青森県音楽資料保存協会

事務局日記バックナンバー

<2003年12月(5)>

(85)蟹中風太鼓 その1
(86)蟹中風太鼓 その2
(87)県の音楽事業 その1
(88)県の音楽事業 その2
(89)県の音楽事業 その3
(90)時間との戦い!
(91)2003年を振り返って
 
(85)蟹中風太鼓 その1 2003年12月25日(木)
 平成11年の県の文化課の調査資料に基づく「伝統芸能に取り組む青森県内学校」の連載を終え、ただ今、少しずつ集まってきている更新情報の整理を始めております。
 岩手県、秋田県とも、新学習指導要領の影響もあり、伝統芸能に取り組む学校が増えていました。青森県でも平成11年度の調査には名前がなかったものの、最近、興味深い取り組みを始めた学校がいくつかあるとの情報をキャッチしております。

 本日取り上げる蟹田町立蟹田中学校もその一つですが、東京への演奏旅行など、その精力的な活動ぶりには目を見張るものがあります。以前より、噂は聞いておりましたが実態がよくわかりませんでした。

 このたび、蟹田町教育委員会のご協力、そして蟹田中学校の担当の先生のお力添えをいただき、詳しい活動の様子を把握することができました。
 こちらで内容を発表することの承諾もいただきましたので、本日、そして明日にわたって、取り組みの内容をご紹介させていただきたいと存じます。
 ただ、内容について、蟹田中学校への直接のお問い合わせはご遠慮いただければとのお願いをいただいております。
 ご質問などは直接、当協会事務局か、あるいは指導に当たっている風太鼓へのご照会をよろしくお願い申し上げます。

 さて、蟹田中学で取り組んでいるのは和太鼓です。その名称は「蟹中風太鼓」ですが、
町の芸能としての名称は「蟹田風太鼓」です。指導にあたっているのは「蟹田風太鼓保存会」の方々で、この取り組みは学校の教育課程にも位置づけられているとのことです。

 取り組みが始まったのは平成13年度。
 きっかけは蟹田中学の先生が文化祭の発表部門の一つとして、生徒による「風太鼓」を加えてはどうだろうかと、指導を保存会の方々に依頼したことによるそうです。

 ここまで聞いて驚くことは特に何もありません。和太鼓を学校の現場に取り入れている学校はたくさんあります。が、取り入れたその後で大きな岐路に直面します。
 なかなか継続しない学校、そして蟹田中学のように、東京にまで演奏旅行に出かけてしまうという発展的な活動につなげていける学校。

 この違いは一体どこから来るのか。事務局も特に力を入れ、なぜ取り組みが成功するところと、そうでないところが出てくるのか。
 いろいろな事例から原因を探っているところでございます。

 その解答への一つの示唆が次の生徒感想文の中にあるのかもしれません。

 今年の風太鼓は友達に勧められてやったものでした。しかし、夏休みの、師匠に指導してもらった練習で、風太鼓ってこんなに楽しいものだということを知りました。
 全国大会でも、練習の成果を思う存分に発揮することができました。(中略)下北でも短い練習時間の中で、とてもすばらしい風太鼓を披露できました。
 ここまで来ることができたのはやっぱり師匠がいるから、だからこそ、悔いのない最高の素晴らしい結果を残すことができたんだと思います。
 ありがとうございました。今年は、風太鼓が一番の思い出、夢中になれたことだと思います。(3年女子の手紙から)

 これは平成15年11月、下北文化会館での発表を終えた生徒の感想文からです。蟹田中学校の先生から伺ったところ、保存会の方々を「師匠」と呼んで、生徒がたいへんな信頼を寄せているとのことです。
 いかに生徒に楽しく、達成感を与えるような指導をおこなえるか。

 指導に当たっている方々の、単なる技術上のことだけではない教授テクニックも、成功への重要な要素となっていることが伺えます。それが蟹田中学校の先生から頂いた回答の中に、「風太鼓保存会の指導者から太鼓に打ち込む姿勢や生き方を学ぶため」という一文を加える結果となっているのかもしれません。

 さらに蟹田町の場合は地域の人たちの協力も非常に大きいようであり、こういった、いろいろな要素がうまくからみあって蟹田中学校の取り組みが成功につながっていることが伺えます。
 このような点を踏まえ、いただいたアンケートの内容をご覧いただければ幸いと存じます。
 明日、こちらに全文掲載の予定です。

(参考)蟹中風太鼓の様子を紹介したホームページがあるそうです。
    下記URLとなります。

http://www.r20.7-dj.com/~umeta/kazedaiko_009.htm

 
(86)蟹中風太鼓 その2 2003年12月26日(金)
 事務局日記でございますが、百件を超えますと古いものから順に、次々と削除されてまいります。
 あと十数件の日記掲載により、臨界点の百件を超えてしまいますので「事務局日記」のバックナンバー、保存庫を作りました。
 お暇なときにでも繰り返しご覧いただければ幸いです。
 いろいろな方面から寄せられました興味深い情報に触れられるかと存じます。

 さて、本日は一回の掲載でデータが入りきらないため、(前)(後)と分けまして蟹田中学校よりのご回答をご報告させていただきます。
 
 (後)はこの記事の下に続いております。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 貴校の児童生徒と地域の伝統芸能(民謡を含む)との関わりについてお答え下さい。

【質問1】   
 芸能の名称・・・・( 蟹中風太鼓 )
 参加人数・・・・・ (35人、全国大会に出場した有志の数) 
 指導にあたっている保存会などの名称・・(蟹田町風太鼓保存会)


【質問2】
そのとりくみは、学校の教育課程に位置づけられて(いる ・・)


【質問3】
伝統芸能のとりくみに対し、とりくみ始めた年、形態(授業・正課クラブの別など)、目的、活動時間、発表機会、これまでの簡単な活動史などを記して下さい。

@取り組み始めた年・・・平成13年度から

A形態・・・・・・・・・文化祭の発表活動として

B目的
体験を通して、地域の伝統文化に触れることと、風太鼓保存会の指導者から太鼓に打ち込む姿勢や生き方を学ぶため。

C活動時間
13年度と14年度は文化祭の事前活動時間、平成15年度は土日の夜夏休み中を利用

D発表機会(平成15年度)
 ◆第11回全国中学校文化連盟 総合文化発表会・・・8月21日、22日
              (東京都北区 北とぴあ・さくらホール)
 ◆町民へ向けた報告書での発表演奏(蟹田中学体育館)・・9月初旬
 ◆町民運動会での発表演奏(町営陸上競技場)・・・・・・9月中旬
 ◆文化祭「蟹中祭」での発表披露(蟹田中学体育館)・・・10月中旬
 ◆青森県こどもフェスタ21(むつ市下北文化会館)・11月15日・16日

Eこれまでの活動史

【平成13年度】
蟹田風太鼓保存会に、蟹中祭(文化祭)の発表部門の一つとして、生徒による「蟹中風太鼓」を加えたいとのことから、指導を依頼し活動をスタートする。蟹中祭に合わせ、保存会のメンバーの指導のもと、練習が始まり、蟹中祭で披露。
 
【平成14年度】
13年度と同様、蟹中祭での発表を終えた後、「青森県中学校文化連盟総合発表会」のオープニングを飾り、好評を博す。

【平成15年度】
青森県文化連盟より、青森県を代表して全国大会依頼があり、出場することとなる。
5月以降、全校生徒から有志を募り35名を人選し練習がスタート。主に練習は、部活動と指導者の方々の勤務にあまり影響のないようにと、土・日曜日の夜におこなわれた。
そして、夏休みに入ってから本格的な練習が始まり、本番まで、指導者も生徒も、真剣な練習が続く。
8月21日の朝、蟹田駅を出発し、その日はリハーサルを行い、22日、いよいよ本番。35名のメンバーは、指導者や町民の皆さんへ感謝の気持ちを込め、魂の鼓動を「北とぴあ・さくらホール」に響かせた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【質問4】
芸能に参加している児童生徒の感想や、父母・地域の人々の反応、その他のエピソードがありましたら記して下さい。
  
 以下、11月の下北文化会館での発表を終えた生徒の感想文より

今年の風太鼓は友達に勧められてやったものでした。しかし、夏休みの師匠に指導してもらった練習で、風太鼓って、こんなに楽しいものだということを知りました。全国大会でも、練習の成果を思う存分に発揮することができました。
(中略)下北でも短い練習時間の中で、とてもすばらしい風太鼓を披露できました。ここまで来ることができたのは、やっぱり師匠がいるから、だからこそ、悔いのない最高の素晴らしい結果を残すことができたんだと思います。
ありがとうございました。今年は、風太鼓が一番の思い出、夢中になれたことだと思います。(3年女子の手紙から)

僕は蟹中風太鼓に入って3年目です。
でも、最初は打ち方もあまりよくわからず、戸惑ってばかりでした。でもコーチの皆さんが僕たちを優しく教えてくれました。そして、自分でも自分が「上達している」と思えました。
本当にうれしかったです。今年は、東京での全国大会にも出場することができました。これも、コーチの皆さんがとても素晴らしいご指導をしてくれたからこそだと思います。皆さんには、本当にお世話になりました。(中略)僕は、風太鼓という、町の文化を大切にしていきたいと思いました。
最後に、コーチの皆さん、本当にありがとうございました。(3年男子の手紙から)


【質問5】
取り組んでみてよかったと思われる点、課題、その他、今後の方向性として考えていることなどがありましたら記して下さい。

晴れの舞台を経験したことにより、今後の人生に生かせる貴重な体験となったことと、今回の大会出場に至るまでに、太鼓を教えてくれた指導者の皆さんはもちろんのこと、町民の応援など、たくさんの方々のご協力、ご支援によってできたという感謝の気持ちを持てるようになったことが良かった点として挙げられる。
また、大きな自信と誇りとなったことと思っている。

課題や方向性としては、今後、風太鼓を継続していく予定であるが、その進め方などについては、まだまだ検討の余地がある。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 以上でございます。ここに、事務局からの余計なコメントはあえて付加しないことにいたします。関係各方面へのこれからの取り組みへの参考資料となれば幸いです。

 ご回答いただいた蟹田中学校、ならびにお力添えいただいた蟹田町教育委員会に御礼申し上げます。

 なお、指導にあたっておられる師匠、蟹田風太鼓のURLは下記となります。

http://www.r20.7-dj.com/~umeta/index.html

 
(87)県の音楽事業 その1 2003年12月27日(土)
 平成15年2月22日(土)、下北文化会館にて、とても素晴らしい「青森県の音楽事業」がおこなわれたと聞いています。

 参加校は合唱が4校、吹奏楽が12校。
 特に吹奏楽は、著名な岩井直溥氏とトランペッターのエリック・ミヤシロ氏の二人が指導するというので、大人もかなり入り、出演者だけでも700人以上という大がかりな舞台に発展していきました。
 当日は、大変な熱気と興奮、そして大きな感動で終了することになったということです。

 この事業「子ども音楽家育成支援事業」は、青森県の施策の中心に「子どもの文化」が置かれていたことを踏まえ、青森県教育委員会がおこなった子ども関連事業の一つです。

 平成12年度からスタートしましたが、上記平成15年2月で終了となりました。
 参加した方ほとんど全員がこの年で事業が終了するのは本当に惜しいと残念がっていたそうです。
 県の担当者の思惑を遙かに超えた事業へと発展していった取り組みですが、これからというときに途絶えることになってしまったということです。
 子どもたちにとって大変有意義と思われた事業なのですが、今は、なくなってしまいました。こうした事業は、継続してやっていくことに大きな意味があると思うのですが、あいかわらず、青森県の事業はやりっ放しという気がします。
自分もその一員ですが・・・
 とは、ある関係者のお話。

 青森県では、他県でも類を見ないような素晴らしい文化事業が数多くおこなわれております。
 問題は、それが「点」で終わっており、各点が、有機的なつながりを見せていないというところにあると聞きます。

 せっかく大きな資金(税金)と人力、そして関係者の熱意が投入されて、素晴らしい成果を見せた事業も、プッツリとこれからというときに途絶え、それぞれが「点」の状態で事業成果は休眠中の状態です。
 まだ平成15年のこの事業は記憶に新しいのですが、これが5年、10年と時間が経過していった場合、事業があったことすら忘れられてしまう・・・。事実、そういった事業が少なくないということです。
 このような、せっかくの価値ある事業を一夜のイベント、お祭り騒ぎで終わらせてしまうのは、誠に惜しいような気がしております。
 一つの「点」で終わらせず、そこから発展する何かを期待したいところです。

 そのためには、これまでの価値ある事業の総点検、内容を把握しておくことが必要ではないかと考えております。

 前々より述べておりますが、青森県音楽資料保存協会では単なる音楽資料だけではなく、それらの資料を取り巻く周辺情報、また、ほとんどが空白状態だといわれている青森県の音楽史も補完収集しております。
 特に音楽に関する青森県の歴史については、協会が収集した音楽資料の位置づけに対して必須情報のため、かなり力を入れて情報収集をおこなっております。
 当然のことながら、ここに、青森県の音楽関連の事業史も加わります。

 事務局としては、例えば、以前あそこでこんな事業があった。それにより、こんな成果が出ている。それらを土台に、こちらでは今度こんなことをやってみよう。

 県や各市町村の価値ある取り組み事業史の全体像を収集提示することにより、休眠状態にあった、かつての価値ある各事業が相互に関連を持ち合い、有機的につながり始め、新たな発展的な動きに成長していく。
 当協会で進めている情報収集、さらにホームページなどを通しておこなっている情報発信の作業が、少しでもこういった点においてお役に立つことを期待しているところでございます。

 そのようなわけで、県はもとより、各市町村での音楽事業史にもアンテナを張っておりますが、まず得られた「子ども音楽家を育てる支援事業」について、ご報告してまいります。
 県の事業としては、異例なほどの熱気あふれる取り組みに成長していったそうですが、その秘密については、明日触れてみたいと存じます。
 
(88)県の音楽事業 その2 2003年12月28日(日)
 昨日の続きとなります。

 いったいどうして熱気あふれる事業にすることができたのか、本日の内容の中には、もしかしたら、今後、発展的な事業展開、その取り組みを考える上での、ヒントが含まれているのかもしれません。その答えは案外簡単なもの、「任せる」ということでした。

 県の担当者は、この事業を行うのに当たり、地元の先生たちに、指導者の選考から研修内容など、かなりの重要な部分を任せてしまったそうです。

 このため、県から押しつけられた事業ではなく、自分たちの手でやってるという意識が強く働くこととなり、熱心な取り組みとなって、県の思惑を遙かに超えた事業に膨らんでいったそうです。

 多少進め方がおかしいのではと感じても、あれこれ口出しをしない。県からやらせられているという気持ちを作らないよう、うまく参加者の気持ちを高めるために「任せる」ということ、これは大切なポイントとなるそうです。

 さて、こうして平成15年2月22日(土)、下北文化会館でおこなわれた「こども音楽家育成支援事業」ですが、詳細内容は、次のようなものでした。

【@ 技術研修会】
◆ 合唱4回、吹奏楽6回研修会を実施。

 講師は、合唱がユズリンこと中山譲氏、東京女子体育大学の前田美子氏、吹奏楽が岩井直溥氏、トランペッターのエリック宮城氏の4名。

【A 成果発表会(こども音楽祭)】

◆日 時 平成15年2月22日(土)

◆場 所 下北文化会館

◆参加校 

〔合唱〕
第一田名部小、第二田名部小、大平小、苫生小              

〔吹奏楽〕
第一田名部小、大平小、苫生小、大平中、大間中、むつ中、
奥戸中、川内中、脇野沢中、大畑中、田名部中、大湊中

 これに吹奏楽は、岩井直溥氏、エリック宮城氏の二人が指導するというので、大人の人もかなり入り、出演者だけでも700人以上という大がかりな舞台になったというのは昨日触れたとおりです。
 
 さて、発表会当日は、講師の岩井氏、前田氏に指揮、エリック氏にはトランペットの演奏をしてもらい、大変素晴らしい発表会になったということです。

 特に岩井氏は、指揮者というよりエンターティナーという感じで観客を魅了、とても感激したものとなったそうです。

 ところで、平成12年度からスタートしたこの事業、最初から、このような展開ではなかったそうです。紆余曲折があったとのことです。その事業史については明日、触れてみることにしたいと存じます。
 
(89)県の音楽事業 その3 2003年12月29日(月)
 本日は「こども音楽家育成支援事業」の趣旨、その事業内容からご説明いたします。
それは次のようなものでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【趣旨】
 21世紀の「あおもり文化」の創造を支える感性豊かな子どもの育成に資するために、合唱や吹奏楽の部活動を行っている小・中学生を対象に、プロの音楽家から直接技術指導を受ける機会とその成果を発表する場を設けることによって、一層のレベルアップを図る。

【事業内容】
小・中学校の合唱部及び吹奏楽部等から参加者を募集し、プロの音楽家を招聘し、技術指導を行う「技術研修会」と、その成果を発表する「成果発表会(こども音楽祭)」を実施する。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 さて、第1回の平成12年度は、合唱が弘前市立小沢小学校、弘前市立第三中学校、吹奏楽が金木町立金木小学校、板柳町立板柳中学校の4校に、指導者を呼んで弘前市市民会館で成果発表会を実施したそうです。

 しかし、選ばれなかった学校から、参加したかったのに、県で4校だけにしてしまったという不満の声が聞かれたそうです。

 そこで、平成13年度は、八戸市、十和田市を中心に、合唱は町田コダーイの大熊進子氏、活水女子大学の竹内秀男氏、吹奏楽は尚美学園大学の小澤俊郎氏を呼んで、たくさんの学校の児童・生徒に技術指導を行ったということです。

 こうして、たくさんの学校を対象としたため、研修だけやればいいのではということになり、数回の技術指導研修会を実施しただけで、平成13年度は成果発表会を開催しませんでした。

 しかし、最終の平成14年度には、成果発表会はやはり必要ではないかとの声が上がり、今回が、計画の最終であったということもあり、下北地区で技術指導講習会と、その成果発表会を、むつ市で開催することになりました。その内容が昨日触れたものです。


 こうして平成12年度から3カ年計画で始まった事業は、平成12年度を県教育委員会の文化課が担当。
 平成13年度からは、文化事業が教育委員会から知事部局に移管されたため、環境生活部の文化・スポーツ振興課に引き継がれて終了しました。

 子どもたちにとって大変有意義と思われた事業は、今はなくなってしまいましたが、こうして情報を記録・発信していくことで、今は休眠していても、いつかまた大きな芽を吹くことを期待しているところです。

 なお、平成12年度の事業参考データは、下記URLから見ることができるようです。

http://www.pref.aomori.jp/g-hyoka/13pdf13/1301042.pdf

 
(90)時間との戦い! 2003年12月30日(火)
 死刑判決を受けてしまいました・・。

 協会の設立と同時に、弘前在住のある音楽家の方の資料保存に向け、準備をしておりましたが、その方から先日、上記のようなお話を伺ってしまいました。右手の具合がどうもおかしいということで、大学病院での精密検査の結果、頭部に本来あるはずの太い動脈が一本もなかった。診断結果は「未破裂状態の脳梗塞」だったそうです。

 診断当初はかなり落ち込まれたとのこと。・・が、今は「なるようにしかならない!」と割り切られ、以前のように精力的な音楽活動に邁進されております。
 幸いなことに、今のところ至ってお元気とのことですが、来年のことはわからない。万一の事態となったらパソコンの中を引っ掻き回してもらえれば、いろいろなものが見つかるはずです。その節はよろしくと言われており、すでに協会への資料管理委任状もいただいております。
 しかし、やはり整理はご自身がおこなうのが一番です。

 以前、東洋一の音楽資料を持つといわれている国立音楽大学の付属図書館を見学しました。そこで、遺族から寄贈された音楽資料を見る機会がありました。

 確かにしっかり保管されていましたが、よくよく見るとご本人にしかわからないのではと思われる生原稿が数多く含まれていました。このような資料をどっさり持ち込まれるのはありがたいようで、実は一番困るという意見は、よく耳にするところでございます。

 持ち込まれたからには整理しなければならないのですが、今述べたように、ご本人にしかわからない資料はどうにも整理のしようがなく、膨大な時間をかけても成果がなかなか思うように上がらない。といって、それだけにかかわっているわけにもいかず、次から次へと処理しなければならない仕事が来るので、結局、そのような資料は整理が後回しとなって、保管庫の片隅に積み上げられたままとなる。
 こうして活用されることなく、その資料は、永い眠りにつく。

 こういったケースが少なくないようです。

 これでは保存とは名ばかり。実質的にその資料は失われてしまったのと同義です。
 こうならないよう、やはり、資料整理は早いうちにご本人、またはその資料を熟知しておられる方の手を経て、ある程度整理しておくことは必須です。

 上記の件をご説明し、「あとは頼むよ、とドッサリ持ってこられるのが一番困りますので、何卒よろしく」と、ただ今、冒頭で述べた方と協力しまして、音楽資料の保存管理作業を事務局では進めておりますが、本当にひやひやしております。

 生きて元気でいる限り、仕事は続けますとおっしゃっていただいておりますが、いつ何が起こるかわかりません。

 保存作業は、時間との戦いでもあります。
 
(91)2003年を振り返って 2003年12月31日(水)
 今年も本日で終わりとなります。本当にたくさんの方々のお力添えをいただきました。
心より御礼申し上げます。
 今年最後ですので、本日は、平成15年の総括をすることにしたいと存じます。
 と、申しましても協会の事業開始日は10月1日でしたので、実質的な活動は3ヶ月間ということになりました。この3ヶ月の間に、いったい何ができたかをご報告させていただきます。
 本日も掲載データの容量の都合により、2部に分けての掲載となります。

 さて、協会事務局の本年の目標は「収集」ということでございました。
 収集対象は2つありました。1つは形ある「物」としての音楽資料でございます。

 本年度、協会が保管させていただいたのは、次の方々の資料です。

 小倉尚継 岩森榮助 木村博子 下山一二三 野坂徹夫 
 萩野昭三 藤川ツトム 本間雅夫 安田進 
 以上9名(アイウエオ順・敬称略)   

 資料内容は次のとおり
  ◆楽譜・・・・84種類、134点
  ◆録音物・・・47種類、82点
  ◆その他・・・10種類、11点

  ◇合計・・・・141種類、227点

 上記資料が、古文書などを保存している県公共施設の特殊庫に収蔵完了となっております。その他にも現在、川崎祥悦氏など何名かの方々が来年収蔵の準備に取り掛かっているところです。
 ちなみに資料は協会に寄贈するのではなく、所持者が権利を保有する「寄託」の制度を取り、貴重な資料を将来の青森県の財産に供すべくお預かりしていくという形となっております。ふるさと青森県に関する音楽資料の保存窓口として、来年も、一層積極的に動いていく予定でございます。

 さて、もう1つの収集対象は「情報」でございました。

 これは
@「青森県の音楽史に関係するもの」
A「青森県の音楽に関する現状の把握」
B「他県の取り組み」の3点に力を入れ情報を集めました。

 以下に詳細を記したいと存じます。

■青森県の音楽史に関係するもの
 青森県の音楽史については空白が多いといいます。それを埋めるべく関係者から聞き取りをおこない「青森オペラ研究会」「こども音楽家育成支援事業」などの音楽事業史、さらに川崎祥悦氏のインタビューを9時間録音、また、ほとんど知る人がいない安田進氏の青森県の現代創作音楽史への貢献などを活字に残すなど、その他、様々な角度から青森県の音楽史にスポットをあてた情報の蓄積を開始いたしました。
■青森県の音楽に関する現状の把握
 保存活動をおこなうには、その対象がおかれている現状把握は必須です。
 消失が心配されている民俗音楽の分野でもお役に立ちたいと思っているのですが、その現状把握調査をスタートさせたところで、今年は時間切れとなってしまいました。
 それが「青森県内学校での伝統芸能への取り組み」の調査でございました。
 なぜ、事務局日記で長い期間にわたって学校の取り組みについての連載を続けたのか不思議に思われた方がいらっしゃるかもしれません。
 子どもたちの芸能の取り組みの後方には、必ず保存活動に携わっている方々がおられます。
 学校での伝統芸能への取り組みを知るということは、同時に芸能の保存会についても知るということにつながります。
 ここで得られる情報は将来、民俗音楽資料を収集管理する際の大きな助けとなります。これが第一点。
 もう一点は県内各市町村の教育委員会をはじめとする諸機関との協力関係の強化です。

 地域の音楽情報は多くが役場に集まっています。その役場との連携がしっかり取れていることが、これからの協会活動の成否を大きく左右します。
 学校関係の情報を扱うことで県内各市町村の教育委員会とつながりがでてきますが、こういったつながりは協会にとって必要不可欠なものです。信頼関係を早い時期に築いておくためにも、まず最初にこの点に切り込んでいく必要があり、協会の存在を浸透させていくためにも連載は、長期にわたる必要がありました。

 その協会の目指すところは「ふるさとの音楽を守る」という点につきます。民俗音楽はそれを発する芸能が消えると途絶えます。
 これは協会としても困ることであり、同時にこれは各市町村の教育委員会の担当課が最も危惧するところでもあります。

 保存するにはまず現状の把握が第一。現状把握ができずに効率的な保存活動はできません。ところが、なぜか、伝統芸能の興亡の目安となる学校での取り組みの情報が平成11年度を最初で最後とし、以後更新されていませんでした。

 そこで事務局では県内全市町村に対し、最新データの更新をお願いすることとなりました。これに対し、岩木町、五所川原市、南部町、脇野沢村、鶴田町、碇ヶ関村、蟹田町の各教育委員会から最新調査データをいただけました。鶴田町と蟹田町から得た情報は、こちらで連載報告したばかりです。
 
 ちょうど、呼びかけをおこなった時期が、新年度予算作成、定例議会と重なったため、来年になるが調査をしてみたいとの意向を示している市町村は、青森市・八戸市・弘前市・黒石市・むつ市・平内町(回答順)です。

 データ更新については話題には上ってはいたものの、なかなかきっかけがなかったというところも少なくなかったようです。

 この調査は協会のためというより、青森県、そして、なにより各地域にとって地元の現状をとらえる有益な参考データとなるものですので、この機会に、5年ぶりのデータ更新が、県内全域で実施されることを期待しているところです。今年は種を蒔くだけにとどまりましたが来年、これが具現化していくことになりそうです。

■他県の取り組み
 青森の音楽資料を守るのだから目を青森だけに向けていれば済む。どうも、そういった時代ではなくなってきているかのようです。
 インターネットを使って世界規模で瞬時に情報をやり取りできる時代です。
 事務局では積極的に外に目を向け、先進的な取り組み・活動をおこなっている個人や団体と協力関係を持ちながら、進んでいる点は相手に学び、相手が欲する情報は提供(個人情報の開示には充分留意の上)していくなど、情報交換のネットワークを構築中でございます。

 ここから得られる他県の有益な情報をもとに、より発展的な活動をしていきたいと考えております。
 県内の特定市町村にとって有益な情報が得られたら、今年も情報を送らせていただきましたが、来年も積極的に発信、活用していただけるようお役に立ちたいと考えているところです。

 以上、協会事務局の今年3ヶ月の歩みを概観いたしました。
 詳しくは事務局日記のバックナンバーをご覧いただければわかるかと存じます。毎日更新しておりますので、日々の協会事務局の様子が把握できるのではと存じます。

 来年も散逸消失が心配されている「ふるさと青森の音楽」を守るために積極的な活動を展開していきたいと考えております。

 最後となりましたが、本年お力添えいただいた、たくさんの方々に、御礼申し上げます。どうもありがとうございました。


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