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九 |
| 「ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 地響きのようなうめき声と共にフォルト(カイト)の体は巨大化し、髪の色も赤からどす黒い色へ、肌の色もダークエルフのように黒ずんでいく。それと同時にフォルトの体から白い眩い宝珠が出て行く。 あの宝珠はもしかしたらカイトの魂??? しゅうしゅうしゅう… 体のいたるところから白煙が上がり、フォルトの焦点が合っていない状態で立ち尽くす。一方俺たちは何も手出しができない状態で途方にくれる。 その瞬間、威輝さん達の間に何かがかすめ、それは一気にフォルトに襲い掛かる!! 「?!」 その襲い掛かるものは電柱だった。恐らく、下の廃墟から引っこ抜いたものであろう…。 その軌道を辿ってみると、北都が構えて宙に浮いていた。 「ほぉ…。火竜王はどうやら誰とも入れ替えなかったようだな…。というか、器自体が入れ替えを拒否したようだのぉ…」 とシヴァさんは北都を見るなり、飄々と言ったのである。そのことは、威輝さんも気づいたようで北都に向かって静かに言った。 「新たな器よ。何故歴代の火竜王の力を拒む?」 「生憎、相棒でもない他人に力を借りるっていうのは好きではないのでね…。歴代の火竜王には悪いが、今回は俺なりのやり方でやらしてもらう」 と竜王に近づきながら、北都は説明した。その説明に威輝さんは不敵な笑みを浮かべ… 「そう…。ならばあなたの力見せてもらうわ!!」 そう言って一気にフォルトに攻撃を仕掛けてきたのである。しかし、向こうもその行動を読んでいたらしく、腕を横に振って、俺の体ごと威輝さんを吹っ飛ばす。俺の体は建物を巻き込んで遠くの方までふっ飛ばし、いくつもの建物を崩れさせた。それと同時に俺の体が微妙に痛い…。 ああああ〜〜〜〜〜…っ。俺の体なのにぃぃ〜〜〜〜〜〜…っ!! 「しょうがないだろうが…。今は威輝が乗っ取っているんだからどうしようもないぞ…」 と俺の心を見透かして、シヴァさんは呆れながら言った。 「で…でもぉ……」 「でもぉ…ぢゃない。こちらでもそれなりに作戦を立ててやらないと、あっちもへばるぞ…」 「はい…」 とシヴァさんの言葉に俺は言い返すこともできず、ただ返事するしかできなかった。 「ぐ…っ」 瓦礫の中から威輝さんは現れ、頭についた埃を頭を振って振り払い、再び飛んでフォルトに向かって攻撃をしかけようとする。それに待ったをかけたのはシヴァさんだった。 「待て!!威輝!!」 「なんでよ?!」 「そうがむしゃらに攻撃をしてては洸琉の体にある体力の方が先にへばるぞ!!それなりに作戦を立てねばあやつは倒せん!!」 「だったらどうしろっていうのよ!!」 「おまえと火竜王は敵の後方へ回り込み、『風神楽第八帖・歪(ひずみ)』を使い、肉薄にして攻撃しろ!!」 「そんだけで何とかなる?!」 「今はそれだけでいい、それが終わったらこちらから指示を出す!!」 ひゅがっ!! 「?!」 そう指示した矢先、フォルトが俺の体ごと再び吹き飛ばし、建物と衝突しまくり、その衝撃に耐えられない俺の体はみしみしっと音をたてた。そして、瓦礫の山に埋もれてしまう。それと、同時に俺の方にも痛みが伝わってきたので、思わず悲鳴をあげ、至る所から傷口が開き、鮮血がほとばしる。 「痛い痛い〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」 「落ち着けっ!!恐らく器とする体がリンクしたままだから本体に異常がくるとおまえにも痛みがくる!!」 と俺を落ち着かせようとするシヴァさんは傷口を抑えながら俺に言う。シヴァさんの服が、俺の鮮血でみるみるうちに紅く染まっていく。だけど、噴きだした血は止まろうとはしない。一方威輝さんが使っている俺の体の方も傷だらけの上、どこか骨折している様子。口から汚物を吐き出し、咳き込む。 「げほっげほっ」 威輝さんは咳き込み、吐ききると口元を拭い、傷口を塞ごうと回復魔法を施そうとする。しかし、それをまたしてもシヴァさんは俺の傷口を抑えながら制して止める。 「やめろ!!魔力を無駄に使うな!!」 「でもっ!!こうしなきゃこちらの体力がもたないっ!!」 「それこそ向こうの思う壺だ!!あちらの魔力体力共々底なしだぞ!!」 そう言っている間に今度はフォルトの髪が伸び、威輝さんを叩き潰す!! ごが…っ 「かは…っ」 とうとう吐血し、体が震えている。一方魂だけの存在である俺の方も異常をきたしていた。頭から血を流し始め、威輝さんと同様に吐血し、体もまた震えだす。 ガラ…ッ 瓦礫からかろうじて仰向けのまま息をしている威輝さん。なんとか体を起き上がらせるが、足が折れたようで前かがみにうつぶせになる。そして、再び吐血と体内に残っていたモノを戻し、体を震えさせる。 シヴァさんはそれを見て威輝さんに向かって声をかける。 「おいっ!!しっかりしろっ!!」 「あばら…腕まで……イっちゃってる……」 「げ…っ。マジかよ…」 「ていうか………もう体のどこがおかしいのか……わかんない……」 「せめて俺達の力がそちらの体に干渉できれば……」 と言っていると、フォルトは大声で叫びだした。すると、空中から人型の何かが十数体現れ、他の竜王たちに向かって襲い掛かる!! 「早く…いかなきゃ……皆が………」 動けない体で威輝さんは皆が戦っている様子を悔しそうに見つめている。 「このバカ足!!動け!!」 と威輝さんは叱咤するように俺の右足を叩く。 そこに敵の攻撃をかわしながら、北都がこっちにやってきた。 「天竜王!!大丈夫か?!」 そう言いながら、手をかざして回復魔法を唱える。 「………悪いな。俺が水竜王なら時間を巻き戻してこの体を傷つく前に巻き戻してあげるところなんだが……」 と申し訳なさそうに北都は術を唱えながら言った。しかし、向こうは回復させる暇さえくれなかった。次々に攻撃を仕掛けてくる。 「ちぃ…っ!!重力無圧(じゅうりょくむあつ)!!」 そう叫ぶなり、フォルトの攻撃は一切入ってこなくなった。 「?今の術は???」 「術じゃない。あれは重力神ならでは空間重力干渉方法。それなりの言霊を発すれば、勝手になる。 さ。早く手当てを…っ!!」 「洸琉の魂にもこの傷がいってるんだろ…???だったら尚更早く治してあげなくちゃ…」 「ゴメンね……」 と威輝さんは北都に向かって謝ったのである。すると、北都は首を横に振り 「あんたたちも昔はこうやって頑張ったんだろ?だから謝る必要はない。むしろ謝るならアレをさっさと倒したあとだ」 「うん。そうだね。 重力神。耳を貸して。うちの参謀が考えた作戦に荷担しなさい」 「内容によるな」 と苦笑しながら言う北都は威輝さんに耳を貸す。威輝さんはごにょごにょと、先程シヴァさんが言った作戦の旨を伝えたのである。それを聞いた北都はにやっと不敵な笑みを浮かべ 「面白そうじゃないか。よしっ!!乗った!!」 あっさり作戦に参加したのである。しかし、その傷が癒えきえぬ間に人型の方が威輝さん達を見つけてしまい、攻撃を仕掛けてきた。 「重力神!!もういいっ!!骨折が治れば他は気力でなんとかする!!今はこいつらを!!」 「あいよ!!」 北都はそう叫ぶなり、刀を引き抜き敵に向かって切りつける!! しかし…… 「?!」 切りつけたあと北都は不思議そうなしかめっ面になり、敵に向かって振り返る。 「どうした?!」 「こいつら……変なんだよ……」 「変???」 北都の言葉に眉間にしわを寄せる威輝さんとシヴァさん。北都は少し後退しながら呟いた。 「こいつらに切った感覚が無いんだよ……」 『?!』 切った感覚が無い?! 「それって…っ!!」 「悪霊か…。はたまた俺達が知らない未知数の生き物か……。とりあえず剣は効かないってことだ…」 と剣を強く握り締め、悔しそうに奥歯を噛み締めて言った。 「てことは…他の二人もかなりの苦戦しているはず……」 そう言って上を見やっている間に向こうは攻撃を仕掛けてくる!! 「剣が効かないなら…!!これでどうだ!!」 そう叫びつつも、北都は目線だけ敵に移し、左手を振り上げ、押し迫る敵に向かって手を一気に足元までに降り下げると、重力で一気に敵を押し潰し、消し去る。 「おっしゃっ!!次は親玉だ!!」 そう言ってフォルトに向かって飛んでいくのであった。そのあとを怪我が完治しない威輝さんが追いかけていく。 |
| 続く→ |