(876)小倉尚継 論述集 その47 |
2012年 6月11日(月) |
【アンサンブルをつくる 〜 良い音を選ぶ耳や心の働きを育てる その5】
(音楽の友社・教育音楽中高版、昭和60年4月号)
アンサンブル指導の実際
(b)弱声部分に時間を
グループでも全体でも、弱声によるアンサンブルは難しい。
音曇りや音くずれは、どなたでも経験済みのこと。
したがって、この弱声部分に十分時間をかけておきたい。
ピアニッシモはそれ自体美しいばかりでなく、前後の輝かしいフォルテの引き立て役でもあるのだから。
もしも、1人か2人、生まれながらの嗄声(させい)の生徒がいたら、その生徒を含めて何人かにハミングで応援してもらう。
嗄声でなくても全体が澄まないとき、ハミングをミックスした弱声は美しく響くはず。
(つづく)
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(877)小倉尚継 論述集 その48 |
2012年 6月15日(金) |
【アンサンブルをつくる 〜 良い音を選ぶ耳や心の働きを育てる その6】
(音楽の友社・教育音楽中高版、昭和60年4月号)
アンサンブル指導の実際
(c) 練習は無伴奏で
前述の少人数分散方式にしろ弱声練習にしろ、無伴奏での練習は最も効果的である。
響いている和音を引き延ばして聴くことも、速度をあげて次へ進むことも自由であり、何よりも歌声を吟味して聴けることは、無伴奏の最も良しとするところである。
伴奏付きの曲で、すばらしく和音がきれいに決まる弱声部分があれば、是非伴奏をとって聴きあうことが必要で、やがて伴奏の音が邪魔になり、必然的に弱く弾いてくれるよう伴奏者に要望することになる。
これぞアンサンブルの神髄である。
(つづく)
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(878)小倉尚継 論述集 その49 |
2012年 6月17日(日) |
【アンサンブルをつくる 〜 良い音を選ぶ耳や心の働きを育てる その7】
(音楽の友社・教育音楽中高版、昭和60年4月号)
アンサンブル指導の実際
(d) 知的共通理解を
合唱団員が指揮者の指示に必然性を持って従えるよう、両者は楽曲に対し知的共通理解を持っていた方がよい。
たとえば、自分のパートは曲中のどんな役割を持つのか、何を歌おうとしているのか。
歌詞の内容や構成上から見て、強弱・明暗・軽重はどうあるべきなのか。
外国語で難解な詩であっても、その匂いがわかるように歌うには、どんな声がよいのか、作曲者の心の動きはどうであったのか。
最大の聴かせ所はどこなのか等々、可能な限り、歌い手と指揮者は心を通じさせておいた方がよい。
(つづく)
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(879)小倉尚継 論述集 その50 |
2012年 6月25日(月) |
【アンサンブルをつくる 〜 良い音を選ぶ耳や心の働きを育てる その8】
(音楽の友社・教育音楽中高版、昭和60年4月号)
おわりに
指揮者はもちろん、歌い手の方にも美意識と歌心と勤勉さが必要である。
この三者が健全である限り、バランスのとれたすばらしい演奏が出来るはずである。
また、演奏は第二の創造と言われるごとく、かなり独創的な解釈も許されるはずで、アンサンブルのまとめ方も、発声法と同様、その合唱団独自のカラーでおし進めるべきである。
ピアノ伴奏者は、詩の内容を良く理解し、音色や曲趣を工夫することにより、合唱とのアンサンブルが密になる。
なお、アンサンブル練習のための教材は特別に用意する必要はなく、演奏会やコンクールのための曲の一部を活用するのが最も実用的である。
では、幻が幻のままで終わらないよう、明日からまた練習を続けることにしよう。
(つづく)
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