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To Shine
For YOU
キーパーから蹴りだされたボールを競り合う。辰巳が勝ったそのボールのセカンドタッチは間宮で、間宮はすぐにそのボールを右サイドへとはたいた。それに対して、が動き出す。右サイドでボールをもらった、これまた新しいメンバーは、ボールを中へ切り返すのと同時に、藤代を始めとする攻撃陣がそれぞれ動き出した。それぞれを目の端で捕らえながら、頭の中で相手の攻撃のイメージを組み立てる。それはなんとも想像しやすいもので、すぐに結びつくものだった。 「三上!」 「あぁ!」 声を掛けた三上は、わかってるとでも言うようにすぐに返事を返した。実際に、もう三上の頭の中でもこの攻撃が出来上がっているのだろう。そのの予想を肯定するように、三上はが言おうとしたとおりのポジションへと入る。同じように、根岸や、DF陣も動き出した。 右サイドからボールをもらった先ほどの1年生、田原がボールを左サイドへ出す。1タッチでのその動作は、やはり1つのパターンなんだろうとが思うと同時に、田原が出したボールを三上がカットした。そのボールは田原へと当たってコートサイドに出る。そのため、OBチームのスローインとなった。 「な・・・」 田原が、驚いたように声を上げる。ここまで1タッチで進んできたこの攻撃はとてもスムーズなもので、今まで最後のクロスの前に止められることはあっても、ハーフラインより少し進んだくらいの、こんなところでカットされるなど、新チームでのこの攻撃パターンを始めてから、一度もなかったのだ。そんな反応に対して、全く、とでもいうように三上が溜め息をついた。田原に当たったボールは少し遠くに飛んだだめに、ベンチのさらに遠くにいた、3軍の1年が取りに行っている。 「お前らなぁ、いかにも武蔵森っつー攻撃パターンが想像つかねぇわけねぇだろ?」 「一応俺らも、元サッカー部だからな」 三上が呆れたように言った言葉に、根岸が笑って付け足す。彼ら3年にとって、そんなのは、当然のことだった。3年生が引退して、新チームには当然新しい攻撃パターンができていた。けれどもそれらには武蔵森の特色は少なからず含まれていて、それならば3年間武蔵森でやっていた3年生には、特にその攻撃を組み立てていた三上や、後ろから基礎になっていたには予想範疇もいいところなのだ。 「・・・・すっげーやりづらい」 「そりゃぁね。手の内を知ってるわけだし」 大森が眉を寄せて、けれども少し笑って言った言葉に、笠井も小さく笑って返す。そう、今の武蔵森には、3年生から教わったものが数え切れないほどある。その人たちを相手にしているのだから、やりづらいのも当然なのだ。だってそう、この人たちは、あの、3年生なのだから。今までずっとずっと追ってきた、あの3年生なのだから。 水を飲むためにサイドラインへ向かっていたが、そのままスローインのためにコートサイドへ出た。そうして、緩い円を描くようにして、3軍の1年生から投げられたボールを受け取る。投げた1年生を見て、あぁ、そういやこの1年生とも話せなかったな なんて思いながら、は笑ってサンキュ、と声を掛けた。 え、と小さく上がったその1年生の声には気づかずに、はボールを手にコート内へと視線を向ける。ハーフラインの近くのために、どちらもそのまま得点に結びつくという可能性は低い。けれど自分の肩ならば、近藤の位置まで届くだろうと思いながら、ふいに、ぱちりと目があった笠井に、にっとは笑った。 それぞれから、特に自分たちの代からレギュラーだったメンバーから強く感じる気持ち。思わず笑みが浮かんでしまうほどに強く感じるそれに、けれども。 誰が負けてやるか。 |