青森県音楽資料保存協会

事務局日記バックナンバー

<2011年2月>

(860)小倉尚継 論述集 その31
(861)小倉尚継 論述集 その32
(862)小倉尚継 論述集 その33
(863)小倉尚継 論述集 その34
 
(860)小倉尚継 論述集 その31 2011年 2月 6日(日)
 【自己表現を育てる合唱指導 その5】


 ●作曲者の立場で


 昭和63年度NHK全国学校音楽コンクール全国大会で、またしても八戸市立根城中学校が金賞を獲得、自由曲は私の「あいや節幻想曲」でした。


 この曲は津軽民謡あいや節の持つ、もの凄いエネルギーの躍動感と郷愁を基調とし、暗く沈んだ出稼ぎ事故、それを振り払うネブタ囃子の爆発を織りまぜたものです。

 根城中の生徒達は、この曲を実に見事に歌い上げてくれたのでした。


 まっすぐで洗練された歌声と、野性的なかけ声との使い分けがすばらしいのです。美しさに凄みが加わった合唱と言ってもよいでしょう。

 こんな表現をしてくださる先生と生徒のみなさんに、脱帽し感謝しなければいけません。あの歌唱力は研ぎ澄まされた表現力と言ってもよいと思います。


 (つづく)
 
(861)小倉尚継 論述集 その32 2011年 2月14日(月)
 【自己表現を育てる合唱指導 その6】

 ◆そのA 表現力を育てる


 ●美しい表現の要素
 (1)陽と陰


 音楽は、にぎやかなばかりでは美しくありません。
 静かなばかりでも満足できないでしょう。日常生活と同じで「動と静」、あるいは自然の地形と同じで「山と谷」、いうなれば「陽と陰」の入り混じったところに深い美しさ、合唱の命を感じ取ることができます。

 「陰影の濃い演奏」と言いかえることもできますが、単純な2部合唱でも斉唱でも、美しく表現できる大切な要素です。

 充実したフレーズ感とかブレスのつなぎにもかかわってきますが、高校生にとってもごく簡単に理解でき、育てることができます。


 (つづく)
 
(862)小倉尚継 論述集 その33 2011年 2月20日(日)
 【自己表現を育てる合唱指導 その7】

 ◆そのA 表現力を育てる


 ●美しい表現の要素
 (2)美しさの強調


 一曲の合唱曲の中に、必ず特に美しい部分があるはずです。

 強いところ静かなところ、和音の変わり目、リズム型の変わり目など、どこかにその部分を見つけ出しましょう。

 美しい部分は誰しも長く聴いていたいものです。

 逆効果でない限り、その部分を強調して聴かせましょう。

 実時間は長くできない場合でも、心理的に長く聴かせる工夫をしたいものです。どこがそのポイントか、生徒達はいち早くそれを発見してくれるでしょう。

その発見は表現のすぐ隣にあるものです。




 (つづく)
 
(863)小倉尚継 論述集 その34 2011年 2月27日(日)
 【自己表現を育てる合唱指導 その8】

 ◆そのA 表現力を育てる

 ●美しい表現の要素

 (3)色つき発声

 「歌は小さなドラマである」とはよく言ったもので、ドラマを表現するために様々な声を使ってみましょう。

 白黒映画から天然色映画に変わった、あの時代の衝撃には及ばないにしても、声質の変化によって、合唱表現の幅は確実に広がります。

 演奏会やコンクール批評でも、しばしば似たようなことに出会いますが、自信に満ちたff、暖かく包み込むようなmf、吸い込まれそうになるp、泣いてしまいそうなppなど、その場面に応じた色を考えることはとても楽しく必要なことです。

 前述(「小倉尚継論述集その30・31」を参照)の「聖霊降臨の村祭り」や「あいや節幻想曲」では、この色の付いた発声を活用した演奏だったと思っています。


 (つづく)


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