rhapsodie -- scherzo
「なんでィ土方さん、まだ昼ですぜ」
「黙ってろ」
言葉自体はからかうように、けれど声色や表情にはそれを乗せずに、総悟が座ったままで土方に声をかける。けれどそれに反応する様子もなく、土方はを押さえつけたままで言葉を返した。お互いに意図するところが凡そでもわかっているのだろう。当のはといえば、全身から届く鋭さと鈍さの混ざった痛みに、そして土方を跳ね除けることの出来ない体に唇を噛む。その様子に、土方は静かな声で口を開いた。
「 ――― ホラ見ろ。動けねぇじゃねェか」
その言葉に、は目を瞠る。反抗を止めたに、土方が押さえつけていた力を緩めれば、諦めてここにいた方が賢明ですぜィ、と総悟が土方越しにへと声をかけた。腕を掴んでいた手についたの血に小さく眉を寄せて、こんだけ出血させといて馬鹿言ってんじゃねぇ、と畳み掛けるように土方がへと視線をやる。
「大怪我人は黙って寝てろ。細けェことは治ってからだ」
その瞬間、の中で、目の前にいる土方が、彼と重なった。不器用に、ぶっきらぼうに、けれど何かあった時には心配して、気遣ってくれたあの人。ひじかたさん と、声には出ずとも、の口元が動いたのを見れば、それが自分を呼んだわけではないとわかったのだろう、チッと舌打ちをして、山崎ィ!と土方が障子の向こうに声をかける。そうすれば、相変わらず表情のわからない顔で障子の方を見やる総悟の向こうで、障子を開いて山崎が顔を出した。山崎さん、と呟いたに一瞥をやりながらも、土方はいつもの調子で山崎に声をかける。
「もっかい医者つれて来い。それから総悟」
すぐに頷いて消えた山崎を見送ってから、なんですかィ、土方コノヤロー と返事をした総悟に向かい合えば、なんだかんだと言ったところで付き合いの長さからだろう、総悟も何を言われるかはわかっているように見えた。けれど、やはり山崎もわかったらしいこいつに、会わせても大丈夫なのか。今までの状況から、ちらりと頭を掠めた思考を切り捨てるように、土方は副長の声でそれを告げた。
「近藤さんを呼んで来い」