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意外な展開だった。彼は有名な探偵ではあるけれど、怪盗の捜査には参加などしないと思っていたし ――― 怪盗キッドの事件を除いては、になるけれど。ということは私も有名になってきたということなのかな。どうなんだろう。嬉しいことなのか そうでないのかはわからない。 ぽん とは自宅のテーブルの上に黒いシルクハットと一通の封筒を置いた。身に着けていた黒いスーツも着替えてから、ソファに背中を預ける。今日もお疲れ様でした と自分に言ってみて、はぁ と息をついた。特に今日の仕事が大変だったというわけではない。ただ、サプライズゲストがいたというだけだ。けれど今後も彼が捜査に関わってくるとなると、面倒なことになるに違いない。それを思って、はもう一度 はぁ と息をつく。 そうして、シルクハットと封筒を置くよりも前に、もう1つ、こちらは丁寧にテーブルに置いていた 今日の功績に目をやった。そうして手にとって、じっくりとその花器を眺める。なるほど、確かに。小さくそう呟いて、は花器をテーブルに戻した。その隣には放置されている新聞が放ってあって、ちょうど開かれている面には、有名な高校生探偵の記事が書かれている。 「・・・工藤新一、ねぇ」 ピン と新聞に載っている彼の名前を指ではじいて、は封筒に手を伸ばす。ビリ とあまり気にせずに封筒を破れば、そのなかには便箋が一枚と、CD−ROMが一枚入っていた。便箋はただ単に CD−ROMを覆っていただけで、白紙のまま、何も書かれていない。 は始めから便箋には目もくれずに、そのCD−ROMを自分のパソコンへと差し込んだ。そうすれば出てきたパスワード入力画面に、文字を打ち込む。8回目にその作業を終えてようやく、CD−ROMは内臓されていたデータをの目前へと移した。 ― 日曜 8時 ― 辻堂左右吉 ― 聖母マリア像 ― 。表示されたそれらの単語をきちんの頭に叩き込んでから、はキーボードを打ってCD−ROMのデータを消した。そして、最近では手馴れてきたパスワードを打ち込んで、また画面を変える。その画面に、はひとつ口元を上げた。 「さて、今度はどうやって届けようかな」 来演の日取りは ? お決まりですか
『 今夜8時、辻堂左右吉氏宅より、聖母マリア像をいただきに参ります 』 |