瞳姐さんから呼び出され、俺は北都たちと一緒に仕方がなく天成帝がいる客室に向かった。
 客室ではすでに古代的な祈祷師や現代的な医者が我先にと天成帝を診ていた。
 俺はその光景を呆れながら見ていた。
 ……これで天成帝の信頼を得るには絶好のチャンスだからねぇ。
 そう思っていると天成帝と目が合ってしまった。
 向こうは俺と目が合うなり、だっぱ〜っと涙を流した。
「ひ…洸琉ぅ〜…」
「若いくせになんともざまあない姿だね、お父上。」
 俺は嫌味ったらしく言うと、天成帝は動揺をするどころか
「洸琉が私のことを父と呼んでくれたぁ〜」
 嫌味が通じず、天成帝は痛みは何のそので喜びに浸っていた。
 しかし、俺がその喜びをやすやすと見逃すわけがない。
 俺はしずしずと天成帝の元に近づき――
「ほれ」
 俺は足で天成帝の腰をちょんっと突いた。
 すると――
「うっぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 全身に痛みが走り、喜びも束の間、天成帝は悲鳴をあげた。
 ふっ。ささやかな恨みを晴らした。
「な…何するんだ?!」
 天成帝は痛みを抑えつつも俺に向かって叫んだ。俺は俺で嫌味ったらしく言い返した。
「別にぃ〜。父上のために少しでも楽なるようにさすってあげたんですよ。」
 そう言いつつ、俺はさらに天成帝の腰を突っついた。
「うぎ……こ…これ…さすってない………」
 俺の言葉に余計痛みが走ったのか、天成帝はうずくまった。
 それを見て、宰相は俺の元に近づくなり――
 ぱんっ!!
 宰相はなんの躊躇もなく俺の右頬を思いっきり引っ叩いた。
 それに対してその場にいた者全員が驚き、動きを止めて目を丸くする。
 俺もまた驚いた。しばらくして叩かれた頬の痛みがしびれるように伝わってきて俺は頬を抑えた。
「……っ。なにするだよ!!」
 俺は頬を抑えながら宰相に向かって吠えた。
 しかし宰相は冷静に反撃した。
「何を申すかと思えば、父上様が一大事だというのに父上様に対して何たる仕打ち。
 それが皇子としてやることですか?」
 冷静に言う宰相に俺は怒り任せに叫んだ。
「うるさいな!俺は別に好きでこいつとの間に生まれたんじゃないだからな!!おまえに傷ついた俺の気持ちがわかるもんか!!」
 しかし、宰相は冷静に言い返す。
「ええ、わかりませんわ。あなたの傷ついた気持ちはあなたにしか分からないことですもの。
 ですが、それはそれ。これはこれですわ。」
「全然関係ないね!!恨みは返せるときに返すのが俺のやり方だからな!!」
「では、仕方がないですね」
 そう言うと、宰相は俺に近づくと俺の首筋に一本の針を刺した。それと同時に睡魔が襲ってきた。
 宰相の奴針に睡眠薬を仕込んだな!!
『洸琉!!』
 北都たちが俺を心配して駆け寄ろうとするが―
「動かないで!!」
 宰相の気迫に押されて、北都たちは動きを止めた。
「く……っ。」
 俺は睡魔を消し去るため、武器ではなく自分の手で自分の体を傷付けようとすると、宰相が俺の手を抑えた。
 俺はもがくが、ビクともしない。
 こいつ見かけによらず腕力が強い。
「さ…宰相……」
 睡魔に襲われつつも俺は宰相を睨んだ。
 眠っちゃダメだ……。眠ったら……。
「この手だけは使いたくなかったんですが、仕方がありませんね。
 これからあなたは帝の過去へ行ってもらいます。
 どうして今のようになったのか、本当の真実をご自分の目で確かめてください。」
「な……に…?し…真実は…今のこの現状……だろ……」
「いいえ。あなたは表面しか見てませんわ。」
 ……ダレが………そんなことで……認めるか………。
 眠ってはダメ。武器がダメならかなり痛いけど術で起こすか
「……闇の夜に潜む雷鳴よ
 我の声の元
 汝の力今ここに現せ
……」
 呪文を唱え始めると、宰相は俺の呪文を聞いてはっと気づき――
「させませんわ!!
 全ての風の王よ
 我を守らんとすべく我の前に我を守る結界となせ!!

 宰相も呪文を唱え始めた。
 結界呪文!!こいつも魔導士か!!
 ぱしゅんっ!
 俺が召喚した強力な雷と風の結界が音を立てて相殺した。
 ちぃ…っ。
 俺は結局睡魔に負け、倒れるように眠りの世界に行った。
 もっと強ければ、こんな睡魔に負けることないのに………。

 

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