演技を見るのはこの映画が初めてでした。イギリスの演劇界ではこの人の名前が設けられた演技賞が存在するほどの「シェークスピア役者」。 しかし、そのジャンルに疎い私は見たことがありません。 奇しくも、偶然テレビで見た映画でこの役者の素晴らしい演技を見ることになりました。ダスティン・ホフマンもアカデミー主演男優賞を2度(「クレイマー・クレイマー」、「レインマン」)も受賞している名優。 しかしこの映画では完全にローレンス・オリビエに喰われているんですよ。 今あらためて思い返しても、この映画ではローレンス・オリビエが出ているシーンしか思い浮かばないのです。

・・・その思い浮かぶシーンは言わなくてもわかりますね。 「歯医者のドリル」のシーンです。このシーンを見て初めて「あっ、この映画だったのか」と知りました。ある意味ショッキングな映像かもしれませんが、現代の映画ではもっとえぐい場面、例えば実際に歯が抜かれるシーンまで映像にする筈。 しかしその場面は見せずにドリルの甲高い音とローレンス・オリビエの感情が全く感じられない同じセリフ。 ・・・怖いです。この映画を見て歯医者に行くのが嫌になった人が世界中にいるんだろうなぁ。

もう1場面。 街中を歩いているローレンス・オリビエを見て一人の老婆が叫ぶシーン。 何十年も隠し続けていた過去が意外なきっかけで暴かれ心理的に追い詰められていくのは、やはり最近の映画には見られないドキっとさせる演出です。


※番外編その2 アダプテーション  監督/スパイク・ジョーンズ
2006. 7. 15

以下は、ブログで書いた「映画雑談」ですが、やはりホームページにも残しておくことにしました。何と言っても「蘭」をテーマにした非常に珍しい映画なので。 ちなみに「番外編その1」は「宇宙戦争」について。 何故、番外編なのかというと私自身が DVD の購入やテレビ録画をしていないから。 今回も同じ理由です。

先日、BSデジタル放送で放映された「アダプテーション」を見ました。上にも書きましたが、「蘭」をテーマにした非常に珍しい映画です。レンタルショップで何度かパッケージを見て迷いながらも借りずじまい。 結局、テレビ放送を見ることになりました。

ポリリーザ・リンデニー、通称「幽霊蘭」を巡る蘭ハンターに、この映画でアカデミー賞助演男優賞(2002年)を受賞したクリス・クーパー、その蘭ハンターをリポートするうちにどつぼにはまっていく役にメリル・ストリープ(「クレイマー・クレイマー」で助演女優賞、「ソフィーの選択」で主演女優賞を受賞)、そして蘭を題材にした映画を「妄想」(この言葉がキーワード)するうちに同じくどつぼにはまっていく脚本家にニコラス・ケイジ(「リービング・イン・ラスベガス」で主演男優賞を受賞)。 何と1つの映画にアカデミー賞役者が3人! ちなみにニコラス・ケイジもこの映画で主演男優賞にノミネートされました。・・・、しかし、しかしながら監督がくせのありすぎる「ジョン・マルコビッチの穴」のスパイク・ジョーンズ。 絶対に普通の映画にはなっていない筈、それが迷いながらも今までレンタルしなかった大きな理由でした。

見終わった直後の正直な感想は・・・、「レンタルしないで良かった」です。映画の冒頭で「ジョン・マルコビッチの穴」の撮影シーンが出てきた瞬間、「これは明らかに違う」と感じました。もちろん、出演している役者の演技そのものは素晴らしいです。しかし、蘭をテーマにどういうストーリーが展開されるのだろうと予想している方、おそらくこのブログを御覧になっている皆さんの考えている方向とは全く違う映画でした。違うと言うか、映画を最後まで見終わっても
「果たしてこの映画に「蘭」は本当に必要なテーマなのだろうか?」というのが私の率直な感想です。

・・・、でも考えてみると当然なんですよ。 蘭をテーマにした映画でアカデミー役者が3人も出る時点で明らかに「蘭」ではなく、「演技」、「脚本」に焦点が絞られるのは予想できたこと。 それでも僅かながらの期待をかけていたのですが、悪い意味で予想通りの映画でした。残念。 ただ、俳優さんの演技は素晴らしかったとフォローしておきます。



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