rhapsodie -- scherzo


「・・・どうしようか・・」

ぽつり、とつぶやいて、はそれだけを考えた。
これから、どうするべきだろうか。今までは、新撰組以外で生きることなど考えてはいなかった。もっとさかのぼれば、近藤さんや土方さん、総司さんたち試衛館の人々と一緒にいたいと、そう思って生きてきた。
けれどもう、誰もいない。温かかった近藤さんも、頼もしかった土方さんも、優しかった総司さんも。 誰もいない。 今からでも、彼らのためにできることは、あるのだろうか。

「・・土方さんの、墓・・・」

彼らのためにできること。それを思って、はふと、一番近くまで一緒にいた土方を思い出した。そうだ、彼の、彼の墓を作らなければならない。そして、その死を、会津にいる斉藤さんに ―― できれば、永倉さんと左之助さんにも伝えたい。きっとすでに、知っているのだろう。けれど、新撰組の一員として、彼の死を、思いを。それに、近藤さんの首だって取り返しに行って、総司さんの墓参りもして。
――― なんだ。やるべきことは、まだあるじゃないか。ならば死ぬのは、新撰組のためにできるすべてを終えてからでいい。
そう思って、は笑みをうかべた。穏やかな笑み。すべてを悟ったような、諦めたような、思わず浮かんだ笑み。無意識に閉じていた目を開いて、さっそく、と、は布団をめくった。誰の家かもわからないところで、安々と寝てはいられない。迷惑をかけてしまっただろう。早く出ていかないと。そう思ったの耳に、足音が響いた。数は、2つ。日ごろの習性ゆえか、は静かに立ち上がり、布団を乱暴に折ってどけた。左手にしっかりと鞘を持って、障子へと視線をやる。がらり、と、障子が開いた。

「・・・・おう、起きたのか」

響いた声に、は思わず目を見開いた。刀をもつ左手が、緩む。



「・・・・・・・・・・・土方、さん・・」

成り行き上で拾ったそいつは、信じられないと言いたげな顔と、大きなゆれる瞳と、泣きそうな声でそう言った。
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