To Shine
願え 力を






「こんにちは、君」
「こんにちは、西園寺さん、尾花沢さん」

にこりとよこされた笑みに同じように笑い返す。挨拶をした自分は、選抜合宿の参加者ではないけれど。





「かーっ!盛り上がってんなー!上がらなきゃよかった俺」
「そんなら取り消しでって言ってきてやろーか?」
「うわっ!?い、いや、いいッスよ 先輩!」

藤代が堪えきれないというように手を握り言った言葉に、後ろからが突っ込んだ。突然のその言葉に慌てる藤代に笑いながら、白熱してんな と、が藤代の隣に並ぶ。すると、藤代の逆隣にいた渋沢が気づいたようにに声をかけた。

「どうしたんだ?その荷物は」
「あぁコレ?お土産。今 榊さんの車からとってきた」
「お土産!?なんスか!?」

渋沢の言葉に、は持っていた紙袋を軽くあげる。その紙袋は、さきほど渡した尾花沢や西園寺、マルコなどの選抜スタッフの分だけ軽くなっていた。こちらの事情で断ってしまったのだから、一応、礼儀として後で届けようとは思っていたのだ。土産と言う言葉に藤代がパッと顔を輝かせてその紙袋の中身を見ようとするが、はそれを軽くよけて、藤代とは反対の地面に紙袋を置く。あからさまに残念そうな顔をする藤代を見ながら、は笑って口を開いた。

「武蔵森にはソーセージな」
「え、それってさっき美味いって言ってた!?」
「そ。マジ美味いから。帰ったら焼いて食おうぜー」
「やーった!!」

の言葉に藤代がガッツポーズをして、嬉しそうにソーセージソーセージと呟く。その様子を見て、渋沢が苦笑した。
藤代はすっかり忘れているようだが、今日、武蔵森では「お帰り!お出迎えパーティ」なるものが開催されることになっている。今度はがセレクションに受かったときのように部屋でではなく、寮母さんの許可も取って、食堂で、だ。前回もなかなかの大騒ぎだったというのに、今回はさらに盛り上がるのだろうから、その中で味わってそのソーセージを食べるのはほとんど無理なことだろう。自分達が選抜に来た3日前から飾りだなんだと盛り上がっていたのだから、今の武蔵森サッカー部員はどうなっているものかと、キャプテンとして、渋沢から溜め息が漏れる。だがもちろん、渋沢だって嫌なわけではない。寧ろ、楽しみにしていることは紛れも無い事実だった。渋沢も、帰りを楽しみにしていた1人なのだから。

この2週間で、武蔵森では改めてという人間の大きさが身にしみていた。練習でも、紅白戦でも、寮の中でも。自分たちの後ろにがいるということが、こんなにも大きかったのだと。がこんなにもチームのために何かをしていたのだと、改めて、気づかされた。それを思って、藤代と笑いあうを見て、渋沢は笑う。キャプテンとして。チームメイトとして。GKとして。3年来の仲間として。がいることを、頼もしく思った。彼が戻ってきて、武蔵森はやっと、「武蔵森」になる。全国大会を目指す、武蔵森に。

――― ただ1つ、心配なのは。







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