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To Shine
夢に近い場所で
とんとんとスパイクのつま先でピッチを叩く。ここは全国大会のピッチ。東京都の中学のサッカー部の中で、今年、自分たちだけが立っているピッチ。それを踏みしめながら、足を進める。 一足進むごとに跳ねていく心臓。いつもに比べたら豪く跳ねているというのに、それでも顔に浮かぶのは笑顔だし、手なんか微妙に震えてるっていうのに、早く試合を始めたいと思う。 攻める気持ちを忘れるな。自分の力を出し切れ。気持ちで負けるな。足を動かせ。さっきの円陣で、みんなが言ったことが頭を回る。いろんな気持ちがないまぜになって、思うのは、これから全国の試合を始めるんだなぁ、なんて暢気なことだけれど、つまりはそういうことだ。相手チームとの握手を交わして、自陣の中央で、今度はスタメン11人で円陣を組む。さっきよりも大分小さな円だけれど、これは俺たちだけで組んだものじゃない。スタメンと、ベンチと、監督と、コーチと、二軍と、三軍と、父兄と、OBと、応援してくれる人たちと。みんなで作った、みんなだから作れた円陣だ。隣のやつの身体が、震えているのがわかる。武者震いと、それだけではないものと、そんないろいろなものを振り切るように、声を張った。 「―――― 行くぞ!!」 3年間の全てを出し切る大会が、ここから始まる。 |