rhapsodie -- scherzo
視界が明るくなった。瞳を開いたんだと思った。
「・・・・ここは・・」
見たことのない天井と、自分の声に、は眉を寄せる。どうしてこんなところにいるんだろう。どうして声が出るんだろう。いや、死後の世界がどんなものかなんて、知っているわけではないけれど。ふと、視線を横にずらす。そうすれば、自分が寝ているこの布団の隣に、見慣れたものを見つけた。刀だ。見慣れた、刀。そっと布団から手をだして、刀へと伸ばす。刺すような痛みが襲うけれど、いまさらなことだ。痛みを感じないわけではないが、慣れていないわけでもない。戊辰戦争になってからは、なおさら。手にふれた鞘からはひんやりとした感触がして、はそれによって動かされるように体を起こした。
「・・っ・・・・」
腕を伸ばしたときとは格段に違う痛みが襲う。けれど、耐えられない痛みではない。そして思う。こんな痛みがあるということは、これは夢ではないのだろうと。ここはもしかしたら、先日まで生きていたのと同じ世界なのかもしれない、と。そんな考えを抱きながら、はそっと刀を抜いた。すっと、刀がその姿を現す。あぁ、とは思った。俺の刀だ、と。
(俺・・・生きてるんだ)
未練がましくも。ふと、が嘲笑する。生きていたかったわけではないのに。俺だって、死ねる場所がほしかったのかもしれないのに。誰よりも生きてほしかった人たちはいないのに。あの人たちは、もう いないのに。