「・・うわぁ・・・。」
「やっちゃったねぇ・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・シリウス、固まってんなって」




What made in winter
04. Timing is the worst.






「・・・・なんで、スネイプじゃねぇんだよ・・」
「僕らが忍びの地図を手放すのが少し早かったようだね・・・スネイプは、一度教室へ戻ったようだ」
「・・・・なんでこんなタイミング悪ぃんだ・・」
「・・・・・それはもうしょうがないね、シリウス」

最悪だ。それ以外に、言いようがない。俺はこんなにタイミングが悪いやつだったか?そんなことはなかったはずだ。なのに、なんでよりによって。からかうでもなく真面目に俺を慰めにかかるジェームズたちに、余計にどんだけのことをしたのかっていうのがすげぇドンと圧し掛かった。つーか、なんでスネイプがこねぇんだよ!だとわかってたら、あんなことするわけもなかったっていうのに。
レイブンクローのは、俺にとって、絶対に悪戯なんて出来ねぇやつだ。グリフィンドールとレイブンクローはわりと仲が良いから、合同授業なんかがあったときには場合によっちゃ一言二言言葉は交わすが、を知るキッカケになったあのとき以来、そこまでちゃんとした会話をしたことだってなかったってのに。(ジェームズは「きみがここまで奥手だとは思わなかったよ」と肩をすかせて笑った。)(うるせェっつーの!)それなのに、こんなことをにしてしまうなんて。

「・・・・これ、のじゃないか?」

すっかりガクリと来た俺に、ジェームズが声をかけた。雪に埋もれた地面から、教科書を持ち上げる。あぁ、そういえばがその教科書を持っていたのは見たことがある。俺が取ってる授業のじゃねぇから、何の教科かはわかんねぇけど。その教科書は、雪をかぶって、ところどころ湿ってしまっていた。

「明日ってたしか、レイブンクローと合同授業あったよね?」
「・・あぁ。」

リーマスの言葉に頷く。そう、明日はレイブンクローとの合同授業がある。忘れるわけはない。毎週楽しみにしてる時間だ。だからって、明日も楽しい時間になるかわからない。彼女が怒っていたら?きっと怒ってるだろう、普通に考えて。そう考えるだけでも気分が沈んだ。

「じゃぁ、これを渡して一緒に謝ったほうがいいよ。」
「あぁ、それがいい。謝ってなかったろ?シリウス」
「・・・そう、だな。」

そういえば、と思い返す。本当に慌てすぎて、状況を理解できなくて、ただを見ていただけで、謝れなかった。なんとも情けない。自分のダメさにため息をつきながら、俺は差し出された教科書を受け取った。その濡れた教科書に、顔を濡らして俺を見上げていたをを思い出す。髪も濡れて、雪が触れた顔は冷たさで真っ赤になって、驚いたように瞬きをするまつげには、少しだけ雪が乗っていた。やっぱり、かわいいと思った。

「・・・・・風邪、引かねぇといいけど・・」

今更ながら、そんなことを思った。(だってあれ、俺たちの魔法で取れ難さ5倍にしてあったんだぜ?)(あァくそ、スネイプのやつ・・!)













「・・・・・・・風邪・・?」
「そう、昨日談話室に帰ってきたらびしょ濡れになってて、熱があってね。部屋で寝込んでるの」

あれの翌日、合同授業にはいなかった。あいつとよくいる女に聞いて返ってきた言葉に、俺は思わず呆然と聞き返す。それって、完全に俺たちのせいじゃねぇか。そろりと、ジェームズとリーマスとピーターが俺の顔を見たのがわかったけど、俺はただただ罪悪感が募るばっかで、それを気にしている余裕はなかった。目の端で、ジェームズたちが顔を見合わせる。けど、俺たちの間でそんなことがあったって、そのまま授業は始まった。

もちろん、いつものように授業なんて聞いていない。違うのは、いつもはジェームズたちと話しているところを、俺がただぼうっとしているっていうことだ。俺は、なんてことをしたんだろう。いつもだったら、この席から真剣に話を聞く、たまにさっきの女と面白そうに笑ってる、まれにカクンと体を揺らして目を覚ますを見ることが出来るのに。(本当に、そんな姿を見てるだけでなんだか幸せになるんだよ。)どんなに描いたって実際には見えない姿に溜め息をついて視線をずらすと、の教科書が目に入った。

謝ろう。

俺が今、一番しなきゃなんねぇのは、それだ。今まで何も書いていなかった羊皮紙を前に、俺は羽ペンをとった。





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