rhapsodie -- scherzo


重く響く音は、彼らの力量の高さを示していた。その音に、この場へと駆けてくるいくつもの足音がの耳に届く。先ほど土方十四郎と名乗った男が自分たちの、と言っていたということはここは屯所のようなところなのだろう。つまりは、四面楚歌、最悪に近い状況だ。頭の中で冷静にそんなことを考えつつも、はこの状況を後悔していなかった。もともと死んだと思った命、彼らの誇りのために捨てるなら何も惜しくない。

「あの怪我でよくやりまさァ!」
「下手な心遣いは無用だ!」

総悟の言葉を示すように、の着物には開いた傷から血が滲む。けれどの言葉のように、その動きはあれほどの怪我を負っていたようには思えなかった。――― の実力を、知らない彼らには。
ガラリと大きな音を立てて開いた障子の奥にいる、隊員の様子、今剣を交わす男、それから、先ほどの、土方十四郎。きっと1つの、いい組織なのだろう。ならばなぜ、新撰組を名乗るのか。戊辰戦争中の今、利点なんてあるものなのか ―――。そんなうちにも、総悟との討ち合いは続き、同時に隊員の剣も交わしていく。いい剣士だ、とは思った。 ――― 総司と、よく似ている。ふとよぎった思いが、半ば麻痺していた感覚を蘇らせた。刺すように痛んだ ――― 戊辰戦争で負った、利き腕の傷。力が緩んだ瞬間を狙ったかのようにかかってきた土方の刀がの視線に入った。
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