青森県音楽資料保存協会
青森県伝統文化団体実態調査
「青森県伝統文化団体実態調査」(平成13年11月の調査資料より)
<資料提供:青森県教育庁文化財保護課(平成13年度)>
<レポート4>
○地域別・芸能別の自由回答
【下北地域】
(1) 山車行事
●総合的に
・保存のための後継者の育成をする。
・育成に関する経費を助成する。
・各地域の伝承芸能の映像などの記録を行政でまとめる。
主に上記を要望する。
●活動への理解
・特別な援助などは望まないが、活動に対する理解をいただきたい。
・若者にも広く参加を求めているので宣伝の機会があればよいと思う。
・県の民俗芸能に対する補助金制度をこれからも継続してもらいたいと思う。
●少子高齢化・過疎化の進展
・少子高齢化により、若者が少なくなっていることや、
祭りや行事に対する意識も変わっている事などによって年々、
祭りに参加する人が少なくなってきている。
将来的には山車運行も困難になるのではないかと心配される。
●用具・運営費
・何かを創造しようとすれば資金がかかる。練習を積み重ねるが、子どもといえども、
ジュースや、ラーメンなどを食べさせたい。
経費もかかり、最小限にしたいと考えている。
・当会は神社の傘下にあるため、関係器具の整備、装飾品、打楽器類、後継者育成費、
半天など、すべて神社の経費でまかなわれているが、
毎年、船山に関する経費の捻出に苦慮している。
会結成以来、会長と神社側と連携を密にし、会の運営に努力している。
(2) 神楽・獅子舞
●用具・運営費
・伝承芸能保存団体への補助金・助成金の充実。
・各単位団体の文書・映像記録作成助成金などの充実。
・伝承芸能保存団体の会館などの施設建設および修理費などの充実。
・当会は活動収入で事業活動をしているが、現在、修復や購入などできるお金がない。
もっと行政に力を入れていただきたい。補助金や助成金などを多くしてもらいたい。
●伝承者・後継者
・会員減少が避けられないため、存続が心配である。
・人口、子どもの減少に伴い、
担い手が間もなく最小限の活動しかできなくなるだろうと思う。
しかし、やれるところまで活動をしていきたいと思う。
・行政関係などから補助を受ける時の手続があまりにめんどうくさく、
時間がかかり過ぎる。もう少し簡単で時間がかからないようにしてほしい。
●行政へ
・行政からの補助を要望する。
(3)能舞
●伝承者・後継者
・昭和50年頃までは会長を中心に結束され、活動もよくなされていたが、
高齢化に加え、若者の加入が少なく、今後の活動が心配である。
・時代の違いといえばそれまでだが、かつては無理を言って、
青年会に加入しなければならないという強制的なきまりがあったようだが、
現在はそのようではない。したがって、会員、各自が自覚を持って
伝統の保存、継承に努力することが大切かと思う。
・伝承者の養成が難しい状況にあるが、地元の小中学校との連携・協力のもと
努力していきたいと思う。
●出演委託料
・各種団体より出演依頼があるが、参加者は仕事を休み出演しているため、
出演委託料などの増額、または不足分の助成を行ってほしい。
●行政へ
・国指定という国民が守り伝えるべき芸能を伝承する我々の会は全力で伝承活動している。
しかしながら、活動には経費がつきものである。行政は少し力不足と思う。
なぜなら、我々はボランティア活動をしてきたが、近年の会の財政の苦しさから
ボランティア活動もままならない。
行政でも協力心を持って補助金や助成金を増やしてほしい。
このままでは保存、伝承がとだえてしまいそうである。
・郷土芸能の保存に努めるべき行政と会との協和をはかる。
・文化として、保護保存などの施策を展開する。
【東青地域】
(1)獅子踊
●指導者の高齢化・後継者問題
・指導者の高齢化が進んでいるため、次代の指導にあたる後継者が必要と感じる。
・文化財の指定を受けている組を順位をつけて、特に行政側では各組を
もっと知るべきである。
・一番困っているのは地元での就職難で、せっかく獅子を一生懸命にやっても
高校卒業と共に県外に流出してしまうのが残念でならない現状である。
・当組は発展途上のチームである。特に中学生は勉学、部活動と獅子踊りを
両立していくのは大変な状況である。
せめて土曜日の休日だけでも、私たち獅子の会に時間をくださるように
行政からも働きかけてほしいものである。
●発表の場の企画
・県文化財保護課が中心となって、毎年定期的に発表の場を企画してもらいたい。
●単に芸能でなく神事
・県内に約70団体ほどの獅子踊(舞)の組があるが、私どもの組は
個人の神様として360年ほど前から伝わってきているもので、
単なる芸能ではないので、他の組のように目立った活動はしていない。
●子ども達への伝承
・郷土芸能に興味がある子どもたちは自分の出番がなくても練習には必ず参加する。
その意識には、やはり好きだからやるんだという気持ちを感じる。
後世に伝えていくのは現在の子どもたちである。
しかし、一個人、一つの会だけでは限界があるので、
県外とも交流できる場を広くつくれば一層の励みになるのではと感じている。
(2)その他
・練習場所を望む。
・過疎の村として、もともと行われてきた地域で継続できず、
中学校に保存会を置くこととなって現在に至るが、
自治体が指導者を育成して派遣、指導していかないと現場の教職員だけでは
指導が困難であり、現状では生徒間で踊りを伝えていることがほとんどである。
・地元の方に指導をお願いすることもあるが、予算的にボランティアという形での
依頼になる。
保存会を維持していくためには、指導できる方が高齢になってきていることもあり、
地元に後継者が必要である。
・現在は学校の文化祭が主な活動であり、今後、
太刀振りをどのように保存していくのか、
村及び、教育委員会との検討が必要である。
【中弘南黒地域】
(1)獅子踊
●集落の消滅とともに獅子舞も消えるが、村の民俗芸能に残せないか
・村には、三つの獅子があるが、現在活動して生きているのは、ひとつだけである。
それもダムの建設により、失われようとしている。
数少ない会員の中で獅子を踊れるのは6名で、そのうち
村外に移転するのは3名である。このまま保存会を維持していくのは当然無理である。
しかし、村民の中で踊を習いたいと思う人があれば指導し、
また、これを維持していくのも可能かと思うが、
現在はまだその段階まではきていない。
資料館の中のケースの中で頭だけが、動くこともなく飾られるのかと思うと
やるせない心境である。これを村の保存会として生かしていけないものかと
希望せずにはいられません。
●伝統や基本を大切にしたい
・伝統芸能を伝承していくための育成者の高齢化、また、後継者の育成とも、
時代とともに難しくなっているのが現状である。
今の芸能はイベント化しており、昔そのものの姿が減少しているので、
我々としては、基本を大切にしていきたいと思っている。
●謝礼よりも芸能への理解を
・行政もしかり、もっと芸能のことを知ってもらい、謝礼を出せばよいなどの考えをやめ、
もっと理解を示してもらいたい。
●後継者育成に発表の機会を
・ただいま、当保存会では、後継者を育てているため、今年2月から毎月、
第1、第2土曜日に集まって練習をしている。
来年の年賀の競演、それに猿賀の県大会に参加して、
後継者をアピールしたいと思っている。
・助成金のアップを望む。
(2)その他
・現在の指導者が高齢であるので、記録保存をすることが急務である。
・国の指定を受け、国立小劇場にて、公開したい。
・各支部に補助金を支給したい。
・神楽衣装の補修をしたい。
・当会の会員も高齢化の傾向にあり、せっかく育ち始めた若い人たちも
大学進学や就職などで思うようにいかず、今後の活動を考えると心配になる。
やはり、一番の問題は後継難につきる。
学校などで伝統行事に興味を持つような雰囲気を作ってほしいものと思うが・・・。
・常にご理解とご協力ご支援を賜り、深く感謝申しあげている。
今後とも、何卒、ご高配を賜るよう、よろしくお願い申し上げる。
【西北五地域】
(1)獅子踊
●発表会出演などに行政からの支援を、補助金の増額を
・私達の保存会では、各方面から一切助成を受けておらず、
わずかな出演料(1回2〜3万円程度)で活動しています。
しかし、1回当たり出演する子どもとスタッフ合わせて20〜25名となり、
出演料が弁当代で消えてしまい、用具までなかなかお金が回りません。
場合によっては出演料がないものもあり、大人の会員の個人負担となる。
太鼓や鉦は保存会で半分所有し、残り半分は村の団体(青年会など)より、
お借りして活動している。
獅子頭についても練習用はあるが、きちんとしたものは小学校所有のものを
お借りしている。
自分達の獅子頭がほしいので助けて下さい。行政からの助成を切に希望する。
●少ない会員で伝承に苦慮
・当保存会は20名程度であり、会員出席は年間を通じて1回位で
三つの芸能を後世に広く保存するのに苦慮している。
一部の会員(10数名)の方々で強制もできず、伝承のため、日頃練習し努力はしている。
また、最近の行政は財政事情が厳しいことを理由に、補助金の縮減で、
保存会としても財源がなければ古来からの歴史と伝統ある郷土芸能を保存するのは
不可能につき、まず補助金の増額を要望する。
・補助金や助成金など、受けられたらいいと思う。
●学校での伝承の課題
・学校の活動の中で、子どもたちが意欲的に取り組んでいるので、
伝承活動の継承のために果たす役割は大きい。
しかし、学校の中での時間の確保が十分とはいえない。
行政(町)の方から出演の機会があたえられることが多いので
子どもたちの活動の場が得られてとてもよい。
しかし、学校の行事や部活との兼ね合いで悩むこともしばしばである。
指導者の方が高齢になったので応援隊(卒業生)が結成された。
卒業生は今年度から顔を出してくれるようになったが、
本格的に依頼することになった場合の時間調整が問題である。
●指導教員の異動による活動の浮き沈み
・学校が主体になっているため、指導者の育成が課題である。
わかっている教師が転勤することにより、活動の浮き沈みがみられる。
復興させたときに、学校が主体になったため、現在に至っている。
(2)その他
・保存会の一番の悩みは、少子化により、
継承する子どもが少なくなってきていることである。
・保存会としての場所、建物がほしい。それが一番の要望である。
太鼓、衣装、細々とした物を置いておける場所、会合を開ける、
そして、しめ縄作りを1ヵ月続けても、他に気遣いしなくていいところ。
個人から借りていたときもあったが、今は公的施設の一部を使わせてもらっている。
小屋でもいい。保存会の建物がほしい。
・県の無形文化財に指定してもらいたい。
・高齢化とともに、体験者が年々他界しているが、若い後継者(入会者)がいない。
これが一番の悩みである。先人が築いた貴重な文化遺産を後世に継承していくためには、
学校教育の一環として総合的体験学習に組み入れて、
小・中・高生に指導していかなければ消滅のおそれがある。
【上十三地域】
(1)山伏神楽
●子どもの流出と伝承の問題
・小学校4年生以上の子どもたちを育成しているが、高校卒業と同時に
地元に残る子どもたちはなく、大学入学、就職とほとんど他県に出てしまう。
また、新しく子ども達を探して育成していかなければならないので、
人探しに困難している。
できれば地元行政が伝統文化の後継者を優先的に就職先を斡旋してくれれば、
後継者の皆さんも励みになってやりがいが出てくると思う。
●子ども会育成の課題〜大人になると続けてくれない
・会員年齢が高くなってきたので、若い人たちに呼びかけているが
なかなか集まらない。子ども会などに指導して10年ほどになるが、
大人になると続けてくれない。
予算が少ないために練習する回数が少ないし、会員の方々は色々な職種が多く、
予定していた日にも集まりが少ない。
●学校教育の中で民俗芸能を
・現在、子どもたちへの伝承は夜間の時間に行っているが、
教える側も教わる側も非常に負担が大きい。
学校教育(社会教育)の一環に伝承活動ができるよう希望している。
・若返りが必要なのだが、若者がまったく興味を示さない。
どのような方法をとったらいいのかわからない。
・学校で「伝統文化を守る」時間をとってほしい。
●伝承文化の意味、スポットをあてる対象の見直し
・伝承活動の基本は祖先の心を受け継ぐ人の心の問題であり、それは教育にある。
伝承文化の重要性、古き良きものを見直す文化の醸成を受け継ぐことにある。
その中心となるリーダーには、地域の理解、
そのような人たちにスポットをあてる視点、助成の仕方、
あるいは発表する機会の確保と、相互交流する場の提供にあると思う。
皆、自分達の活動に誇りと使命を持っている。
その持っている文化芸能が、歴史がどうあれ、格調がどうあれ、
受け継ぐという価値観には、なんら差はないと信じる。
・スポットをあてる対象者を見直すことも一案ではないでしょうか。
重要無形文化財だけが文化ではなく、
その他、脈々と受け継がれているものもあるということを、
再確認、再認識を要望する。
●広域単位での発表会開催
・地域の発表会だけでなく、広域での発表会があればよい。
ただし、行政側より活動支援を受けたい。
●無形文化財指定を目指す
・将来、無形文化財の指定を目指し、活動を活発にしていきたい。
(2)鶏舞
●子どもへの伝承のために発表会の充実を
・今から12年前、当時の小学校長より要請を受け、はじめて小学生に鶏舞の指導を始め、
運動会や十和田湖国境祭などに出演し、児童、父兄とも喜んでいるところである。
児童のうちは喜んで発表会に参加しているが、中学生、高校生になると
発表の場がなく、自然と鶏舞から離れるのが現状である。
郷土芸能の発表の場を増やしたり、海外との文化交流など実現すれば、
子どもたちにも素晴らしい体験をさせることができる。
●国、県からも厚い支援を
・町はもちろんのこと、国、県からの厚い援助を賜りたい。
(3)南部駒踊
●地域住民、行政の理解が必要
・年々少子化によって、踊りを伝承するにも子どもの数が少なくなっている。
郷土芸能は地域住民の理解、助成金などがなければ、なかなか難しくなってきている。
行政面でも協力をいただきたいと思っている。
●子ども(子ども会)の低年齢化
・町内会にかかわるあまり、子どもたちの集まりが思うようにならず、
活動維持が難しくなってきている。
また、子ども会育成会にお願いするも、
子どもたちの低年齢化が進んでいて、指導の方もたいへんな状況である。
●広域的なイベントへの参加機会がほしい
・5年前は海外公演、3年前は県文化観光立県宣言の一環として
東京ドーム公演などがあるが、子どもたちの励みになるので、
今後もこういった公演があれば参加したいが、旅費、宿泊費などがかかるため、
なかなか参加公演できずにいるのが現状である。
●道具代が必要
・駒、衣装を補修、新調したくても、やはり金銭面に余裕がないので、
太鼓1個、駒一頭などと少しずつのやりくりしかできないのが現状である。
(4)その他
●後継者難と高齢化
・前会長の後をついで3年になるが、私自身も78歳になる。
25歳頃から笛専門にやってきたが、私も含めて笛の方は5人位いるが、
高齢になっており、一番困る。
三味線は六人位で最近は若い方も会に入るようになり、安心している。
太鼓叩きの子どもたちも部活や塾通いなどで、練習にも休みが多く困る。
今後継続していくためには大変であるが、がんばるつもりである。
●学校との協力関係の難しさ
・中学校に笛指導に行き、担任の先生に、教えた生徒達と
校内イベントに出すようにと、そのときは保存会も協力すると言ってきたが、
その後は学校側からは全然音沙汰なしで、継続するのは大変なことである。
●県無形民俗文化財に指定を
・行政に対する要望ですが、補助金が平成11年度で打ち切られましたが、
ぜひとも復活してもらいたいと思う。
希望ですが、できたら、県無形民俗文化財に指定されることを望む。
●用具・衣装代の軽減を
・用具、衣装の維持保存していくため、会員の経済的負担を軽減したいので、
行政的な援助が必要だと思う。
●後継者の加入に苦労
・後継者加入に苦労している。色々な大会の視察発表会などを企画して参加したい。
●「八戸えんぶり」以外のえんぶりにも目を向けてほしい。
・百石えんぶりは八戸地方えんぶり協議会に属しているが、行政区が違うため、
県から援助が受けにくい。
えんぶりというと八戸市というイメージが強いかもしれないが、
郡部の郷土芸能にも配慮していただきたい。
●保存会の活動を理解して
・保存会活動に対して理解度が不足している。残念である。
●衣装代をお祭りのご祝儀でまかなう
・大黒舞保存会は後継者を探して、平成11年度に40代の15名のお母さん方を見つけた。
ところが、衣装(上着の着物、袖なし、もんぺ、ずきん、扇、槌)にお金がかかり、
1人5万円ぐらいかかっている。
これまで買ったものは平成11年には槌、平成12年には、袖なしである。
平成13年は冬の農閑期に公民館に皆で集まり、もんぺを縫う予定である。
そのお金は、お祭りのご祝儀でまかなっており、厳しい運営状況である。
●後継の会長を育てる必要
・私は会長を務めて25年になる。後継者を1人前にするには、もう少し時間がかかるので、
それまでがんばっていきたい。
【三八地域】
(1)山伏神楽
●総合的に
・運営費調達・・・もはや会員のボランティア、誠意だけに頼るのには限界がある。
・練習時間・・・・仕事、家業を放っての練習はきつい。農家には休日がない。
・魅力・・・・・・苦労しているわりには地味で報われない。物乞いの風潮すらある。
・高齢化・・・・・師匠の年齢の大半は70歳前後。体が動かない。
などなど問題が多い。
●活動資金が足りない。
・毎年、市から補助金として2万円をいただいているが、この額はだいぶ以前からで、
いかに伝統文化への理解、熱意が足りないか、
その額の変化無しに、いつも感じている次第である。
県にしても、無形民俗文化財としての指定はあっても、金銭的援助は全く無し。
地域からの寄付に頼っていられない昨今で考えていただきたい。
・活動費がもう少しほしい。
●後継者難と集落存続
・嫁に来る者がないため、後継者がなくなることが一番心配である。
・伝承者が少ないので、行政(特に教育委員会)などの協力をお願いしたい。
・少子高齢化により、保存会の持続が困難である。
●子どもへの伝承
・これまでは、学校のクラブ活動の一環として、毎週必ず1回は練習が確保できたが、
クラブの時間数の削減、完全週5日制に伴い、練習時間の確保が難しくなってきている。
今後は、学校よりも地域の方々への依存が多くなるのではないか。
幸い、本地域は3年程前に、地域の方々が神楽保存会を立ち上げてくれたため、
生の演奏で舞うことができ、少しずつ、昔の形に戻りつつある。
このまま、地域の方々のご支援を受けて、伝統を守り続けてほしいと思っている。
●国県指定の文化財以外にも助成を
・各地域には、国、県等の指定を受けていない伝統芸能が数多く残され、
それぞれの地域の財産、貴重な文化遺産として、地域の人々に支えられながら、
伝承者によって懸命に守り継がれている。
しかし、国・県などの補助金制度を見ると、国・県指定の文化財を対象としたものが
ほとんどであり、これらのものは比較的市町村の助成なども受けやすく
恵まれている。
今後は、これ以外のこれら埋もれている民俗芸能、存亡の危機にあるものを
育成継承するための記録保存、伝承活動への支援などの施策が必要である。
・町より、町郷土芸能保存会を通して援助をいただき、感謝しています。
(2)鶏舞
●学校での伝承活動を
・大人が囃子方を担当し、踊りは小・中学生の男子が担ってきたが、
少子化、過疎化などから子どもが減って、踊り手の確保ができない。
このため、学校に伝承を申し入れてはいるが、
学校の希望する時間帯と指導者の都合がつかないため、実現されていない。
●指導者が限られていることの問題
・子どもたちへの踊りの指導は、すべてボランティア活動によってなされているが、
指導者が限られているため、指導者に事故等があれば、
その指導者のセクションができないことになる。
●歴史的な背景の調査が必要
・できれば行政で歴史的な背景を解明していただきたい。
●県内外の鶏舞を集めた発表の機会がほしい
・当文化財と同種のものが県内外にあるが、一堂に会する機会がないので、
どこかで音頭をとって機会を作っていただきたい。
●後継者不足
・近年、少子高齢化・核家族化による後継者不足が悩みの種となっている。
また、それぞれの仕事の都合により、休暇も思うように取れないため、
練習機会の不足などで、一人一芸の人が多くなってきており、
一人でも欠けると活動に支障をきたすこともある。
●保存会会員も芸能の内容を理解する必要
・専門家の方々からは、すばらしい伝統文化との評価を得ているところであり、
我々も今一度かかわっている伝統芸能の内容の理解と、
さらなる自覚が必要ではないかと思っている。
●参考となる伝承の方法や取り組みを教示してほしい
・それぞれの団体が、それぞれの方法で伝承に取り組んできたところであるが、
行き詰まりつつある団体のためにも、専門の先生方には
芸能の内容評価だけではなく、参考となる伝承の方法や取り組みについても
取り上げていただきたい。
●地域の伝統芸能としてPRの強化を
・それぞれの行政において、地域の伝統芸能、町の伝統芸能としての位置づけが
たりない様に思われるので、今後、もっとPRに努めていただきたい。
(3)南部駒踊
●練習場所や用具の整備
・練習場所(築16年)の床などの整備、駒踊衣装の新調(11年間使用)、
駒の修理などへの援助がほしい。
・担い手の確保が困難になっているため、小・中学校がなんらかの形で、
ゆとり教育に組み込んで実施してくれれば運営がよくいくと思う。
(4)えんぶり
●総合的に
・育成者の人員不足。年行事費用(経費の増額)、新幹線および市の活性化のための、
新企画の提案と観光関係との運営と協力の推進抑制について、
自治体がもっと考えて欲しい。
えんぶりの芸能に対する理解が少し減っている感じが気になる。
もっと、地元住民の楽しみ場に入り、
えんぶりを正調と新しい芸とを分けて考えることも
一つの方法と考えられるのではないかと思う。
・指導的立場の人々は皆、高齢で、その技術を引き継ぐ若者の協力が少なく、
思うような活動ができない状態である。
うちのえんぶり組は、昔の形式や唄をそのまま受け継いでいる。
外の組は、だいぶ型が変わった組もあるように聞いている。
今後もこの伝統を守り、型を引き継いで行きたいものと思っている。
・小、中学生より教えていきたいと考えているが、1学区に
型の違うえんぶり組が7組もあり、学校で教えることができません。
そのため、子ども会などの参加をお願いしたいのですが、もし大勢参加されても、
受け入れができず、思うようにいきません。
衣装、道具、えぼしなど、子供用が作れると受け入れることも可能と思う。
そのための補助などが必要である。
●祭りへの参加と事業者の理解
・昔は農民が農閑期に行う祭りだったが、現在は会社員が大半である。
えんぶりに参加するから休ませてくれと願い出ても、
なかなか許可しない事業主がいる。
夏の三社大祭に参加している人間も、休みが多ければ
雇用打ち切りの対象とされることも考えられ、
まじめに伝統を継承していく者にとって良い待遇とはいえない。
行政側で各組合員の事業主だけを招待し、一杯飲ませながら、
えんぶり(他の芸能を含む)を見せて理解を深める。
または、自分の会社の社員が一生懸命やっているところを
認識させる機会を作れないかと思う。
●用具・衣装
・平成11年度に烏帽子の新調費用をいただき、ありがたいと思っているが、
製作するのに対して国(文化庁)50%、県(教育委員会)25%、市(教育委員会)7.5%、
所有者(管理団体)17.5%として製作したが、
今の時代に20年以上も使える烏帽子を作ってもらうと、15〜20万円くらいする。
3体作ると45〜60万円はするのに対し、補助金は一体10万円として、
3体で30万円しか出ない。よいものを作ると個人負担が大きくなるので、
烏帽子新調にあたって、全額とはいわないが、改善をお願いしたい。
平成11年度の烏帽子の製作費用は1体16万円で3体46万円かかった。
補助金は82.5%となっているが、1体10万円に対して、
3体で247,500円しかこなかったため、もう少しなんとかしてください。
・昨年は大人の衣装を新調し、赤字になった。
今年度は子どもの衣装を新調するので、また赤字になるのではと心配である。
貯金もなくなりつつある。
●伝承活動・練習時間
・各えんぶり組に補助金が50万円ぐらい必要。
子どもえんぶりのためにお金のかかる組もある。
・会員のほとんどが村外に定職を持ち、
各種行事等に参加する要因を確保するのが難しくなってきている。
例えば、毎年、曜日に関係なく2月17日〜20日までの「えんぶり祭」への参加も、
平日であれば参加者の確保に苦労しているところ。
また、児童、生徒の参加も(当組は小学生のみとしている)学校行事等のため、
できない場合もある。
・学校その他行事への出演が多くなり、寄付金を集める時間が少なくなり、
活動に必要な財源が少なくなってきている。会員について、自営業者から
サラリーマンが多くなり、自由な時間がとれる人が少なくなった。
・伝承者の育成。現在、組員の入会、参加希望者がほとんどなく、
何かの形の宣伝などで組員を募集したい。
●行政へ
・教育委員会の総会などへの参加がない。
これからの文化伝承などの教育をする立場の人が積極的に参加するべき。
また、国指定ではあるが、期間中の小・中・高の休みの扱いが、
各校、足並みが揃っていないのには困惑してしまう。
●活動資金
・できるだけ門付けを少なくして、補助金の援助をお願いしたい。
(5)その他
・奨励金のようなものの交付をお願いしたい。
・補助金を増額してほしいと思っております。
本年度から助成金が3万円になったことの連絡を受けておりますが、
全国大会の参加など、会員負担が多く、
なかなか思うように進まない点が悩みである。
・三社大祭の参加者において、若者の興味が山車組にばかり向き、
太神楽は人気がなく、後継者不足が進んでいる。
何度も解散の話が出たが、長者山新羅神社側では行列の露払いがいなくなると
大変困ると言われ、会長が有給で人を雇い参加したこともあった。
現在は、小・中学生に助けられて活動しているが、受験を迎えると来なくなる。
厳しい現状である。
八戸三社大祭は以前、8月下旬開催だったので、厚物生地で衣装を作ったが、
8月1日開催に変わって、炎天下での活動となったため、
体力を消耗して昼食をとれなかったりする。
なんとか夏物生地の衣装にして、快適なものにしたいものであるが、
資金難が問題である。
自由回答のまとめ
アンケート調査の自由意見から代表的なものを活動の課題として取りまとめた。
@地域の人口減、高齢化に伴う担い手の減少
少子高齢化によって伝承が困難になってきている。
伝承活動は保存会のみならず、子ども会、小中学校でおこなわれている。
また、学校での伝承活動では学校のカリキュラム、指導者の確保などの問題がある。
子どもがいないと成り立たない団体も出てきている。
就職や進学で地域を離れ、伝承者が残らないという問題もある。
集落そのものが人口減、高齢化などによって存続が難しくなっている。
A行政、財団などの効果的な支援(資金難)
民俗芸能を維持していくためには、用具類の購入・補修、
映像資料の作成・発表会などへの旅費など多額の費用がかかり、
その費用を作ることが困難なので、行政や財団の支援を望む声も多い。
B民俗芸能の持つ意味の変化
人々の信仰心の変化、民俗芸能など、伝統芸能に対する意識が変化したことにより、
民俗芸能の継承が困難になってきている。
C伝統や神事を守る
民俗芸能を単なる芸能という切り口ではなく、
地域の伝統、神事であることの理解を求めている。
D発表機会の充実
広域的な単位でのイベントに参加することは活動の励みになるので
発表機会の充実が必要である。しかし、発表会出演の経費負担も大きいので、
それを軽減する措置が望まれている。
E活動への広い理解を
県指定無形民俗文化財の保存団体からは、引き続き、
県からの助成を期待する一方で
特別な支援は望まないが、行政および一般県民の伝承活動への
理解を深めることも望まれる。
F国、県指定以外の民俗芸能にも支援が必要
文化財指定のあるなしに関わらず、広い支援が必要である。
G文化財指定への希望
学術的・文化的な価値のある民俗芸能は、文化財に指定が必要である。
※無断転載を禁止します。
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