rhapsodie -- scherzo


誰かの名前を呟いて、またも困惑した様子を見せるに、土方は眉を寄せる。総悟は、わからないと言ったようにきょとんとした顔を見せた。先ほど呼ばれたのは、『総司』という名前だった。自分の名前とも似ているが、けれど、違う名前。

「俺ァ沖田総悟って言いやす。総司じゃないですぜィ」
「・・・・沖田・・・総悟・・?」

名前を名乗った総悟に、が眉を寄せる。姿形がにていて、さらに、名前まで?そう思いながら、は土方へと視線をやった。

「・・・失礼ですが、お名前を伺っても?」
「・・・・・真撰組副長、土方十四郎だ」
「次期副長は俺ですけどねィ。俺ァ今は一番隊隊長でィ」

少し考えをめぐらせたような間を取ってから、土方が名を名乗った。本来なら相手から名乗らせるところだが、この様子は何か、今までのような攘夷志士とは違うと感じた土方の対応だった。そうして、総悟も続く。総悟の言葉に対して土方が怒鳴るが、そんなもの、の目には入らなかった。
この人も、顔だけでなく、名前まで似ている。どうして、こんな2人が揃っているんだ。けれど、が聞き逃せなかったのは、彼の使った名称だ。
新撰組副長。その地位は、なによりも新撰組を思っていた、土方歳三、その人のものだ。
新撰組一番隊隊長。自分が仕え、誰よりも剣に優れた優しい人は、沖田総司、彼だけだ。
他の誰にも譲ることなどできはしない、他の誰にも代役など出来るはずもない、あの人たちだけのもの。それを思った瞬間、の頭の中で何かがはじけた。おろしていた刀を、構える。

「!」
「・・・てめェ」

その様子に驚いたのは、土方たちのほうだった。今までの戸惑ったような、けれどどこか温和な様子は何処へやら、は見事に雰囲気を変え、彼らに刀を向ける。その姿は、新撰組一番隊隊長補佐 のものに違いなかった。

「・・・攘夷志士か」
「攘夷志士・・?ふざけるなよ」

土方の言葉に、は心底嫌そうに眉を歪める。その態度に土方はどういうことだ、と困惑する。総悟はといえばただ、力量のある相手との対峙に集中しているようだった。そんな彼らの様子に、は刀を抜く。

「新撰組一番隊隊長補佐、。・・・軽々しく新撰組を口にしたこと、後悔しろよ」
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