高分子成形加工(Polymer Processing)、コーティング、繊維形成(溶融、乾式紡糸)関係のコンサルティング、ソフトウエア開発を専門とするコンサルタントです。
また、STEP(ISO 10303) AP227(3次元プラント設計情報規格)の国際共同開発経験もあり、この分野でもお役に立てます。 |
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4. Amazon.com |
現在はインターネットを通じて何でも買える時代になったが、中でも私にとって
Amazon.com
は便利で貴重な存在と言えると思う。
現在のAmazonでは、求めている本に関するキーワード等を入れて検索すると、新本だけでなく古本のデータも同時に表示され、購入できる点は特に便利である。 アメリカの古書店も、Amazon経由で本が売れることにメリットを見出しているようで出店数も多く、個人では見つけることすら不可能な本を、日本からも容易にAmazon経由で注文して入手できる点は、丸善等の本屋に円換算の2倍程度もの料金を払って、船便で2、3ヶ月かけて入手していた時代からすると隔世の感がある。 私も新本だけでなく、会社時代には図書館にあった本で、手元に置いておきたい本の何冊かを(McKelvey, "Polymer Processing"、Fenner, "Principles of Polymer Processing"等)、Amazon経由でアメリカの古書店から購入した。 またAmazonは、本に関するデータベースの役割も果していると思う。本の概要紹介にとどまらず、ページ数、目次や索引等も収録されている場合が多く、また一般読者の評価付きのものもある。もっとも読者評価の内容をどう受け取るかは、当然見た者の自己判断に任されているわけであるが、技術書に関しては真面目に書いている人が多いようで、率直な評価になるほどと思うことも少なくない。 日本のAmazonも、全く類似のシステムを採用して古書も扱っているが、まだ古書の出店数が少ないように思う。 |
5. Amazonの書評 |
先のAmazon.comのコラムで、読者による書評について少し触れましたが、私もいくつか書評をポストしました。詳細は、ひまな時にでも
Amazon
で見ていただければと思います。
1. "Polymer Processing Fundamentals" by Tim A. Osswald 教科書向きの分りやすい入門書 2. "Principles of polymer processing" by Roger T Fenner 1979年にイギリスの著者が教科書として書いた本であるが、今なお有用 3. "Polymer Extrusion, 4th Edition" by Chris Rauwendaal ポリマーのスクリュー押出しに関して、最も包括的かつ詳細に書かれた本 4. "Extrusion of Polymers: (Spe Books)" by Chan I. Chung 独自のユニークは押出し理論に基づいた、有用な理論を述べた本 5. "Film Processing (Progress in Polymer Processing)" by Toshitaka Kanai フィルムプロセスの理論と実際に関して、最も新しく重要な本 6. "Diffusion, Mass Transfer in Fluid Systems" by E. L. Cussler 拡散現象・物質移動に関する入門書で、フランクな記述が面白く、興味深く読める |
6. 自由体積理論(free volume theory) |
コータードライヤの塗膜乾燥シミュレーションで、塗膜内の拡散を考慮する際には、温度及び濃度依存性を含めた拡散係数の値を知ることが不可欠であるが、それを理論的に求めようとする場合に適用するものとしては、自由体積理論が最も有力である。
自由体積とは、対象とする系の全体の体積から、その体積中に存在する分子が占有する体積を差し引いたものを言う。この自由体積が、分子が浸入しうる領域であるとの考えのもとに組み立てられた理論が、自由体積理論である。 この自由体積理論を、塗膜の乾燥等で問題となるポリマーと溶剤系の拡散現象に関して、1ポリマー/1溶剤系(binary system)の場合について、少し詳しく述べる。 自由体積の考え方によれば、溶液中の溶剤の分子または高分子鎖(polymer chain)は、周辺の分子によって運動が阻害されるが、自由体積部の空隙または穴に飛び込むことによって、移動することができる。多くの場合、溶剤の分子は比較的小さいので、溶剤の飛び込み単位体(ジャンピングユニット、jumping unit)は分子全体であるが、フレキシブルな鎖状高分子の場合は、ジャンピングユニットは高分子の一部分の小さな部分である。 分子またはジャンピングユニットが溶液中で移動するためには、分子に隣接する自由体積の空隙または穴が十分な大きさを有することと、分子はその穴に飛び込むための十分なエネルギーを持っていることが必要である。このような考え方にもとづいて、単成分液の自己拡散係数の導出が行われた。 さらに、ポリマーと溶剤よりなる溶液に関して、Duda等により溶液中の溶剤の相互拡散係数と自己拡散係数の関係を表す式と、自由体積理論にもとづく自己拡散係数を求める式が導出された。 上述の自己拡散係数を求める式は、相当複雑な形をしており、その計算に必要なパラメータ値が文献等で与えられている場合は良いが、与えられていない溶液系の適切なパラメータ値を入手するためには、相当な手間がかかると考えられる。この点が、自由体積理論を用いた塗膜乾燥シミュレーションの普及に対するバリアとなっているものと思う。 [参考文献例:Duda, J. L., Vrentas, J. S., Ju, S. T. and Liu, H. T., "Prediction of Diffusion Coefficients for Polymer-Solvent Systems", AIChE J., 28 (2), 279 (1982) ] |