たっ
 俺は軽く飛んで、車両と車両の溝を飛び越え、再び走る。目標は先頭車両にいる首謀者!!
 と行きたいところだけど、恐らく運転者室も警備がいるだろうからまずはそっちを潰すか…。確かこの車両は運転車両と先頭車両の入口は違っていたはず…。先頭車両には一体誰がいるんだ?
 先頭車両は金持ちの人が乗る特別室が数多い。俺たち王室も静養のために電車を乗るときはこの車両をよく使うが…。
 この車両にそれ相応の人物が乗っているのだろうか…???
 まあ。このご時世静養してもおかしくないか…。
 そう思いながら、俺は運転車両を目指すが、目の前が運転車両だと思った矢先に、ぴたっと前に進むのを辞めた。
 おかしい…。こんなに上で歩いている音をたてているのに、敵が誰一人でてこない。これは、よほど向こうは鷹を括って気づいてないだけなのか、それとも気づいているけど自分の敵ではないと判断しているのか…。
 ぱきぃぃぃんっ
「?!」
 俺のすぐ後ろが急に何かが飛んだ音が聞こえた後ろを振り返ってみると、銃弾が下から上に突き破ろうとしていたが、途中で止まり、天井にめり込んでいた。
 どうやら、向こうも俺の存在に気づいているようだ。やはり、残虐テロリストと異名を持つレジスタンスの首謀者だな。
 そう思いつつ、俺はさっさと運転車両に乗り込むことにした。



 天井から突き抜けている非常用はしごを使って降りて行き、車両に乗り込もうとするが…。
「はぁ〜い♪可愛いバニーちゃぁ〜ん♪」
 と入るなり、銃を構えてテロリストが二人待ち構えたいのである。
 ちぃ…っ。もう連絡が回ったか…。連絡手段はいち早く伝わるようだな…。
「さあ、バニーちゃん。俺たちも人殺しをしたくはないんだ。大人しく武器を捨てな」
「イヤだって言ったら?」
「そりゃあ…残念だがあの世に逝ってもらう事になるなぁ…。こんなまだ若い子を殺すのは惜しいけどなぁ…」
「武器を捨てたって殺そうとしてるくせにねっ!!」
 俺はそう言いながらしゃがみこみ、相手の懐に入ると、一気に蹴り上げ銃を奪い取る!!もう一方の方も銃を構えて打とうとするが、こちらの方が動きが早く、銃を構えて相手の左肩を狙って打つと、見事左肩に命中して、苦痛の声を洩らしながら座り込む。蹴り上げた方は当たり方が悪かったようで、その場に崩れて動かない。
「ふぅ…。見張りは片付けた。あとは…首謀者の先頭車両と、運転車両の残りか…」
 ぴりりりりり…っ
 そう呟いていると、俺の端末手帳の通信着信音が鳴る。
「はい」
「よう。そっちはどうだ???」
「今運転車両のところに入口にいるところ。向こうの連絡手段は早いからもう俺たちが暴れているのがバレている可能性がある。そっちは???」
「ああ。今のところ先頭車両を除く車両は全て開放した」
「そっか。じゃあ、車両伝いでいいから、援護お願い。さすがに一人は辛いもん」
「了解」
 そう言って北都は通信を切った。俺もまた、通信手帳を閉じてポシェットの中にしまった。そして、警戒しながら、先頭車両のドアを開けた。開いた先には短いが通路が広がっていた。
 誰もいない…か。
 しかし、警戒は怠ってはいられない。俺は背伸びをして、ドアの小窓から中の様子を伺う。もちろん近づきすぎると、センサーが反応して開いちゃうので、少しはなれたところからだけど…。
 見張り役が2人かぁ…。外にいたあいつらを合わしても、意外に多いな…。
 そう思いながら俺は背伸びをするのをやめ、ポシェットの中をあさる。そして、ゴーグルを出し、目に装着させる。このゴーグルは赤外線センサーをというか、全てのセンサーを映し出すことができる優れもの。今のところ出入り口付近にはクモの巣のようにセンサーが張り巡らされているな…。これを通り抜けるのは容易じゃない。だから――――…。
 俺はセンサーが張り巡らされている手前の右壁に目をやった。そこには、センサーを設定する機械が設置してあった。俺は忍び足でその機械に近づき、解除コードを入力という項目を選び、画面を出した。
 え〜〜〜…っと、このタイプのコードはぁ〜っと……。
 ピピピピッ ピピッ ピッ
 と俺は手馴れた手つきで、テンキーを押していく。
 王族がこーゆーのに慣れているのっていうのも別の意味で凄いかもしれない…。
 ビーッ
 そう思っている矢先、警告音が鳴り出した。どうやら、俺が入力したコードは間違っていたらしい。
 あれぇ…。これじゃないとするとこっちかぁ〜〜〜〜〜〜〜???
 ピピピッ ピピピッ ピッ
 俺は再びテンキーを押して、解除コードを入力すると―――。
 ピー―――――ッ
 お。今回は当たりっぽいな。この車両はちょっと古い型なんだなぁ…。おかげで最新版の解除コード入れちゃったよ…。
 俺はドアを見ると、赤い赤外線がみるみるうちに消えていく。その矢先、先頭車両から人の気配がしてきた。
 マズイ…っ!!仲間か?!
 俺は慌てて、ぴょんっと飛んで、天井にへばりついた。そのタイミングを合わせるかのように、テロリストの一人が銃を携えてのこのこと入ってきた。
 お〜っし。こいつが運転車両に乗り込もうとした矢先に――――。
 そう考えているうちに、テロリストの一人が早速入ろうとしていたので、俺は天井にあった鉄の棒を軸にして鉄棒から飛び降りる体勢で、一気にテロリスト共々ドアを蹴り破る!!
「どぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
『?!』
 テロリストは俺の蹴りの衝撃でのびていた。そして、中にいた残りのテロリスト三人はいきなりのことだったらしく、目が点になってぽかんっとなっていた。
 え〜〜〜〜〜っと…。こーゆー場合は…。
「正義の味方、登場っす!!」
 と半分苦し紛れというかいっぱいいっぱいで、俺は気どってみた。すると、テロリストは我に返って、銃を構える。しかし、そのときに運転手までもテロリストだとは思ってもみなかった。しかし、もう一方の運転手はテロリストではないようである。ただ、恐ろしくて、恐怖心からなる震えが止まらない。
 俺はゆっくりと目をつぶった。
 こーゆーことは不本意だけど…。
「よぉよぉ。ボウス!!勢いよく入ってきた割には、腰を抜かしたのかい???」
 と、俺が目をつぶるなり、テロリストは優位に立ったようにいばってくる。
「そう言ってられるのはいつまでかな???」
『な゛っ?!』
「風神楽第四帖・繋」
 ひゅおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!
 俺が呟いた途端、テロリストたちが持っていた銃はいっせいに俺の手に集まったのである。その行動にテロリストは状況がつかめず、パニックに陥る。その隙を狙って、俺はテロリスト全員を蹴り飛ばして、気絶させたのである。
 そして、俺は震えている運転手に向かって、ぽんっと肩を叩き、
「もう大丈夫だよ。あとは俺たちに任せて」
「は…はい…っ!!」
「あなたは安全運転で無事にティーラまで送り届けて欲しい」
「分かりました。任せてください…」
 とまだ恐怖から立ち直っていないようで震えたまま運転手は答えた。
 さぁて…こいつらが復活しないうちにボスを倒しに行った方がいいかもね…。
 と思った矢先――――
 ばきべきぼきがきっ!!
『?!』
 突然先頭車両のドアが凄まじい音と共に剥れ飛んでいった。そして、そこに現れたのは俺の背丈の倍はありそうな褐色の肌の巨漢が仁王立ちになってこちらを睨みつけていた。頭はスキンヘッド。しかし、右手は義手のようだが、先端がロケットランチャーのような小型砲弾が装備されていた。
 まずいかもしれない…。
 俺は一歩下がろうとするが、これ以上下がると運転手がやられてしまう場合がある。しかし、向こうは睨みつけたままこちらに一歩一歩進んでくる。歩くたびに地面が揺れるのが実感できる。
「あんたがこのテロリストの首謀者?」
「そうだ。おまえが俺様の可愛い部下をぎったぎたにぶちのめした奴かぁ〜?!」
「そうだと言ったら…?」
「タウラの名のもとに成敗してくれる!!」
 と言うなり、いきなり俺に向かって、砲弾をぶちかましてきた。
 わわわわわわっ!!
「風神楽第一帖・弾(はじき)!!」
 と何故か勝手に言葉が出てくると、俺の周りにバリアならぬものが現れ、砲弾を弾き返す。そしてその砲弾は跳弾となり、運転車両の壁にめり込んだ。
 ふぅ…。間一髪…。
「おのれぇ…っ!!」
「へへ〜んだ!!銃なんて怖くないよ〜〜〜だ!!」
 と俺は挑発したのである。すると、向こうはその挑発にモロ乗ってきたのである。
 首謀者といっても意外に単純で短気なんだな…。
 俺は奴の行動を見てなんとなくなっとくしまったのであった。それを見て、向こうは更に起って、俺に向かって襲い掛かってこようとするが――――――――――
 ぼんっ
『?!』
 いきなり巨漢の男は炎に包まれ、倒れこんだ。そして、倒れこんだ奥から見覚えのある人物が手を上げて飄々と現れたのである。
「よぉ…」
「北都!!」
 そう、現れたのは俺の相棒北都だった。
「なんで、あいつを焼き殺すんだ!!」
 と俺は再会した早々、叫んだ。すると、北都は意外そうな表情で、俺に近づき後ろを親指で指して
「誰が焼き殺したって???」
「だから――――――――?!」
 俺は巨漢の男を見て驚いた。何故なら、炎に包まれた男の周りには炎が消え、男も呼吸は乱れているが、生きていた。
「これは――――――」
「空気中の酸素濃度を可燃物の周りで調整してぼんっとやっただけさ。いわゆるこけ脅しってやつ」
「なるほど。重力神・火竜王ならではの力だね」
「そゆこと」
 そう言っている間に、電車は予定より遅くティーラに着いたのであった。

 俺たちはテロリストたちを検非違使に渡し、ほっと一安心してると、俺たちの前に一人の女性が現れた。その女性は北都と同じ銀色の髪で、肩より少しぐらいのウエーブがかかっていて、少女らしいふわふわとした服を着ていた。ちまたでいう、か弱い少女という印象を受ける。その女性は北都を見つけるなり、物凄い嬉しそうな顔でこちらに駆け寄ってきた。
「北都ちゃん!!」
「げげげげっ?!」
 はい?!北都ちゃん?!この人は一体北都と何なんだ……???

 

続く→

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