青森県音楽資料保存協会

事務局日記バックナンバー

<2003年12月(2)>

(67)青森県での取り組み その32
(68)青森県での取り組み その33
(69)青森県での取り組み その34
(70)青森県での取り組み その35
(71)雑感
 
(67)青森県での取り組み その32 2003年12月 7日(日)
 「三番叟」これをすんなり読める方は一般の方ではほとんどいないかもしれません。

 学校教育の現場での伝統芸能の取り組みについてこちらで書いておりますが、「下北むつ学区」で、この三番叟を取り上げている学校が多く、私もデータを打ち込む際に、何と読むのだろうと、ずいぶん困りました。
 ところで、この三番叟は、普通「さんばそう」と発音されるのだそうで、もともとは能楽の祝言曲、式三番(しきさんば)で、第一に千歳(せんざい)が舞い、第二に翁が舞った後、三番目に狂言方が出てつとめる老人の舞。三番叟とは「三番目に舞う翁」の意だといいます。
 その後、能から歌舞伎、人形浄瑠璃へと移入され、序幕の前に祝儀として舞うようになり、特に歌舞伎では、「三番叟物」として発達。
 晒(さらし)三番、舌出し三番、式三番、子宝三番、操(あやつり)三番などの種目があるそうです。
 民俗芸能の関係者の間で当然のこととして話されているこのような言葉も、一般の人にはほとんど馴染みがありません。普通の人が民俗芸能の世界に足を踏み入れるには、まだまだずいぶん敷居が高いように感じられます。
 排他的という表現は強すぎるかもしれませんが、民俗芸能に関するムードとして、あまり開かれた印象がないというのは事実なのかもしれません。
 これが後継者不足の一つの要因のようにも思われますが、一方では、そうせざるをえない事情もあるのだと聞きます。

 ある伝統芸能が有名になると、そこに報道陣や観光客がドッと押し寄せます。
 特に報道関係者の傍若無人な振る舞いに、芸能保存会の人たちはたいへん困っているそうです。
 昔から祭りの取材を続けている心あるカメラマンは、消音ケースに入れた望遠レンズ付きのカメラで、一番後方から、高感度フィルムを利用し、フラッシュをたかないように気を配って撮影してきたそうです。そこには祭りへの敬意があったそうです。
 ところが、最近の報道陣は舞台の最前列にズラリと陣取り、パシャパシャと、シャッターを切り、遠慮会釈なしにフラッシュをたく。テレビカメラをかかえては舞台に平気で上がってくる。こういった報道陣の影響で、祭りの雰囲気が悪くなってきているそうです。
 また多数訪れる観光客の中には、やはり心無い人がいるようで、このことも影響して、年々神聖な祭りがけがされているように感じている関係者の方も少なくないようです。

 芸能を伝承していくためには広く一般にアピールし、周知させることも必要。それは認める。しかし、この結果、かえって昔ながらの祭りの雰囲気が壊されていく。それは好ましくない。祭りは「村人の心」、そこへ無遠慮に土足でズカズカ入ってこられるくらいなら、情報発信を差し控え、昔ながらのように身内だけでひっそりおこなっていた方がましである。そのように感じている関係者の方が意外に少なくないようなのです。
 
 以上、青森県外での話でしたが、伝統を守るためには、こういったわけで一種排他的にならざるを得ない側面もあると聞いています。
 しかし、新しい参加者を募ることなく、ひっそりと祭りを継承させることは大変難しいようです。
 人口移動の激しい現代において、若い世代の村離れは深刻な問題であり、そういったことを続けていると、いつのまにか先細りとなって、後継者不足のために芸能が途絶えてしまうことにもつながります。

 情報発信による弊害もありますが、次の担い手を得るためにも、地域芸能の周知活動は、やはり必要なことなのかもしれません。
 ところで、そういったところに、うまく妥協点を見つけている地域もあるそうです。

 やはりこれも青森県外ですが、報道陣・観光客向けの祭りは、少し離れた別の場所でショーケース的におこない、古くからの村の祭りは、昔ながらの雰囲気で厳かに執り行っているそうで、これは成功しているとのことです。
 まだ青森県では、情報発信によるこの種の弊害をあまり耳にしませんが、一般への周知が進むにつれ、保存会がこういった問題に直面していくことは、これから充分考えられます。上記成功例など、今のうちから参考にしておきたい情報のように思われます。
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 連載は六戸町、横浜町です。

〔上十三学区 その6〕平成11年 県文化課調査資料より

【六戸町】

〔柳町小学校〕
◎鶴喰鶏舞〔58〕運動会、六戸秋祭り、学習発表会

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【横浜町】

〔大豆田小学校〕
◎神楽〔34〕・・・・運動会、学習発表会、むつ市伝統芸能発表会

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 「三番叟」については、次のURLが参考になるかと存じます。

http://www.avis.ne.jp/~kitayatu/sanba/

 
(68)青森県での取り組み その33 2003年12月 8日(月)
 昨日は三番叟(さんばそう)について書きました。民俗芸能についてはわからないことが多いです。このような民俗芸能関連情報をどうやって得たらよいのか。便利なホームページがございます。「わざをき通信」です。
 先日、第6回民俗芸能研究協議会に参加し、いろいろな情報を集めてまいりました。詳細は11月21日の日記(連載16)で触れておりますが、テーマは「民俗芸能に関する情報の発信と共有」であり、正規報告文は、東京文化財研究所のホームページで近日アップされるそうです。
 この協議会トップバッターとして「民俗芸能ホームページの運営の経験から」という題で、ホームページの主宰者、渡辺国茂氏より事例報告がございました。
 協議会の主催者から、こちらで内容をご紹介することに対しての承諾を受けておりますので、興味深かった「わざをき通信」について、本日ご報告させていただくことにいたします。
 
 民俗芸能に興味があってインターネットを使っておられる方ならば、一度は訪れたことがあるというサイトがこの「わざをき通信」だそうです。
 連載でちょうど青森県内学校の伝統芸能を取り扱っている最中であり、この便利なサイトの存在を多くの方にご紹介しておいた方がよいのではと考え、連載記事の中にサイトの紹介文を組み込むことにいたしました。

 昨日の三番叟情報なども、この「わざをき通信」から得ることができました。民俗芸能情報の収集には重宝するかと存じます。

 ところで、主宰者の渡辺氏は「黒川能」の写真で有名なカメラマンで、ホームページは99年に「あざみ野通信」として開設。02年12月に「わざをき通信」と改名され現在に至っているとのことです。このホームページの特徴はリンク集の豊富さです。

 民俗芸能に関する日本最大のリンク集を持つのではないかといわれるその内容(個人運営!)には驚きます。
 ここで特に力を入れているのは「農村歌舞伎」と「神楽」だそうで、農村歌舞伎は、ほぼ日本全国の情報をカバーしていると聞きます。
 こうしたリンクは、たとえば各地の新聞などで得た情報などをもとに、苦労して探してくるのだそうです。当然のことながら、膨大な量のホームページを目にすることになります。そこで得た体験談が協議会ではいろいろ語られました。

 どうしたら、より良い伝統芸能のホームページ作りができるのか。市町村に対する提言も多かったです。

 「農村歌舞伎」など、保存会の様子を調べようと思っても各団体が情報を発信していないケースが多い。特に市町村が情報を発信しておらず、発している市町村は全体の3割程度にすぎないとのことでした。
 情報は、個人がホームページを通じて発している場合が多く、国も含め、もっと積極的に、各自治体が地元の伝統芸能についての情報を発信してほしいとのことでした。

 その情報発信の方法についても、こうしたらよいのではという提言がなされましたが、それについては明日ご紹介することにいたします。

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 青森県での取り組みの連載も、あと数回で終了となります。
 本日は上北町と百石町です。

〔上十三学区 その7〕平成11年 県文化課調査資料より

【上北町】〔 〕内は参加人数

〔第一小学校〕
◎八幡神楽〔4〕
・秋祭り、新舘神社祭り、町芸能発表会、七戸町縁日など

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【百石町】

〔百石小学校〕
◎百石音頭〔497〕・・・・・百石小学校運動会で全校遊戯

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 〔参考〕「わざをき通信」のURLは次のとおりです。

http://www.asahi-net.or.jp/~TQ7K-WTNB/index.html

 
(69)青森県での取り組み その34 2003年12月 9日(火)
 今日書くことは、民俗芸能に関してだけではなく、一般的なホームページ運営の原則に
ついて触れているかもしれません。昨日からの続きとして読んでいただければ幸いです。

@【できるだけ簡単なジャンプで必要な情報へ】
何度も項目をクリックし、ようやく目指す情報に辿り着けるようなホームページの構成はたいへん困る。ようやく辿り着けたと思ったらリンク切れしていた。結構多いそうです。

A【月一回、できれば週一回の更新を】
上記@とつながりますが、市町村担当課の手による更新作業をおこなってほしい。あたりまえの話のように思われますが、市町村の中には業者にホームページ制作を丸投げし、そのため更新されていない。ひどいものになると祭り当月だというのに、昨年の日程が掲載され続けているものもある。結局電話で問い合わせることとなり、これではなんのためのホームページかわからないとのこと。

B【一覧表で】
キーワードを入れて検索する「データベース型」は便利なようですが、キーワードがわからないと役に立たないという弊害もある。伝統芸能情報は「一覧表型」が適しているそうです。

D【表を作るのなら埋めて欲しい】
一覧表にはなっているものの、例えば「12月の予定」の表が空欄のままというケースもある。表を作るのなら枠組みだけを放置しておくのではなく、内容を埋めてほしい。結構これもあるそうです。

E【サイトマップが欲しい】
書籍の目次一覧のような、樹形図的に全ホームページ内容が記されたサイトマップがあった方がよい。そのサイトマップから目的とするポイントへ、ワンクリックで到達できるような構成が便利。

F【日本語で】
一番最初に現れるページに英語だけ、日本語がないというものもある。外国向けかというと表紙だけがこれで中身は日本語。見栄えも大切だが訪れる人のことも考え、内容がすぐにわかるよう日本語で書いて欲しい。

G【5秒が限度】
上記内容につながりますが、インターネット検索をしている人は概してせっかち。すぐに情報が得られないと判断するや、すぐ次の場所へ飛ぶ。最近、表紙にアニメーションが流れ、そのあとに内容にタッチできる構成のものも見られる。最初のアニメーションを飛ばす「スキップボタン」を付けていないものがあり、5秒待っても情報に辿り着けないようなこの種のホームページは使う人が少なくなるとのこと。

H【過去情報も保存】
更新は必要だが、例えば過去に掲載した祭の情報をどこか保管庫を作って、そこに残して欲しい。参照データとして結構利用されるとのこと。

I【祭情報として必要なもの】
祭のときの交通規制と駐車場の地図情報、近くの宿泊場所、観光協会・商工会へのリンクは必須。地図は見にくいものが多いので、初めて訪れる人のことを考え、あまりデフォルメした図にしない方がよい。

 普通のパンフレットに書かれているような情報ではなく、見て楽しくなるような情報を上記項目に留意しながら発信して欲しいとのことでした。
 伝統芸能にかぎらないホームページ一般の改良ポイントについて触れられているのではないでしょうか。
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〔上十三学区 その8〕平成11年 県文化課調査資料による

【野辺地町】 〔 〕内は参加人数

〔野辺地小学校〕
◎伝統曲「祭り日」〔121〕・・・校内学習発表会、町内音楽交歓会

〔馬門小学校〕
◎沖揚音頭〔20〕・ ・・校内学習発表会(年1、2回程度)
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 いよいよ明日の七戸町で、県内学校巡りは最後となります。
 
(70)青森県での取り組み その35 2003年12月10日(水)
 先日、蟹田町教育委員会より情報を頂きました。
 こちらの教育委員会が主催となり、江戸時代から伝わる町の伝統芸能「蟹田八幡宮獅子舞」の伝承学習会を今度開くのだそうです。頂いた資料は下記のとおりです。
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 蟹田八幡宮獅子舞保存会による「獅子舞伝承」
 主催 蟹田町教育委員会

【内容】獅子舞保存会の方々を講師に笛・太鼓・じゃがら・舞などを学びます。
【対象】小学生・中学生
【日程・内容】 
 第1回・・・平成16年1月10日 獅子舞の歴史、分担、練習
 第2回・・・平成16年1月17日 練習
 第3回・・・平成16年1月24日 練習
 第4回・・・平成16年1月31日 練習
 第5回・・・平成16年2月7日 練習
 第6回・・・平成16年2月14日 練習
 第7回・・・平成16年2月22日 練習 当日本番
【時間場所】
 第6回までは、いずれも土曜日の夜6時から7時30分まで。
 中央公民館で行います。
【募集人員】 20名前後
【申し込み】 各学年の担任の先生へ参加申込書提出のこと
       (希望者により送迎あり)
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 東青学区・蟹田町の学校は、平成11年度の県文化課の調査(経緯は連載29参照)で名前が挙がっていませんでした。
 蟹田町教育委員会のお話によると蟹田中学校では「蟹田風太鼓」に取り組んでおり、先日むつ市でおこなわれた「こども郷土芸能フェスタ21」に出演したり、東京でも演奏してきたようだとのこと。
 さらにこうして、獅子舞の伝承に向けて熱心な取り組みを見せているところから考え、「蟹田風太鼓」だけではなく「獅子舞」も地域の子供たちに定着していくことになるのかもしれません。

 子供のころに体験して学んだその記憶は残ります。たとえ一時芸能が廃れたとしても、子供たちが成長し10年、20年後、体にしみこんだ当時の記憶から、地域の伝統芸能を復活させることは充分可能だと思われます。蟹田町教育委員会のように、今、積極的にこうして地域の伝統芸能を子供たちに伝えていく、継承の種を蒔いていくということは、大変意義あることのように思われます。蟹田町教育委員会の担当の方もたいへん素晴らしい方でございました。今後の蟹田町の動向に、注目していきたいと考えております。
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〔上十三学区 その9〕平成11年 県文化課調査資料より

【七戸町】〔 〕内は参加人数

〔城南小学校〕
◎城南太鼓〔116〕
・卒業生を送る会、児童館祭り、産業文化祭り、保健大会のアトラクション

〔西野小学校〕
◎上川目神楽舞〔10〕・・学習発表会、県文化観光立県宣言式典

〔野々上小学校〕
◎野々上小学校駒踊り〔32〕・・・校内運動会

〔野々上中学校〕
◎野々上子供駒踊り〔20〕・・・・七戸祭
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 本日で県内学校巡りは終了です。平成11年度の調査で名前が挙がっていた学校は、すべて取り上げました。
 今後、見やすいように一覧表として、全学校の情報を別コーナーに掲示していく予定でございます。
 蟹田町のように新しい取り組みを見せる学校も増えています。新しいデータへの更新が望まれるところです。来年度より市町村合併が加速されていく気配がございます。
 子供たちが以前、学校でこのような地域の伝統芸能に取り組んでいたという情報は「地域史料」として、将来的に価値が出てくることも考えられます。
 すでに当協会からのお願いによりまして、再調査の終わっている市町村は、岩木町と五所川原市です。
 これから調査に動いていただく予定になっているのが、青森市・八戸市・弘前市・黒石市・むつ市(回答順)でございます。
 その他県内全市町村へのお願いも終了しておりますので、少しずつ、県内の新しい情報が集まってくるかもしれません。期待したいところでございます。
 新しい情報が到着しましたら「青森県での取り組み その◆」という題で、本日の連載番号へ続ける形で、こちらに掲示していく予定です。
 
(71)雑感 2003年12月11日(木)
 青森のねぶた・ねぷたは地域の伝統芸能にとどまらず、外国にも紹介され、祭りは海外公演までするようになりました。いつのまにか「世界の火祭り」としての位置づけを与えられるようになったかの観もあります。
 津軽三味線も同様です。津軽地方の限定された伝統芸能が、今や日本中でのブームになっており、海外演奏も盛んです。
 瞬時に情報が地球規模で伝達する現代において、ユニークで興味深い芸能は、どんどん世界の人たちの知るところとなり、地域に限定しない、世界の人たちの文化遺産としての位置づけを与えられていくことになるのかもしれません。

 今年、日本オペラ協会会長の大賀寛氏が「美しい日本語を歌う」をカワイ出版より刊行されました。ここには、半世紀かけて大賀氏が取り組んできた日本語唱法についての提言と、「日本オペラ」振興の歴史が克明に綴られており、歴史書としても、かなりの読み応えがあります。私も出版スタッフとしてかかわったので大賀氏から、いろいろなお話を伺うことができました。一番印象的だったのは海外での数々のエピソードです。

 昭和49年、ウィーンで「日本庭園フェスティバル」があり、求められて大賀氏は、日本のオペラを紹介に行ったそうです。事前に譜面や録音テープを委員長に送っておいたそうですが、委員長のワインガルトナー氏は、実に辛辣。これはイタリアの誰それ、これはドイツの誰それの模倣。日本のオペラというが、我々のモノマネではないですか。こういった模倣的作品はいらないのです。私たちは前衛的な作品を欲しているのです。と、こういったことを言われたそうです。
 その中で、ワインガルトナー氏が、これは、と評価したのが、能をもとにした「黒塚」というオペラだったといいます。
 が、この「黒塚」は太棹などの邦楽器を中心とした一管編成のオーケストラで、日本人にとっては古典的ともいえる作品であり、前衛でもなんでもないので、大賀氏は「あなたにとっての前衛とは何ですか?」と尋ねてみたそうです。
 そうしたところ「あなたがたにとっては古典でも、これはヨーロッパにないものだ。よってヨーロッパにとっては前衛なのだ」との答えが返ってきたといいます。
 また、昭和63年に大賀氏が日本オペラのポーランド公演をしたとき、国賓待遇で大々的な記者会見の席を設けてもらったそうですが、そこでの質問も「このオペラと日本文化との関連」につきたそうです。
 どんな小さな部族であっても、海外(特にヨーロッパの人)は、確固たる文化的独自性を示している人には、多大な敬意を払うといいます。逆にそれがない人は、文化的ボヘミアンとして軽く扱われ、対等な付き合いが得られないと聞きます。

 大賀氏は、外国とは違う自分たちの特質を確立し、それを提示することの大切さをつくづく感じたと語っておられました。また、世界でご活躍されている弘前出身の作曲家 下山一二三氏も「日本で認められるにはモノマネでもなんとかなるが、外国で認められるには独自性が必要」という趣旨のことを同じようにおっしゃっておられました。

 これからの若い人たちはどんどん世界に飛び出し、おそらく外国の人たちから同じような問いかけをされることが増えてくるのではないでしょうか。
「外国にはない、あなた自身がお持ちの文化を教えてくれませんか?」 
 そのとき何と答えるか。

 大上段に構え「日本の文化とは・・・」と語ることもできるかもしれませんが、一番自然なのは、自分が生まれ育った風土、そこに培われているふるさとの文化についてなのかもしれません。
 そういった地元から出た文化、例えば津軽三味線やねぶた・ねぷたが、単なる物珍しさを超え、人間の心の琴線に触れる普遍性を兼ね備えているということは、外国の人たちにも大きな感動を与えているところから伺えるところです。

 もしかしたら、ふるさとの文化を大切にし、自分の足元を見つめていくことで、逆説的なようですが、世界の人たちと対等に付き合うためのパスポートが手にできる。
 ローカルはインターナショナルへの入口を示しているのかもしれません。


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