青森県音楽資料保存協会

事務局日記バックナンバー

<2010年8月>

(834)小倉尚継 論述集 その5
(835)小倉尚継 論述集 その6
(836)小倉尚継 論述集 その7
(837)小倉尚継 論述集 その8
 
(834)小倉尚継 論述集 その5 2010年 8月 7日(土)
 【広島全国大会金賞の秘密 その3】


 さて、自由曲はコダーイのピュンケシュデレ(聖霊降臨の村祭り)で、千変万化の長い曲です。しかし、先輩達も私もこの曲は大好きです。もともと、福島西女子高が全国大会で歌い、その学校の五十嵐先生からいただいた曲ですから、福島の演奏を越えることが恩返しになります。そこで2(※「広島全国大会金賞の秘密 その1」を参照)に掲げた両極を極めることが必要になるのです。

 強弱の対比、レガートとマルカートの対比を明確にするのです。あいまいでは審査員が飽きて、県大会の二の舞です。

 これも2週間ぐらいで効果が出てきました。青森のねぶたや夜宮のようなにぎわいを表現したり、ハーモニーや掛け合いの妙が美しく、背筋がゾクッとすることがありました。ひょっとすると東北大会トップ?と思ったりもしたものでした。



 ◆「この程度でいいか」ではだめ◆


 東北大会は福島市で、見事に金賞に輝きましたが、美しく個性的な演奏が出来ました。

 続いて全国大会です。これまで経験した2度の全国大会では、この程度で金賞をもらえるだろうと思っていると銅賞止まりでした。

 金を狙うためには、「この程度」以上のものを作っておかなければいけないのです。

 そして又、アンサンブル方式が続き、部員は見事に応えてくれました。グループ練習が上達した後、全員で合わせてみると格段の進歩が見られるのです。この方式で個人の技量が磨かれ責任感が強くなってきたためで、全国大会が待ち遠しくなりました。


 (つづく)
 
(835)小倉尚継 論述集 その6 2010年 8月14日(土)
 【広島全国大会金賞の秘密 その4】


 さて、いよいよ全国大会です。

 広島市に宿泊し、大会前日の公民館での練習では、その素晴らしさに何度も涙が出そうでした。声が美しく張りがあり、陰影が濃くリズム感が生き生きとして、これまで聴いたこともない最高の演奏でした。広島まで来て、こんなにうまく歌えるとは本校生徒も大したものだと、一人一人頭をなでてあげたい思いで大きな期待を抱きました。

 ところが翌朝のNHKホールでの練習では、反響防止壁のためか精彩がなく、がっかりしてしまいました。

 そして待った無しで会場へ。会場は広島県立体育館で、リハーサル室もいたって粗末なものでした。

 先に入っている鹿児島女子高のリハーサルが聞こえてきます。課題曲は本校と同じです。それがとても歌いづらそうに聞こえるのです。(あの実力のある鹿児島女子でもこの曲をもてあましている。こりゃぁ、本校の方が遥かに上だぞ)その時はそう思い、自信が湧き、夢の金賞がちらつきました。

 本校の直前リハーサルは、朝のNHKホールとは違って生き生きし、声にも潤いが出て、とても好調でした。大きな期待を持ったまま、ステージへあがりました。


 (つづく)
 
(836)小倉尚継 論述集 その7 2010年 8月21日(土)
 【広島全国大会金賞の秘密 その5】


 本番の演奏は快適そのもの、指揮者の思うまま。生き物のように自在にステージ上を駆け回ったという演奏でした。

 課題曲はいとも易々と、いかにも歌いやすそうに甘く美しく歌い、余裕綽々です。曲間では空を行く飛行機の音がかすかに聞き取れるほどでした。

 自由曲は練習の通り、最後は少し音が上がって終わりましたが、あの長い曲を少しも疲れを感じさせず、生き生きと歌い切ったのです。遠田部長の独唱も落ち着いてりっぱでした。合唱のあの迫力、あの繊細さ、あの美しさ、あのスタミナ、あのフレーズ感、あの知性・・・・・。フォルテで歌い終わった時のあの快い残響、そして拍手。

 県大会から3ヶ月足らずで見事に変身した76人の乙女達に、間もなく全国大会金賞の発表がなされたのでした。


 (つづく)
 
(837)小倉尚継 論述集 その8 2010年 8月29日(日)
 【広島全国大会金賞の秘密 その6】


 広島県立体育館の前で、指揮者の体は5回も宙に舞いました。

 偶然に西高生を見かけたという広島在住の卒業生が応援に来てくださいました。ケーキも届けられました。何もかもいいことずくめで、みんなの顔に喜びと涙があふれました。広島市はすべて金色に輝いて見えました。

 高レベルの演奏を成し遂げた76人の西高乙女達は、この日、特別美しく大きく見えました。

 あれから20年以上経っているのに、青森県津軽地方の高校金賞はまだありません。

 青森県内高校通算での金賞は、弘前中央高が1、青森西高が1、八戸東高が7となり、いかに八戸東高が秀でているか、しかし、全国金賞がいかに難しいかがお分かりでしょう。

 福島県は毎年複数校が金賞を受けているのです。その人達も又、他校より高い目標を掲げ、他校より多く厳しい練習を積んでいるのです。

 青森市内でも全国金賞の朗報の早く聞けることを、みんなで願いましょう。


 (つづく)


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