(248)青森県の伝統文化団体 その1 |
2004年 6月15日(火) |
★村には三つの獅子があります。しかし、現在活動して生きているのは、ひとつだけです。それも、今、ダム建設により、失われようとしています。数少ない会員の中で、獅子を踊れるのは6名。そのうち村外に移転するのは3名。このまま保存会を維持していくのは当然無理です。村民の中で習いたいと思う人があれば指導し、維持していくのも可能かとは思いますが、現在は、まだその段階まできていません。資料館の中のケースの中で、獅子頭だけが、動くこともなく飾られるのかと思うと、やるせない心境になります。
★一番困っているのは地元での就職難で、せっかく芸能を一生懸命やっても、高校卒業と同時に、県外に流出してしまうのが残念でならない現状である。
★小、中学生より教えていきたいと考えていますが、1学区に、型の違うえんぶり組が7組もあり、学校で教えることができない状況です。このため、子ども会などの参加をお願いしたいのですが、もし大勢参加されても、受け入れができず、思うようにいきません。
★昔は農民が農閑期に行う祭りだったが、現在は会社員が大半である。えんぶりに参加するから休ませてくれと願い出ても、なかなか許可しない事業主がいる。夏の三社大祭に参加している人間も、休みが多ければ、雇用打ち切りの対象とされることも考えられ、まじめに伝統を継承していく者にとっては、良い境遇だとはいえない。
★それぞれの行政において、地域の伝統芸能、町の伝統芸能としての位置づけがたりないように思われるので、今後、もっとPRに努めていただきたい。
★私達の保存会では、各方面から一切助成を受けておらず、わずかな出演料(1回2〜3万円程度)で活動しています。しかし、1回当たり出演する子どもとスタッフ合わせて20〜25名となり、出演料が弁当代で消えてしまい、用具までなかなかお金が回りません。場合によっては出演料がないものもあり、大人の会員の個人負担となって厳しい状況です。
★烏帽子の新調費用をいただきありがたいと思っているが、製作するのに対して国(文化庁)50%、県(教育委員会)25%、市(教育委員会)7.5%、所有者(管理団体)17.5%として製作したが、今の時代に、20年以上も使える烏帽子を作ってもらうと、15〜20万円くらいする。3体作ると45〜60万円はするのに対し、補助金は1体10万円として、3体で30万円しか出ない。よいものを作ると個人負担が大きくなる。
★伝承活動の基本は、祖先の心を受け継ぐ人の心の問題であり、それは教育にある。伝承文化の重要性、古き良きものを見直す文化の醸成を受け継ぐことにあると考える。その中心となるリーダーへの地域の理解、また、そのような人たちにスポットをあてる視点、助成の仕方、あるいは発表する機会の確保、そして、相互交流する場が必要。皆、自分達の活動に誇りと使命を持っている。各自持っている文化芸能が、歴史はどうあれ、格調がどうあれ、受け継ぐという価値観には、なんら差はないと信じる。
・・・・・・・・・・・・
これは青森県内の様々な保存会から寄せられている「生の声」です。このような保存会の実態をはじめて耳にするという方も多いと思います。
青森県民でありながら、地元青森県の伝統芸能についての理解は、必ずしも高いとはいえないように思われます。 各保存会では、人材・財源などいろいろな問題をかかえながらも、現在、懸命に保存継承活動に尽力しています。こういった日ごろの活動、そして芸能自体を理解してほしいと願っている保存会は少なくありません。
しかし、ほとんどの青森県民が、このような青森県の保存会の実態を耳にする機会がないのが現状であり、こうした中、次々と活動が困難な課題にぶつかり、なかには、活動の休止に追い込まれようとしている団体もあるということです。
芸能保存は、まず、こうした各保存会の実態を理解することから始まるといわれています。この理解の上に立ち、地元の芸能の存続について考えることができるともいわれています。
そのためのたいへん素晴らしい資料を、青森県
教育庁
文化財保護課より提供されましたので、明日より、こちらに掲載していくことといたします。
芸能の保存は、今が正念場。衰退と発展の分岐点だといわれています。 多くの方がこういった状況の知識を共有し、共に考えていくという土壌が醸成されれば、事態は好転に向かうように思われます。そのための情報発信が、当協会の一つの役割でもあります。
(詳細は明日より)
|
(249)青森県の伝統文化団体 その2
| 2004年 6月16日(水) |
青森県全体の伝統芸能・保存会の状況です。このように全体を眺める機会はあまりないと思われます。 まずは、お住まいの地域から、そして次に、なじみの深い市町村へと目を移し、青森県全体の様子を順にご覧いただければと存じます。
まだあまり、ゼロという数字の市町村は多くないようですが、気になるのは数字「1」の地域。これが、今後どうなっていくのか。気になるところです。
・・・・・・・・・・・・・
資料提供 青森県教育庁文化財保護課(平成13年度調査資料から)
【下北地域】
●むつ市・・(17団体・18芸能)
●川内町・・(14団体・14芸能)
●大畑町・・(9団体・9芸能)
●大間町・・(14団体・17芸能)
●東通村・・(36団体・36芸能)
●風間浦村・(8団体・8芸能)
●佐井村・・(11団体・25芸能)
●脇野沢村・(10団体・13芸能)
◆小計・・・(119団体・140芸能)
◆対県比・・(27.4% ・29.7%)
【東青地域】
●青森市・・(6団体・6芸能)
●平内町・・(17団体・19芸能)
●蟹田町・・(1団体・1芸能)
●今別町・・(3団体・3芸能)
●蓬田村・・(0団体・0芸能)
●平舘村・・(1団体・1芸能)
●三厩村・・(2団体・2芸能)
◆小計・・・(30団体・32芸能)
◆対県比・・(6.9% ・6.8%)
【中弘南黒地域】
●弘前市・・(13団体・13芸能)
●黒石市・・(3団体・3芸能)
●岩木町・・(5団体・5芸能)
●相馬村・・(4団体・5芸能)
●西目屋村・(1団体・1芸能)
●藤崎町・・(2団体・3芸能)
●大鰐町・・(3団体・3芸能)
●尾上町・・(1団体・4芸能)
●浪岡町・・(3団体・3芸能)
●平賀町・・(8団体・8芸能)
●常盤村・・(5団体・5芸能)
●田舎館村・(1団体・1芸能)
●碇ヶ関村・(2団体・2芸能)
◆小計・・・(51団体・56芸能)
◆対県比・・(11.8%・11.9%)
【西北五地域】
●五所川原市・(3団体・3芸能)
●鯵ヶ沢町・・(3団体・4芸能)
●木造町・・・(5団体・5芸能)
●深浦町・・・(8団体・8芸能)
●森田村・・・(1団体・1芸能)
●岩崎村・・・(5団体・7芸能)
●柏村・・・・(0団体・0芸能)
●稲垣村・・・(1団体・1芸能)
●車力村・・・(1団体・1芸能)
●板柳町・・・(2団体・2芸能)
●金木町・・・(2団体・2芸能)
●中里町・・・(1団体・1芸能)
●鶴田町・・・(4団体・4芸能)
●市浦村・・・(3団体・3芸能)
●小泊村・・・(3団体・3芸能)
◆小計・・・・(42団体・45芸能)
◆対県比・・・(9.7% ・9.6%)
【上十三地域】
●十和田市・・(13団体・13芸能)
●三沢市・・・(10団体・10芸能)
●野辺地町・・(5団体・5芸能)
●七戸町・・・(9団体・9芸能)
●百石町・・・(5団体・5芸能)
●十和田湖町・(3団体・3芸能)
●六戸町・・・(4団体・4芸能)
●横浜町・・・(13団体・13芸能)
●上北町・・・(7団体・7芸能)
●東北町・・・(5団体・5芸能)
●天間林村・・(6団体・6芸能)
●下田町・・・(3団体・3芸能)
●六ヶ所村・・(12団体・12芸能)
◆小計・・・・(95団体・95芸能)
◆対県比・・・(21.9%・20.2%)
【三八地域】
●八戸市・・(43団体・43芸能)
●三戸町・・(5団体・5芸能)
●五戸町・・(1団体・1芸能)
●田子町・・(4団体・4芸能)
●名川町・・(13団体・14芸能)
●南部町・・(6団体・7芸能)
●階上町・・(6団体・6芸能)
●福地村・・(1団体・1芸能)
●南郷村・・(7団体・7芸能)
●倉石村・・(5団体・5芸能)
●新郷村・・(6団体・10芸能)
◆小計・・・(97団体・103芸能)
◆対県比・・(22.4%・21.9%)
【県合計】 ◆434団体 ◆471芸能
(つづく)
|
(250)青森県の伝統文化団体 その3
| 2004年 6月17日(木) |
青森県全体の伝統芸能の保存会とそこでおこなわれている芸能の数は昨日触れたように下記のとおりでした。
【県合計】
◆434団体 ◆471芸能
上記団体、芸能に対し、平成13年11月に青森県教育庁文化財保護課によってアンケート形式の調査がおこなわれました。調査票の回収結果は次のとおりです。
●156団体(35.9%) ●167芸能(35.5%)
その詳細は下記のとおりとなります。
【下北地域・回収芸能別団体】
山車行事・・・・・・9団体
神楽、獅子舞・・・・8団体
歌舞伎・・・・・・・3団体
能舞(国指定以外)・・2団体
もちつき踊り・・・・2団体
その他・・・・・・・9団体
◆合計・・・・・・・・33団体
【東青地域・回収芸能団体】
獅子舞、獅子踊・・・7団体
山伏神楽・・・・・・3団体
南部駒踊・・・・・・1団体
その他・・・・・・・5団体
◆合計・・・・・・・・16団体
【中弘南黒地域・回収芸能団体】
獅子舞、獅子踊・・・8団体
津軽神楽・・・・・・1団体
その他・・・・・・・4団体
◆合計・・・・・・・・13団体
【西北五地域・回収芸能団体】
獅子舞、獅子踊・・・8団体
その他・・・・・・・8団体
◆合計・・・・・・・・16団体
【上十三地域・回収芸能団体】
山伏神楽・・・・・・15団体
南部駒踊・・・・・・3団体
鶏舞・・・・・・・・2団体
その他・・・・・・・10団体
◆合計・・・・・・・・30団体
【三八地域・回収芸能団体】
山伏神楽・・・・・・14団体
南部駒踊・・・・・・3団体
鶏舞・・・・・・・・3団体
その他・・・・・・・28団体
◆合計・・・・・・・・48団体
各地域での芸能の特色が上記の結果からうかがわれます。これらの団体から得られた細かなアンケート結果が出されており、それは、青森県の伝統芸能が置かれている現状を理解・把握するのに非常に貴重な情報を提供しています。
明日から順にそれらを掲示してまいります。
(つづく)
|
(251)青森県の伝統文化団体 その4
| 2004年 6月18日(金) |
保存会の代表者(会長)の年齢について示します。
50代の会長がもっとも多く、70代以上の会長も4人に1人ということです。 上十三地区は4割以上が70代の会長です。
「教えたくても体が動かない」という声をよく耳にしますが、こうした指導者層の高齢化が以下のデータに如実に表れています。
【回収された総数156団体に対する結果】
資料提供 青森県教育庁文化財保護課 平成13年調査より
◆下北 30代(6.1%)
40代(27.3%)
50代(30.3%)
60代(15.2%)
70代(21.2%)
80代(0%)
◆東青 30代(6.3%)
40代(12.5%)
50代(37.5%)
60代(18.8%)
70代(18.8%)
80代(0%)
◆中弘南黒 30代(7.7%)
40代(7.7%)
50代(15.4%)
60代(23.1%)
70代(23.1%)
80代(7.7%)
無 (15.4%)
◆西北五 30代(12.5%)
40代(25.0%)
50代(6.3%)
60代(37.5%)
70代(12.5%)
80代(6.3%)
◆上十三 30代(0%)
40代(10.0%)
50代(20.0%)
60代(20.0%)
70代(43.3%)
80代(6.7%)
◆三八 30代(2.1%)
40代(16.7%)
50代(25.0%)
60代(16.7%)
70代(27.1%)
80代(4.2%)
無 (8.3%)
●青森県総合 30代(4.5%)
40代(17.3%)
50代(23.7%)
60代(19.9%)
70代(26.3%)
80代(3.8%)
無 (4.5%)
・・・・・・・・・・・・・・・
明日はもっと踏み込んで、保存会の会員数と年齢構成の細かい点について、ご報告させていただきます。
(つづく)
|
(252)青森県の伝統文化団体 その5
| 2004年 6月19日(土) |
保存会の会員数と年齢構成です。
会員の年齢構成は40代〜50代が主な伝承者となっています。また、60代・70代の伝承者もほぼ3割近くになっており、団体によっては、50代以上だけで成り立っている団体もあるそうです。
諸団体の高齢化が顕著であり、後継者難、継承・保存活動の危機的な状況が、こうしたデータから明確にわかります。 今、方策を講じないと、多くのふるさとの芸能が消えていくことになるのかもしれません。
【回収された総数156団体に対する結果】
資料提供 青森県教育庁文化財保護課 平成13年調査より
■下北 10代(147人 7.2%)
20代(281人 13.7%)
30代(296人 14.5%)
40代(428人 20.9%)
50代(404人 19.8%)
60代(304人 14.9%)
70代以上(185人 9.0%)
合計 2,045人(県内全体での割合は51.3%)
■東青 10代(18人 4.8%)
20代(20人 5.3%)
30代(56人 14.8%)
40代(113人 29.9%)
50代(99人 26.2%)
60代(45人 11.9%)
70代以上(27人 7.1%)
合計 378人(県内全体での割合は9.5%)
■中弘南黒 10代(23人 9.0%)
20代(12人 4.7%)
30代(20人 7.8%)
40代(50人 19.5%)
50代(55人 21.5%)
60代(63人 24.6%)
70代以上(33人 12.9%)
合計 256人(県内全体での割合は6.4%)
■西北五 10代(0人 0%)
20代(3人 0.6%)
30代(113人 24.3%)
40代(72人 15.5%)
50代(90人 19.4%)
60代(110人 23.7%)
70代以上(77人 16.6%)
合計 465人(県内全体での割合は11.7%)
■上十三 10代(52人 12.8%)
20代(32人 7.9%)
30代(25人 6.2%)
40代(76人 18.8%)
50代(119人 29.4%)
60代(68人 16.8%)
70代以上(33人 8.1%)
合計 405人(県内全体での割合は10.2%)
■三八 10代(14人 3.2%)
20代(23人 5.3%)
30代(64人 14.7%)
40代(106人 24.4%)
50代(93人 21.4%)
60代(93人 21.4%)
70代以上(41人 9.4%)
合計 434人(県内全体での割合は10.9%)
◆青森県総計 10代(254人 6.4%)
20代(371人 9.3%)
30代(574人 14.4%)
40代(845人 21.2%)
50代(860人 21.6%)
60代(683人 17.1%)
70代以上(396人 9.9%)
合計 3,983人
・・・・・・・・・・ (つづく)
|