あー と出した声はなんかすっごく掠れたままで消えた。うん、なんていうかね、思いっきり風邪引いたというか?やっぱりまずかったのはあれだなぁ、逃げた後に教科書落としたことに気づいて戻ろうと思ったんだけど戻るに戻れない状況でぬれたままうろうろしてたことだよ。早く寮に戻って温まればよかったのに、ホントわたしって優柔不断で嫌になる。(結局ブラックたちに会ったら気まずすぎるからいかなかったしね!)でもってこうやってに(半ば強制的に)寝かされてるわけだしね、本日のちゃんの予定、一日中ベッドの中!うわぁなんて味気ない一日だ・・・。(誰かお菓子とか持ってきてくれないかなぁ)




What made in winter
05. He seems to be unexpectedly gentle.






?」
「・・・んー・・・・・?」

シャ、とカーテンを開ける音がして、わたしは目を開けた。ていうか、いつから寝てたんだろ?こんなに寝てられるわけないじゃん!って思ったわりになんだかんだでもしかしてずっと寝てたのか?(脳みそ溶けてたりしてね・・・)(洒落にならん!)でも結局出たのは掠れた声で、あれ、ちょっとマシになったかも?けどやっぱり掠れてることに違いはない。そんなわたしには「まだ声治ってないね」って困ったような顔をしながらわたしのおでこに手を置いた。(あ、気持ちいーなぁ)

「熱もまだあるね。明日も無理かもよ」
「えー・・・やだ、つまんない」
「やだじゃありません。それに、明日は休日だからいいじゃない」

良くないよ!せっかくの休日だっていうのに!しかも明日はホグズミードにいける日だっていうのに!あぁでも、このダルさで動くのはちょっと億劫だなぁ、っていうことは明日もまた今日と同じように一日よく睡眠をとりましょうっていう展開?やだなぁ、本当に脳みそ溶けちゃうよ!(いやまぁね、ふくろうは終わってるから多少はいいけど・・・)(って、良くない!)ぼおっとした頭でそんなことを考えていたわたしに、が「そうだ」といって教科書を取り出した。あれ、なんか見覚えのある・・・っていうか、あれ?それって。

「はい、コレ、落し物だって。」
「あ・・うん、誰が?」
「ブラックたちよ。グリフィンドールの」

「彼らに拾ってもらえるなんて、運がいいわね」なんていう(ねぇ、なんか面白がってない?)を余所に、拾ってくれたなんて親切な人だなぁ なんてちょっとばかし感激していたわたしはびっくりして受け取った本を落とした。ドサ、っていう重い音と一緒に、その本は寝ていたわたしのおなかに直撃する。(いった・・!)ブラックたちが?ということは、あれからすぐにわたしが落としていたことに気づいたってことかな。うわぁ、よかった、戻らなくて!(戻ったところで戻り損だったってことか!)なんだかんだでいい人なのかもしれない・・って、いや、でも元はといえば彼らのせいで教科書を落としたんだよ。うーん と唸りながら、わたしはおなかの上にあった本をベッドサイドのテーブルに置くために持ち上げた。そうしたら、その本の中から一枚、羊皮紙が滑り落ちた。布団の上に落ちた羊皮紙は二つ折りになっている。(あれ?なんか挟んでたっけ?)(覚えてないなぁ)

、わたしご飯食べてくるね。ほしいものある?」
「うーん・・・チョコ食べたい」
「そうじゃなくて。」
「えー・・・ううん、いいや」

正直、あんまり食欲ない。わたしにしてはとても珍しい!やっぱり風邪引いてるんだなぁなんて今更に自覚しながら、「何か食べれそうなの持ってくるから」って言ってが部屋を出て行った。いい子だなぁ、こういうときは人の優しさが身にしみるっていうけど本当だ・・!(でも、わたしホントにチョコ食べたいんだよー)あーあ とため息をついたら手に持ったままだった羊皮紙を思い出して、わたしは羊皮紙を開いた。でもって、その瞬間に気づく。これ、わたしが書いたものじゃない。(だってこの字、すごく綺麗だもん)(え、だれの字?)よくよく見ていくと、一番下に、名前が書いてあった。えぇと、なになに、Black ―――

「・・・・ブラック?」

え、ちょっと待って。わたしが知ってるかぎり、このホグワーツにいるブラックは2人しかいない。スリザリンの4年生のレギュラス・ブラックと、グリフィンドールの6年生、シリウス・ブラック。この2人だ。この手紙には、ご丁寧に Sirius Black と書いてある。ということはつまり、いや、普通に読めばわかるんだけど、つまりこの紙を書いたのはつい昨日お世話になった(いや、なってない!なってないぞわたし!)ブラックだ。え、な、なんで・・・!?(ちょっとコレなんて書いてあるのか非常にドキドキするんですが・・)(いいときめきじゃなくてね!むしろ逆な気がするよ!)決意を固めるために、わたしは一回大きく息を吐いた。決意なんて大層すぎるって?あまい!このブラックさんはそこらのブラックさんとはワケが違うブラックさんなんだよ!(あれ、なんかだんだんわけがわからなくなってきた)混乱しているわたしとは違って、綺麗なその文字は相変わらず綺麗なままで羊皮紙の上にある。よし、読め!読むんだわたし!無駄に力んで、わたしは羊皮紙の文字へと目を向けた。




驚かせてたら悪い。
本当は今日、直接言おうと思ってたんだが ――― 昨日は、本当に悪かった。まさかだとは思わなくて ――― いや、これも言い訳だな。とにかく、悪かった。あの雪玉には魔法をかけてあって、崩れにくくしてあったんだ。だから余計に冷たかったと思う。風邪を引いたっていうのも俺たちのせいだよな。ごめん。体調はどうだ?
それで、お詫びって言っちゃなんだけど、なんか欲しい物とかあるか?明日はホグズミードに出れる日だし、何かあったら言ってくれ。
シリウス・ブラック



・・・・え、なんか、謝られちゃったけど。あれ、もしかしてこの手紙の本題ってこれ?なんかこう、もっと、よくも邪魔したな とか、そういうのではなくて、謝ってくれてるの?しかもお詫びって・・・。(そんな大層な!)(そりゃ、ブラック家のご長男であられるブラックなら大抵のものは買えるんだろうけど!)(無駄遣いは良くないって・・・!)とりあえずコレは、返事をしたほうがいいんだよね。え、でもなんて答えるの?そんな、お詫びなんてもらうようなことじゃないし(むしろ貰っちゃこっちが悪い気さえしちゃうよ)、でもこういうのって断るのも失礼になるのかもしれない(だって、なんかこう、プライドというか・・?)。どうすべきかよくわからなくて、わたしはブラックからの手紙をみた。あぁ、綺麗な字だなぁ。(育ちがいいからなのかな)(かっこよくてスタイルよくて字も綺麗ってどうなの)どうしようかな、にでも相談してみようか。そういえば、はなにを持ってきてくれるのかな。ホグワーツの夕食って、基本的に軽いものなんてないと思うんだけどなぁ。板チョコとか出てないかなぁ。出てないよねぇ。(・・・・ん?)

「・・・あ。」

そうだ。そうしよう。このくらいなら、いいよね? よし、と決めて、わたしはベッドの下のトランクを取り出した。そのなかから、わりと綺麗な羊皮紙とインクを選んで、身体を起こす。(うあー だるい・・)よいしょ と机に向かって、羽ペンを持って気合を入れた。(だって、あんなに綺麗な字への返事だもん、少しでも綺麗に書かなきゃ・・・!)何から書き出そうか。やっぱり最初は、ありがとう かな。(ブラックは、わたしが思っていたよりもいい人みたいだなぁ)





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