To Shine
For YOU






ザッという砂の音の直後に、ピピ、と笛が鳴った。審判をやっているコーチが、現役チームのゴールのほうへと手を向ける。ここはペナルティエリアからは少し遠い、ゴール左30m付近。OBが、直接フリーキックを得た。

「どーする?」
「俺が蹴る。、上がれ」
「じゃ、俺が下がっとく。」

OBチームが二言三言会話を交わして、話がついたようにそれぞれが位置へ入る。そんな中で、三上1人がボールを蹴るために位置につくのをみて、現役のうちの何人か、特に以前からのレギュラーが、息をついた。三上のキックの正確さは、武蔵森ならばよく知っている。武蔵森のリスタートのキッカーは、ほとんどがこの人だった。さらに、3年生だって体格のいい人が多い。それを言ってしまえば現役チームだって、今までターゲットになっていた藤代も、辰巳もいる。いるのだ、けれど。

けれど、何か直感的に思った。きっと入ってしまう、と。

三上が審判に言って、距離の近い2人の壁を少し下がらせる。壁に入った現役メンバーの様子を見て、さらにゴール前でのポジション取りの混戦に軽く目を向けてから、審判が短い笛を吹いた。それの少し後に三上が蹴りだした高めボールは、綺麗に弧を描いて密集する混戦地帯へと放り込まれた。そして。

ピピ ―――

ボールを蹴った三上がよし、と笑って、ヘッドで綺麗にゴールを決めたDFの高田と、根岸がハイタッチをした。その後で、も高田と肩を組んでナイスゴール、と笑い、同じように、近藤たちも集まって来る。新しい、現役チームのキーパーは、眉を寄せながら自分の背後のゴールネットに転がるボールを拾い上げた。
それらを見て、はぁ、と現役チームが溜め息をついた。やっぱり、ここで入れてくるのか、と。やっぱり、入ってしまったか、と。

とはいえ、先制ゴールを許すというのが、全く予想になかったわけではない。むしろ、先制が3年チームなことは、想定内のことだった。確かにOBチームは、1ヶ月以上部活をやっていない。けれど彼らは、全国3位の実力を持つ、あの先輩たちなのだから。そう思いながら、現役チームはボールを蹴りだすためにハーフウェイラインへと足を進めた。ポジションに戻る途中、ふと振り返ったは、そんな様子を見て、思う。何か、どこかで見たような光景だと。けれど、以前みた光景とは、確実にどこか違う光景だと。そう思って頭を捻るを放って、コート内ではハーフウェイライン上にボールがセットされた。そのボールに足を乗せて、藤代が顔を上げる。

そのとき、何とはなしに、のなかで、それが1つに繋がった。さっき感じたことも、今感じたことも。すぐにわかるリスタートの戦術も。

あぁ、そっか。蹴りだされたボールを見ながら、頭の中で思う。
監督がわざわざ俺たちを呼んだのは、 ――― こういうことだったのか。







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