rhapsodie -- scherzo


カン、と音を立てての刀が飛んだ。部屋の隅へと転がったその刀を視線で追う土方に、総悟はへと刀の切っ先を向ける。そんな彼らに、は唇をかんだ。隊としての連携は取れている、剣の腕だってある、それならば何故。ぐっと握った利き腕の拳を伝って、開いた傷口から伝ってきたらしい血がたれる。悔しくて仕方なかった。あれほどの思いをして、あれほどの辛さをして、それでも背負ってきたその名前。

「・・・ッどうして・・・」
「・・・あ?」
「どうして、その名を名乗るんだ・・これだけの力があるなら、どうして、・・どうして・・!」

うつむいているの顔は、土方たちには見えない。けれどその声は悲しいほどに震えていて、土方はの一挙一動を見逃さないよう、見つめる目を細める。総悟は、に向けた刀をそのままにの言葉を待った。

「どうして、あの人たちの誇りを奪うようなことをするんだ・・・!」

ポタリ と。
畳に水滴が落ちたのを、土方は目に焼き付けた。そうして、刀を鞘へと収める。総悟も、土方にならったわけではないだろうが、に向けていた刀を下げた。そうして、「お前らはちょっと出てろィ」と他の隊員に声をかける。戸惑いながらも、ふざけた様子の微塵もない沖田の言葉に従うようにして隊員が部屋を出、扉を閉めれば、沖田は下ろしていた刀を鞘へと収めた。
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