To Shine
The encounter with the rival






「で?」

草晴寺のシゲの居候している部屋。ダウンをし、水分補給をし、和尚へ軽く挨拶を済ませた後で向かい合ったこの場所で、は単刀直入に口を開いた。その言葉に、正面で同じく一通り体を落ち着かせたシゲは苦笑を零す。

「なんや、えらい直球やな」
「回りくどく入ったらいつまで経っても本題行かないだろ」

さも当たり前と言わんばかりに落とされた言葉に、そらそうやな、とシゲも笑って頷く。それが自分の性分だということはわかっていたし、だからこそが直球で来たのもわかっている。そもそも話すつもりでここに来たのだから今更なのもわかっているのだが、素直に口を開けないのはやはり性分なのだろう。それでも、ふう、と一つ息をつけば、シゲは少し考えるようにしながらその口を開いた。

「俺な、今関西選抜入っとんねん」
「・・・関西選抜?」
「せや。一応実家はあっちやしな」

まあ諸事情はあんねんけど、となんでもないように言ったシゲに、ふうん、とが返す。あの夏に会ったときを思い返せば、なんとなく事情があることには察しが着いた。ならばおそらく、あの日は関西に行くところだったのだろう。サッカーがしたいのだと言ったあの日のシゲがの頭を過ぎる。 ――― 本気だ、と。それがわかるには、十分だった。

「風祭たちは知ってんのか?」
「知らんで。言うつもりもあらへん」
「・・だろーな」

言い切ったシゲに息を吐きながらも、その気持ちはにも理解できるものだった。自身、寮生活を送っている以上武蔵森の面々に自分の ――― 所謂努力している様を見られるのは不可抗力だとは言えども出来るだけ回避したいと思っているし、実際に出来るだけ隠している。それは技術を盗まれたくないとかではなくて、弱いところを見せたくないという単なるプライドだ。そういう意味では、とシゲは似ているのかもしれない。その程度に違いはあるかもしれないが。

「にしたって、一人じゃ限度があるんじゃねぇの?」

確信めいたその言葉に、シゲはへと視線を送る。実質問題として、そこはネックでもあった。桜上水で部活をし、選抜の練習日には関西へ帰る。それまでのツケがたまっているシゲとしたら、初めのうちはその他の時間は基礎トレーニングであったり体力トレーニングであったりとやることはたくさんあったのだけれど、それらが進んでくれば、やはり対人でないと出来ない練習なども出てくるもので、けれど選抜の練習はあくまでチームとしての基盤作りのためのものであるから個人のスキルアップの練習に時間を割くことはなく、桜上水の練習は選抜よりは個人向けだけれど、技術的な問題でも、そしてプライドの問題でも、本気で練習できる環境ではないのだ。そんなシゲの視線を正面から受けて、がニッと笑った。その笑みに、シゲは小さく目を瞠ってから、なんや、というように破顔する。

「協力してくれはるん?」
「まぁ、俺も練習したいしな」

返ってきた言葉に、シゲは面白そうに笑う。練習相手として ――― いや、自分のライバルとして、申し分の無い、それどころか待ち望んだ相手。風祭に感じるのとはまた違う、戦いたいという気持ち。そんな相手であるが先ほど形として出した温くなったお茶に口をつけるのを見やりながら、なぁ、とシゲが声をかけた。

「おおきに、
「・・どういたしまして」

素直に口をついたシゲの言葉に、は笑みを浮かべて返す。とりあえず今日は帰るわ、と立ち上がったに、そういやお前の連絡先知らんのやけど、なんて会話を交わしながらも、そこにある関係は以前とは少し違っていて ――― まるで共同戦線を張ったかのようなそれには、けれどお互いを高めあうことが出来るという確信があった。







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