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「よっ、三上、!」
「試合観たぜ!すげぇなお前ら!」

始業式当日、教室に入ると同時にかかってきたクラスメートの称賛の声に、当人たちはそろってなんともいえない顔をした。もし優勝していたのなら、この声に笑顔で答えられたのかもしれないな なんて、どこかぼんやり思うの隣で、つーか と三上が言葉を返す。

「お前ら、観てたのかよ?」
「そりゃお前、クラスメートが出てんだぞ!?」
「観るに決まってんだろ!」

三上が呆れたように、けれど内心では違うよう思いながら言った言葉に、クラスメート達は当然といった様子で答える。実際に、観ていてくれたのだろう。あの準決勝の後、挨拶に行ったスタンドには、このクラスの仲間達の顔もあったことを覚えている。それに対してはサンキュ と笑顔を浮かべてから、その顔をふと苦笑のようなものに変えた。

「ごめんな、応援してくれたのに勝てなくてさ」

勝ちたかった。本当に本当に、勝ちたかったんだけれど。
そんなの様子に、三上が口を開こうとして、けれどそのまま噤む。にかける言葉など、クラスメートのためにフォローする言葉など、見つからなかった。悔しかったその気持ちも、応援してくれた人たちに対しての気持ちも、きっと今思ってる気持ちだって、同じものなのだ。そんな三上よりも早く言葉を紡いだのは、クラスメートたちだった。

「何言ってんだよ!ベスト4だぜ!?」
「それに相手は優勝したじゃん!」
「そうそう、あっちの9番の・・」
「廣田?」
「そうだ、廣田!あいつは得点王で最優秀選手だったんだろ?」
「それにと三上と渋沢と・・あとあいつ、2年の藤代は優秀選手だったしさ」

クラスメートが、口々に言い合う。今年の大会は、武蔵森が準決勝で負けた、あのチームが優勝した。チームを率いていたエースストライカーの廣田は大会の得点王となり、大会最優秀選手に選ばれた。同率3位となり、また全国大会を通して準決勝の1失点しか喫しなかった武蔵森からは、GK渋沢、DF、MF三上、そしてFW藤代の4人が優秀選手に入った。
それが、たちの最後の全国中学生大会の結果だった。

「まぁ、それはそうなんだけどなー」
「あくまで日本一を狙ってたわけだからな」

それらの言葉を受け入れながら、が苦笑して言った言葉に三上が続く。確かに結果としてはいいものを残せたのかもしれない。けれど自分たちの目標は1つ、日本一になることで、最後まで、本当に最後となる試合だって、負けたくはなかった。それが果たせなかったことの悔しさは、こうして落ち着いてみても、3位の喜びにも、優秀選手の嬉しさにも勝っていた。それは今更、もうどうしようもないことだとはわかっているし、もう、中学で全国1位になるチャンスはないということも、わかっているのだけれど。
ふとその瞳の色を変えたと三上に、クラスメートたちは押し黙る。もちろん、彼らがサッカー部に対してかけた称賛の言葉は本心だった。心から、全国という舞台であれだけ戦った、身近な彼らを、すごいと思ったのだ。サッカー部が、どれだけ日本一に焦がれていたのかは自分たちにはわからないけれど、その目標のためにどれだけ頑張ってきたか、自分たちが知っているのがその一厘だけだろうと、その努力を見てきたのだ。だからこそ、何て言葉をかけていいのか、わからない。だってきっと彼らのこの気持ちは、当事者のサッカー部でなれけば、わからないのだから。

「・・・まぁ、今更うだうだ言ってもしょーがないしな!」

少しだけ重くなったその空気を払うように、がからりと笑う。三上も、少し間を空けはしたものの、そりゃそうだな といつものように笑った。そんな彼らにどことなく安心したように、クラスメート達も笑う。そうして鳴ったチャイムに、ガラリと空いたドアに、生徒たちはそれぞれ自分の席へと戻った。そうして教壇に立った担任が、と三上の姿を認めて、あぁ と口を開く。

「よくがんばったな、サッカー部」

先生も観てたんだぞ と笑う担任に、笑顔で言葉を返しながら今更には思う。本当にいろんな人たちに支えられていたんだな と。







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