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「好きです」 言われた言葉に、だいたい予想はしていたものの、あー・・と小さく声を漏らす。そうして「悪い」と口にした。そうすれば、目の前にいる女(たしか1つ下の、ハッフルパフ生)は、少しの間を空けてから「はい」と頷く。今までだったらそこで俺は寮へと戻ってたわけだけど、最近は、なんつーか、こういう気持ちもわかるっつーか、度胸がいるのもわかるようになったっつーか。だから、「ありがとな」と声をかける。そうしたら、その子はびっくりしたみたいに俺を見て、それから、目に涙を浮かべたままで、笑った。 What made in winter
10. The feeling seems to mount steadily.
寮へと帰る道すがら、さっきのは今までで一番和やかに終わった告白だったんじゃないかと俺は思う。いつもはまぁ、もっと大きく泣かれたりだとか、理由を問い詰められたりとか、あまり後にいい感情は残らないことが多い。けれど今回は、罪悪感みたいなもんはあるけど、ありがたいような気持ちもあった。それは俺が彼女たちの気持ちを少しはわかるようになったからなのかもしれない ――― なんて思って、俺は思わず苦笑した。(俺もどっかで言わないとだよなー)(・・・できんのかっつー話だけど)なんとなく吐いた息は白く染まって、冬も佳境を過ぎて、だんだん終わっていくんだろう、なんてぼんやり思っていたところで目に入った人影。(・・あれは) 「・・」 「え、あ、シリウス!」 大きめの声で呼びかければ、周りが静かなせいか、少し遠くにいたも俺の声に気づいて進行方向を俺へと変えた。(なんか、地味に嬉しいよな、こういうの)近くにきたに「なんで外にいるの?」なんて聞かれて、俺は思わず言葉を濁す。(いや、だって、なぁ。)まぁいろいろ、なんて曖昧に答えれば、ふーん?と納得したようなしてないような顔をしたに「おまえこそ」なんて返す。(ちょっと薄着じゃねぇか、それ?) 「んー、なんとなく・・けど結構寒いね」 「結構って・・それじゃまた風邪ひくぜ」 からかうように笑って言ってみる。とはいえ、以前の風邪は俺達が原因だったわけだけど。(・・・まぁそれは水に流す方向で)「ひかないよー」なんて笑ってるだけど、やっぱり寒いんだろう、一瞬小さく震えたから、俺は反射的に自分のマフラーを外した。(・・・って)(どーするよコレ)正直固まったけど、こうしてしまったものはしょうがない、(というかいくしかない、)ってことで俺は巻いてたグリフィンドールのマフラーをに差し出した。ぱちり、とが瞬きをする。 「巻いてろって。俺は結構着込んでるから」 「え、そんな、悪いって」 「おまえが風邪ひくほうがよっぽど悪いだろ」 遠慮するにぽいとマフラーを投げれば、は反射的にか、慌ててマフラーを取る。驚いたような困ったような顔で俺を見上げてくるに「巻いてろ」ともう一度言いながら口元をあげれば、は少し迷ってから、うん、と小さく頷いてマフラーを巻きだした。(・・・なんか恥ずかしいなこれ)(自分でやっといてなんだけど)そうやっての首に巻かれたマフラーがいつもしてるレイブンクローのものじゃないことが新鮮で、へぇ と思わず声が漏れる。 「結構似合うじゃねぇか、グリフィンドールも」 「そう?・・ありがと、シリウス」 ちょっと照れたみたいに笑うに「どういたしまして」と返して、「早く校内に戻ろうぜ」と声をかける。首下は若干涼しく感じるけど、それこそ寒さなんて感じなかった。(我ながら単純だよな・・)頷いたが俺の隣で歩き出して、少し視線を向ければ俺よりも大分低い位置にある頭と、寒さでか少し赤くなった頬と、あと俺のマフラー。なんだか緩んでくる頬を押しとどめながら、思う。やっぱり、がいい。 |