リトル・ダンサー
   監督/スティーブン・ダルドリー
2005. 7. 1

「映画雑談」再開の1本目は、このコーナーを再開するきっかけとなった「リトル・ダンサー(原題 BILLY ELLIOT)」です。受賞こそなりませんでしたが、アカデミー賞監督賞と助演女優賞にノミネートされました。ここ数年に私が見た映画の中ではベスト。 何度観ても泣ける映画です。

端的に言うと「スポ根サクセスストーリー」なのですが、「ブラス!」や「フル・モンティ」を世に出している英国らしく、労働者階級に属するお家事情が描かれています。逆に言えばあまりにも英国らしいという感が否めなくもないのですが、もちろんその話がメインではありません。

父親の半ば命令でボクシングをしていた主人公ビリーが、同じ場所でレッスンをしていたバレエの練習を見て何ともなしにバレエの魅力に引き込まれていきます。母親は既に亡くなっており、失業中の父親と兄、少しぼけている祖母との生活はビリーにとって決して楽しいものではありません。 時に英国では炭鉱が閉鎖された年で、家庭は荒れた状態でした。ビリーは父親に内緒でバレエのレッスンを受けていきます。

それがばれたときの父親の怒りは想像できる通りの内容ですが、ビリーの情熱を知って自分の信念を曲げてまでもビリーのためにお金を工面する父親にはほろっとします。

何度見ても泣けるのはラストですね。 本当に何度見ても泣けます。駅で父親と兄と別れる場面から年月がスライドし、ビリーが英国国立劇場で主演を演じるラストシーン(おばあちゃんがいないなぁと考えるだけでも切なくなります)。 父親が感涙にむせびながら息子の出番を待つシーンはたまりません。 自分はスポーツを見るのもやるのも好きなので、こういう映画を見ると本当にじーんときます。また、子供の頃からテレビなどで聴いているので聴き飽きた感もある「白鳥の湖」ですが、この映画を見ると新鮮な気持ちで聞くことができますよ。 この曲って本当に素晴らしい曲なんだという事を再認識させ、ラストシーンの昂ぶりをいっそう盛り上げてくれます。

監督のスティーブン・ダルドリーはこの映画が初監督だということですが、この映画で一気に第一線に躍り出ました。まだ見ていないのですが、「めぐりあう女たち」という映画の監督もしていて、ニコール・キッドマンが見事主演女優賞を獲得しました。おそらく舞台出身である監督の演出も大きく貢献していると思います。



ビューティフル・マインド   監督/ロン・ハワード
2005. 7. 12

私はお気に入りの映画は何度も繰り返して見るタイプですが、この映画も5回以上は見ました。2001年度のアカデミー賞の作品賞・監督賞・脚色賞・助演女優賞を受賞しています。「ムーランルージュ」、「ロード・オブ・ザ・リング」、「ゴスフォード・パーク」、「イン・ザ・ベッドルーム」との大接戦を制しての作品賞でした。

ジョン・ナッシュという実在の天才数学者の生涯を綴るストーリーは、型にはまった伝記映画とは一線を画し、意外な方向へと進んでいきます。ほんと、「これがノンフィクションか !?」というストーリー。 それは本編を見てのお楽しみという事で。 この頃の時の人だった主演ラッセル・クロウ(前年度に「グラディエーター」で主演男優賞を受賞)を、本作で助演女優賞を受賞したジェニファー・コネリー、いつも助演で輝きを見せるエド・ハリスが脇を固めます。

「アポロ13」や「身代金」、「コクーン」を見て監督のロン・ハワードに一目置いていたので、アカデミー監督賞の受賞は嬉しかった! この人の作品はテンポがいいんです。共同プロデューサーとは長年コンビを組んでいるようで、良い脚本をじっくり選んでいるのでしょう。

本作でアカデミー脚本賞を受賞したアキバ・ゴールズマンが印象的な受賞スピーチをしていました。「美しい頭脳(ビューティフル・マインド)以上に美しい心の大切さ(ビューティフル・ハート)を教えてくれた両親に感謝します。」 いかにも脚本家らしい言い回しですが心に残っています。ちなみに、この映画をきっかけとして DVD 特典の「音声解説」に興味を持つようになりました。映画と同時進行で監督や脚本家がエピソードを解説するのは、映画の裏側が見えて本編とは違った面白さがあります。むしろ、こちらを聞きながら本編を見ているほうが多いかもしれません。

現在も世界中で震災、戦争、紛争で混乱の日々が続いています。一夜にして世界中がハッピーになるという訳にはいきませんが、この映画のように心の中に「ビューティフル・マインド」を持って頑張りましょう。



レッド・バイオリン   監督/フランソワ・ジラール
2005. 8. 5

第何回かは覚えていないのですが、この映画はアカデミー賞の作曲賞を受賞しています。作曲者が座席から飛び上がらんばかりに驚いていましたので、予想外の受賞だったのでは・・・? その時流れたバイオリンの旋律と合わせて映画のタイトルを初めて知りました。ノミネート紹介の中で流れた曲が短いながらも非常に印象的だったので、テレビで放映していたのを「これってアカデミー賞の作曲賞を受賞した映画だよなぁ」と何となく見始めたのですが、次第にストーリーの面白さに惹かれました。

バイオリンは単なる映画の BGM だと思っていたので、まさかバイオリンそのものの映画とは知らずにテレビ放映を見ていました。端的に言うと、何百年もいろんな人の手を渡り歩いてきた1つのバイオリンが現代のオークションにかけられるまでの物語です。あまり映画で取り扱われていない題材なので非常に新鮮で最後まで一気に見ることができました。セリ値が上がっていく高揚感と同時に、バイヤーがそのバイオリンに関わっている経緯を丹念に織り交ぜながら、最後のクライマックスを迎えます。それは見てのお楽しみですね。

この映画での2つのポイントは、バイオリンが作られる過程で加えられた「ある液体」とバイオリンの超絶技巧曲です。ジョシュア・ベルというバイオリニストの名前もこの映画で知り、実はサントラを買ってしまいました。初めて買ったクラシックのアルバム。 特にビデオパッケージの俳優(この映画の本当の主役はバイオリンです。)が弾く曲は、本当に人間が弾いているのかと思ってしまうほどの超絶技巧曲です。僧院の子供が、メトロノームの音が上がっていくにつれてどんどんテンポを上げていくところも好きな描写のひとつ。 それほどに、バイオリンを知らない人でもバイオリンの魅力にはまってしまう音色があり、アカデミーで作曲賞を受賞したのも納得です。


ボビーフィッシャーを探して   監督/スティーブン・ザイリアン
2005. 9. 5

予備知識が無く映画を見てそれが非常に良質な映画だと、かえって心に残ります。私にとってそういう映画の1つ。 実はこの映画は DVD を持っていません。 テレビで放映されたのを録画しました。もう繰り返しこの映画を見たことと DVD に特典映像がないのが購入しない理由です。

タイトルにあるボビー・フィッシャーというのは実在の人物でチェスの世界的名手です。映画の中では冒頭に本人の記録映像や生い立ちが出てはきますが、この映画はドキュメンタリーではありません。 またボビー・フィッシャー本人の事を描いているのではなく、ボビー・フィッシャーを彷彿とさせるジョシュ・ウェイツキンという少年を内容にした映画です。しかしチェスを知っている必要は全くありません。 チェスを通してジョシュとその周りを取り巻く家族、ライバル、先生との葛藤及び成長を描くヒューマンドラマです。

主人公を演じる少年も名演技ですが、周りを囲む俳優がローレンス・フィッシュバーン(マトリックス)、ベン・キングズレー(ガンジー)、「バックマン家の人々」で母親役を演じた女優など、そうそうたる顔ぶれ。 おそらく大々的には宣伝しづらい題材ということで映画会社もあまり宣伝しなかったと思うのですが、「知る人ぞ知る」という映画で良いと思います。この映画の中で、ライバルの少年は学校にも行かず毎日チェスだけをしていると描かれているのですが、オリンピックイヤーであった昨年、金メダルを目指して英才教育を受けている子供たちはこういう感じなのだろうかと思いました。見終わった後にチェスをしたくなるとか心がすっきりすると言うよりは、現在のボビー・フィッシャーはどういう人生を送っているのだろうと考えたくなる映画です。



炎のランナー   監督/ヒュー・ハドソン
2005. 11. 5

名作の1つです。アカデミー賞の作品賞、助演男優賞(イアン・ホルム)、おそらく作曲賞(ヴァンゲリス)も受賞していると思います。テレビでも何回も放映されておりストーリーは頭に入っているのですが見飽きるということがありません。 スポーツを題材にした映画は好き嫌いがはっきり分かれると思うのですが、この映画はスポーツを超えたヒューマンドラマです。

映画を見るきっかけはやはりヴァンゲリスのテーマ音楽です。あまり覚えてはいないのですが、相当話題に上ったテーマ曲ではないでしょうか。 この映画でヴァンゲリスの名前を知り、「ブレードランナー」も見ました。いずれも素晴らしいテーマ音楽です。

宗教がからむ映画と言うのは私にはぴんとこない部分があり、日曜日=安息日だからレースには出ないという主人公の意思が、初めて見た時にはよくわかりませんでした。昨年(2004)はオリンピックが開催されましたが、日曜日にも競技は行われていましたよね・・・? また、コーチを雇うことに対する周りの反発も、逆にコーチがいないのが珍しい現代にはなじまないテーマなのでしょうか。

では、何故この映画が好きなのかと言うと自分の映画を見るスタンスに関係しています。実は、私は主演よりも脇を固める俳優・女優に目がいきます。だから、例えば、ジュリア・ロバーツやデンゼル・ワシントンのようにネームバリューで売る映画(もちろん、両者とも素晴らしい俳優さんです)よりも、主演をくってしまったり俳優が火花を散らすような映画を何度もリピートして見てしまいます。ただ、ロバート・アルトマンのようにあまりにも多くの俳優・女優を使いまわす群集劇は極端すぎて引いてしまいますが。

この映画では、助演男優賞を受賞したコーチ役のイアン・ホルムが素晴らしい演技をしています。そう、映画「エイリアン」でのレプリカント役です。実は、なにげにいろんな映画に出ています。しかもジャンルが幅広い。 知っているだけでも「スイート・ヒア・アフター」、「ロード・オブ・ザ・リング」、「フィフス・エレメント」、「ハムレット」などなど・・・。主人公のことを人一倍理解してコーチをしているのに、競技場ではなく小さなホテルでしか見守ることのできない辛さは見ていてじーんときます。助演男優賞を受賞したのも納得の演技です。


愛しのローズマリー 〜特別編〜  監督/ボビー&ピーター・ファレリー兄弟
2006. 1. 5

新年最初の映画雑談は何にしようかと迷いましたが、恐怖映画とか SFX 映画ではなくやはりハートフルな映画にしようかなと。 「恋におちたシェイクスピア」でアカデミー主演女優賞を受賞したグウィネス・パルトロー、そして「ジャッカル」の端役出演を経て「ハイ・フィディリティ」で強烈なオタク役を演じて注目され、この映画で一気に主役級に躍り出たジャック・ブラックのハートウォーミングコメディです。決してロマンチックコメディではありません。 やはりこの兄弟監督の作る映画(「メリーに首ったけ」他)は一味違います。

ジャック・ブラック演じる「ハル」は「きれいな女性とだけ付き合うように」という父親の遺言がトラウマとなって、とにかく女性の「外見」だけを重視する男。 内面的な美しさは女性に対する評価の中から完全に欠如しています。それがある日、エレベーターの故障で閉じ込められるハプニングによって「呪文」をかけられ、外見ではなく「女性の内面」しか見えない事になってしまい・・・。

この頃の時の人、グウィネス・パルトローがコメディというジャンル、そしてファレリー兄弟の演出によって、良い意味で気の抜けた演技をしています。そしてこの映画での好演を認められ「スクール・オブ・ロック」で主演を果たしたジャック・ブラックは、何とゴールデングローブ主演男優賞(コメディ部門)にノミネートされるまでになりました。

この映画で私が一番印象に残ったのは、呪文を解かれたハルが、とある病院で女の子と対面して全てを理解する瞬間です。監督によると女の子の顔を画面に映すか映さないかで迷ったとの事。 確かにそのシーンは選択を迷ったでしょう。 しかしこういう言い方をして良いのかどうかわかりませんが、顔を出した事によってこの映画は「芯が通った」作品になったと思います。単なるコメディというジャンルではなく、ある意味、現代に対する痛烈な批判と言うか・・・。それを理解して女の子を抱きしめるハル=ジャック・ブラックの演技は絶品。 このシーンだけでファレリー兄弟の評価が上がったのでは?

この DVD はとにかく「特典映像」が充実しています。人によっては全く興味のない「音声解説」(私がそうでした)は、映画の裏側を同時進行で聴く事ができて非常に面白い。 とにかくふざけている兄弟監督なので音声解説を聴いているだけで DVD の「お得感」を感じます。

グウィネス・パルトローが出演していると言っても超大作という訳ではないので日本ではあまりコマーシャルされなかった作品でしょうが、こういう作品って俗に「レンタルビデオ店で回転率の高い」映画ではないでしょうか。 違うかな? コーエン兄弟(ファーゴ)、ウォシャウスキー兄弟(マトリックス)、そしてファレリー兄弟。 いずれも時代の風を感じる兄弟達です。


恋愛小説家  監督/ジェームズ・L・ブルックス
2006. 3. 22

「映画雑談」のリストを見ていただければ一目瞭然ですが、我が家の DVD は「SF映画」、「ホラー映画」、「サスペンス映画」がほとんど。 その中では異色の「恋愛もの」です。

ただし、純粋にストーリーや役者に惹かれた訳では無く、DVD を購入したきっかけはやはりアカデミー賞がらみ。 この映画が公開された 1997年、アカデミー賞は「タイタニック」一色の年でした。過去最多の 13部門での受賞。 しかし、そういう場合にありがちなように主演男優賞・主演女優賞は受賞ならず。 特に主演男優賞はレオナルド・ディカプリオがノミネートされなかったことでファンの抗議が殺到しました。その時、主演男優・主演女優をダブル受賞したのがこの「恋愛小説家」のジャック・ニコルソンとヘレン・ハントだったのです。実は1つの映画で主演男優・主演女優の両方を受賞するのはあまりありません。 特に近年はその傾向にあります(「羊たちの沈黙(1991)」以来6年ぶり)。アカデミー賞発表時は日本での公開もされていなかったので、タイタニックの受賞よりも「どういう映画なんだろう?」と興味を持っていました。

映画を見た感想はと言えば、確かにアカデミー賞受賞を納得させるお二人の演技でした。どちらかというと「クセのありすぎる」ジャック・ニコルソンはあまり好きではない役者だったのですが、この映画では等身大と言うか、演技している事を感じさせない役柄が非常に良かったです。

実は主演女優賞に関しては、受賞したヘレン・ハントよりも「ビクトリアの恋」のジュディ・デンチが下馬評では圧倒的に有利な評価でした。ノミネートされた5人の中の4人がイギリスの女優。 なので、それを覆して受賞したヘレン・ハントに対して「唯一のアメリカ人女優に票が集まったのでは?」と言われたものです。実際、アカデミー発表を見た時には私自身もそうなのかな? と思っていました。それまでこの女優を知っていたのは「ツイスター」のみ。 特にその映画は完全に SFX 主体の映画だったので、まさか主演女優賞を受賞するとは思っていなかったのが正直なところでした。しかし、映画を見てやはり良い演技者だなと。 ジャック・ニコルソンもそうですが、この映画のお二人は「等身大」という表現が的確だと思います。

考えてみましたが、この映画に関しては真っ先に思い浮かぶシーンはありません。 これって私の中では結構珍しい。 やはり二人の演技を感じさせない上手さにあるのでしょうね。 「これぞ映画だ!」という圧倒的な映像で魅せるタイタニックと対極にあるようなこの映画。 今振り返って見ると、1つの年にこの2つの映画が公開されたのは奇妙な偶然、しかし映画の楽しさを相乗効果で盛り上げる楽しさを感じさせてくれます。


月下の恋  監督/ルイス・ギルバート
2006. 6. 8

この映画を知っている人ってどれぐらいいるんですかね? DVDレコーダーを買った当時、DVD ディスクを集めるのが嬉しくてショップを回っていた時に、パッケージに写っていた女優さんの綺麗さと裏バッケージのストーリーだけを見て購入したもの。 言わば「勢い」で買った DVD ですが私にとってはお買い得の作品です。

ストーリーは「ゴースト・ラブロマンス」と言えば良いでしょうか。 幼い頃に妹を自分の過ちで死なせてしまったトラウマに悩まされる、幽霊を全く信じない科学者の主人公デビッド(エイダン・クイン)が、ある一通の手紙を機に自分の故郷へと戻ります。そこに現れた綺麗な女性クリスティーナ。 ケイト・ベッキンセールという女優さんですが、透き通るような肌に真っ赤な口紅。 ニコール・キッドマンを思わせる本当に綺麗な女優です。そしてこの映画はイギリス映画。 片や「炎のランナー」のように田園風景を散りばめた叙情的作品、片や「トレインスポッティング」のように現代を鋭く風刺した作品、好き嫌いが極端に分かれるイギリス映画ですが、伝統的なイギリス映画が好きな私にとってこの作品は映像だけを見ても癒されます。イギリスで「サー」の称号を受けた故ジョン・ギールグッドが医師の役で出演しているのも良いですね。 炎のランナーもそうですが、この方が出演しているだけで映画全体に「格式」を感じさせるのです。

この映画も「コピーキャット」同様、一度最後まで見た後にもう一度見直すと「そうだったのか」というシーンが多々ありまして。 その中でも私がぱっと思い浮かぶシーンといえば、デビッドとクリスティーナが雨宿りに入った小屋で出合った占い師のおばあさんの場面。 デビッドの手相を見るシーンも良いですが、クリスティーナの手を見た瞬間、占い師のおばあさんは・・・? 続きは映画を御覧ください。 映画を最後まで見た後では「なるほど」と思わせるシーンです。

上記を書きながらケイト・ベッキンセールについてネット検索してみたところ、「パールハーバー」のヒロイン役を演じていたことがわかりました。・・・ハリウッドに進出したいという気持ちはわかるのですが・・・、ちょっと残念。


遠い空の向こうに  監督/ジョー・ジョンストン
2006. 12. 16

良い映画ですよ。 私の中では「リトル・ダンサー」と同じぐらい泣ける映画、そしてベストの作品。 何よりも実話だというのがさらに泣ける。 まさに年末に見たくなる映画です。

炭坑で働く父親「アダプテーション」でアカデミー助演男優賞を受賞したクリス・クーパーの頑固な父親役がナイス!)のもとに生まれた主人公ホーマー。 ソ連の人工衛星スプートニクの打ち上げをきっかけに同級生とロケット作りに没頭していきます。度重なる失敗、父親や学校の校長先生の反発を乗り越え全米科学コンクールで1位になり奨学金を獲得。 その後 NASA の設計技師になるまでのストーリーが丹念に描かれています。監督が「ジュマンジ」や「オールウェイズ」の作品を手がけたと知って納得。 あるいは見る人によっては「泣かそう泣かそうとし過ぎでは?」と思うかもしれませんが、やはり実話だという基盤があるので気になりません。 とにかく私は何度見てもこの映画で泣きました。

炭坑に働く父親との衝突、葛藤、そして和解という点が「リトル・ダンサー」に良く似ています。そして父親と息子の間に理解のある「女教師」が存在して主人公を励ますのも同じ。 さらにはその女教師に「ある秘密」があるのも実は一緒。 しかしこの映画の女教師はリトル・ダンサーよりも暖かく、しかも主人公に教師の立場として諭すのではなく、時には表に立ちますが後ろでじっと支えているタイプです。演じるのはローラ・ダーン。 ジュラシック・パークではタフな女性調査官役を演じました。 そちらも良い味を出していますが、この女優さんは断然この映画の演技が素晴らしい。 ・・・そして泣けます。リトル・ダンサーが後半になって一気に情感がこみ上げて来るのに対し、この映画は泣けるシーンがいくつもありますね。 私が最も印象に残るシーンは、空高く上っていくロケットを女教師がじっと見つめている場面。 実はロケット発射の場に主人公と居合わせず別の場所で見ているのですが・・・。書いているだけで泣けてきます。その理由は是非映画を御覧いただきたい。 1年の締めくくりに見る映画として是非ともお勧めしたい映画です。


恋はデジャ・ブ  監督/ハロルド・ライミス
2007. 1月

昨年の「愛しのローズマリー」もそうですが、新年最初のこのコーナーは少しぐらいはロマンティックなものにしようかなと。 と言っても私自身がこういうジャンルをほとんど見ないので来年はどうなることやら。

今日紹介する「恋はデジャ・ブ」は日本での知名度はどうなのでしょうか。 ヒットしたのか、あるいは「隠れた名作」なのかわかりませんが、私にとっては主演のビル・マーレーの俳優としての演技が印象に残る作品です。ビル・マーレーを含むアメリカのコメディアンには日本であまり受けない役者さんが結構います。アメリカン・ジョークを前面に出すコメディアンはやはり日本人にとって好き嫌いがはっきり別れますからね。 ただ、日本での映画の興行収入は伸びなくても「ビデオ・DVD のレンタル率」が高いという俳優さんの面々。 その代表として良く例に挙げられるのが「バックマン家の人々」のスティーブ・マーティンであったり、「ミクロキッズ」のリック・モラニスであったり、「サボテン・ブラザーズ」のチェビー・チェイスであったりします。 私はいずれも結構好きな役者。 なので、そういう俳優が好きであればビル・マーレーも壷にはまるでしょう。 しかしそこに至るまでには結構な時間がかかりました。ビル・マーレーを初めて見たのは「ゴースト・バスターズ」。 しかしこの映画は主題歌以外、全く印象無し。 もちろんビル・マーレーという名前さえ知りませんでした。その後何年も経って「三人のゴースト」をテレビでたまたま観てからこの俳優に興味を持ちました。この DVD を購入したのも「三人のゴースト」での彼の演技がきっかけです。

ストーリーは2月2日の「聖燭節(現代の Groundhog Day とはこの記念日の事です)」のテレビレポートのために小さな町にやってきた主人公(テレビリポーター)が、思いがけず2月2日を繰り返し生きる事になった事によるドタバタロマンティックコメディです。同じ日を毎日繰り返す事を利用して主人公がその利点を生かしたり、逆にこれ以上同じ日を繰り返すことに耐えられず騒動を起こしたりと、思わずなるほどと感じさせる脚色が結構面白い。 しかし私がこの作品で最も印象に残るのは、映画の中での「毎日が同じ事の繰り返しだったらどうする?」というセリフ。 それが最高の幸せと受け止めるのか、不幸だと感じるのか。 さて、皆さんは?

もちろん、ビル・マーレーがアカデミー主演男優賞にノミネートされた「ロスト・イン・トランスレーション」も観ました。ちょっと彼にしてはシリアス色が濃いかな? 今回の映画のように、基本的には笑えるんだけどちょこっと泣ける作品が私の好みです。


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