(119)あやこの世界 その1 (120)あやこの世界 その2 (121)あやこの世界 その3 (122)あやこの世界 その4 |
(119)あやこの世界 その1 | 2004年 1月28日(水) |
「あやこ」って何ですか? 昨年、青森のわらべうたの権威 村林平二氏(大正8年 青森市生まれ)のご自宅でこのように尋ねました。 最初は人名かと思ったのですが、村林氏は笑いながら、違います。違います。お手玉のことですよ、とご返答されました。 村林氏の著書に「あやこ歌」という項目があったので、アヤコさんという方が伝承されたわらべうたなのかなと、うっかり考えてしまいました。 もう私の世代では「あやこ」という方言は使いません。知りませんでした。 語源は「あや」に津軽特有の「コ」がついたもののようですが、その「あや」は、布を縫い合わせた模様から来ているのか、お手玉を投げ上げ空中で交差する様子から来ているのか、詳しいことは不明だとのこと。 この「あやこ」、かつての青森県の子供たちにとって遊びの世界では欠かせない日常語であったそうです。 もう「あやこ」という言葉もそうですが、お手玉遊びをする子どもを見かけることもなくなりました。 寂しいですね、と口に出したところ、村林氏からおもしろいお話を伺いました。 高齢者のリハビリに、「あやこ」は最適なのだそうです。 まず、座ってできるので、車椅子の方でも可能。 あやこを使った運動により肉体の機能維持、または回復の手助けになるのではということでした。また、あやこには必ず遊び歌が付随します。 歌いながら、あやこを空中で操る。このことにより、腕の筋肉はもちろんこと、脳が活性化されます。痴呆防止にもいいのでは、とのこと。 心理学的にも「子ども時代の懐かしい思い出にひたることで人間は癒される」という話もあります。 確かに、心と体の両面からのリハビリが、「あやこ」を用いることで可能になるのかもしれません。 事務局に、あやこ関連のわらべうたも集まってきていますので、将来、これは県内の様々な福祉施設で活用できる素材になるかもしれません。 さて、この村林氏の著書を媒介に、ある興味深い団体と知り合うことができました。 それについては明日、お知らせいたします。 | |
(120)あやこの世界 その2 | 2004年 1月29日(木) |
村林平二氏の著書「青森わらべ歌(音楽之友社)」に次のような内容の文がありました。 最近ではお手玉遊びを知らない世代が出てきている。 歌はもちろんのこと、遊びまでが失われ、やがては姿を消すことになると思っていた。 ところが平成4年9月18日のNHKのテレビが、四国の新居浜市でおこなわれた「全国お手玉大会」を放映していた。 老人ホームで、若い人たちがホームの老人たちと一緒にお手玉をしている場面が映し出されており、私は思わず目を見張った。うれしかった。 あやこの効用を伺ったばかりだったので、村林氏の書いておられたお手玉を使った先駆的活動を展開されている新居浜市の「日本のお手玉の会」とコンタクトを取ってみることにいたしました。 すぐに会長さんよりお返事をいただき、こちらには全国各地のお手玉関係のわらべうたが集まっているそうで、青森県の資料をご厚意で送っていただきました。 さらに、お手玉と健康のかかわりについての書籍もご提供いただき、こちらからは、村林氏の著書を返礼に進呈させていただくなど、昨年より、村林氏が取り持つこととなった不思議なご縁ということで情報交換をさせていただいております。 平成15年度には、この「日本のお手玉の会」は「サントリー地域文化賞」を受賞。 日本の伝統的なお手玉遊びに競技性を加え、老若男女幅広い人々を惹きつけ、全国さらには世界に広がった活動の発祥地として、新居浜での「お手玉のまちづくり」にも発展することを期待するというのが受賞理由だったそうです。 お手玉は、年齢に関係なく、幼児から90歳代の高齢者まで、自分の技量に合わせ楽しむことができる類例のない生涯スポーツとしてとらえられるようになってきており、健康増進はもとより、世代間交流にも役立つ伝承文化としても注目されてきています。 こういった点を鑑み、事務局では昨年より、あやこ歌関連の資料も力を入れて集めております。 将来、青森の様々な場所で、あやこが復活、あやこ歌とともに活用されていく可能性が出てきております。 その活用の可能性は、明日に続けます。 参考まで「日本のお手玉の会」のURLは下記のとおりでございます。 http://www.shikoku.ne.jp/otedama/new/top.htm | |
(121)あやこの世界 その3 | 2004年 1月30日(金) |
「お手玉なんて忘れた」 そう言って最初は渋っていたお婆さんですが、童謡を聴いて気持ちがほぐれ、見事な玉さばきを見せてくれました。何度か通い続けていると、皆が元気になっていくように見えます。小さな玉の不思議な力をひしと感じます。 こうしたお手玉指導を続けているのが昨日ご紹介した「日本のお手玉の会」です。 会長の藤田石根さんは年間100日以上、ときには四国の新居浜から大阪や九州まで車を運転しては指導にあたっておられるそうです。 日ごろの活動の柱は、なんといっても子どもやお年寄りを対象としたお手玉教室です。 小さなお手玉の持つさまざまな力、その日ごろの活動の蓄積は、たいへんなものをお持ちの同会より、ご厚意により、いろいろな資料をいただいております。 それらはいずれも興味深いものです。 藤田会長の承諾を得ましたので、この中から、いくつか参考となる資料をご紹介してみたいと存じます。 青森県音楽資料保存協会は、青森に関係する音楽資料の「保存」と「将来的な活用」を目指しておりますが、お手玉はどちらにも光を当てるものです。 利用が期待されるジャンルは「わらべうた」です。 他県の情報を集めておりますが、わらべうたが学校の総合学習授業や老人ホームなどでの痴呆防止、リハビリの一環として取り上げられるケースが増えてきているそうです。 一般的なスタイルは楽譜を見ながら、みんなでわらべうたを斉唱するというものです。 もっと進めて、わらべうたには、ほとんどの場合、振り付けがついているので、振りつきで歌を学習する・・。 取り組みは、この辺でストップしているケースが多いようなのですが、ここに、お手玉を導入することで、さらに発展した取り組みにできるものと考えられます。 お手玉はスポーツ、ゲームの側面がありますので、こういったところに特に子供たちは目を輝かせて取り組むことが期待されます。 藤田会長のお話によると実際そうだとのこと。73歳のある方の体験談をご紹介していただきました。 近くの小学生から「小さか頃の遊びは何ね?」と言われ、「お手玉」と答えたですよ。そしたら、不思議そうな顔ばしとっとですよ。 昔なら、誰でんしよったことばってん、今の子どもは、しきらんとですね。びっくりしたですね。そっで、家に招き入れて、して見せたとです。 教えてみっと、子供たちは大喜びで、熱中しとりました。しばらくしたら、「あのおばあちゃんは面白か遊びば知っている」って、小学校の話題になったごたるとです。 先生からは「授業で教えてください」といわれ、「先生」になって、教壇に立ちました。 依頼があれば、どこでん教えん行きます。 言うてください。 (明日に続く) | |
(122)あやこの世界 その4 | 2004年 1月31日(土) |
わらべうたの中には「お手玉歌」がありますが、基本的にわらべうたは2拍子がほとんどなので、お手玉歌以外のわらべうたもお手玉遊びに利用できるそうです。 これは藤田会長も、わらべうた研究者の村林平二氏も共通しておっしゃっていたことです。 こうしてお手玉を媒介にして、わらべうた学習をすることで、子どもたちの興味も一層わくのではないかと考えられます。 楽譜だけの無味乾燥な保存ではなく、血の通った「歌」としての保存、そして、ただそれが歌われるだけではなく、その歌を通した、医療・教育現場での様々な活用が期待されるたいへんすぐれた素材がお手玉ではないかと事務局でも注目しております。 そのお手玉を使った具体的な授業指導内容の資料もいただいております。 本日はそれをご紹介してみることにします。下記のとおりです。 ◆10時30分【導入】 ・お手玉は日本だけの遊びではない。 ・お手玉は祖母から孫へと伝承されていく隔世伝承。 作り方や遊び方、歌、さらには行儀作法や社会とのかかわり方、 昔話など教わる。 ・お手玉の呼び方も全国で321くらいある。各地方によって遊び方も多様。 ◆10時35分【遊び方の分類】 @拾い技(寄せ玉) 親玉を決め、奇数の玉で遊ぶ。床に置いて遊ぶ A振り技(投げ玉、つき玉ともいう) 空中に投げ上げて遊ぶ。歌いながらする。 Bコミュニケーション遊び 演舞(歌に合わせて技を創作) ◆10時43分 【お手玉を楽しむ】 ◎お手玉をはじめるときの大切なこと ・指の準備運動 ・脳の準備運動「右脳・・感情、左脳・・論理」 ◎上手になる秘訣 ・基本をしっかり身につける ・続ける、根気 ・リズムに乗る 【ウォーミングアップ】 ◎お手玉2個を使ってリハビリお手玉 ・お手玉の感触・重さを体験しよう ◆11時【1個の遊び】 ・甲と平で風船をつく要領で右、左 ・1個のお手玉を左右に突き合う ・1個のお手玉を上下に突き合う ・1個のお手玉を右手で高くあげ、受け取る ・1個のお手玉を左手で高くあげ、受け取る ・甲で跳ね上げた玉を上からつかみ取る 右手、左手 5〜6回 ◆11時5分【2個を使って】 ・2個のお手玉を両手で一度に上げ、落ちてくる玉を左右の手で受け取る ・2個のお手玉を両手で一度に上げ、手の甲で受け止める。 ・1個は手の平、1個は甲に置き、同時に跳ね上げ、 平は甲で、甲は平で受け取る。これをくり返す。 ・両手2個 右手回し、左回し ・片手2個 右手回し、左回し ・2個同時に上げて時間差でキャッチ ・2個両手投げ上げ、ジャグリング ◆11時25分【3個を使って】 ・両手投げ上げ(山がたゆり) ・両手3個シャワーゆり (明日に続く) |