「………二人とも……なんであの時助けてくれなかったアルか?」
『……………………』
 森の中を突き進んでいる俺たちにジト目で文句を言ってくる白兎。
 しかし、俺たちは完璧無視!
「だいたい、あのウサギもウサギアル!
 あたしはあいつの面倒を見たことはあるが、保護者になった覚えがないアル!」
『……………………』
「一体どうしたらアレを始末すればいいアルぅ〜!!」
「だぁ〜っ!やっかましいわ!耳元でぶちぶち言うなっつーの!!」
 あまりにも白兎がうるさくて俺は我慢の限度が超えて叫んだ。
 さっきからぶちぶちとっ!だいたいあのデカウサギは元々あんたらの実験動物なんだから普通の動物と同じように飼い主の元に戻るのはあたりまえの行動だろーが!まぁ……あのデカさは普通じゃないけど……。
 白兎があのデカウサギに抱きつかれた後、何とか俺達二人掛りで助けたけど、なんとまぁあのデカウサギまでくっついてくる羽目となった。
 後ろでは一定の距離を保ってデカウサギが続いて来ている。
「しつこいね、あのウサギ。」
「しょうがないだろ。
 元はと言えば、白兎たち科学捜査班がやったことなんだし、俺達が口出せる範疇を越えてるよ。
 だいたい、俺達はあんたらから頼まれた時に高報酬だったから引き受けたんだからな。
 報酬がよくなかったら誰がこんな仕事受けるかって。」
「…………北都。言うようになったね。それが仇にならなきゃいいけど……。」
「言うに決まってるだろ.
 さっきからいいことなんてちーともないんだからな!!」
「むっ?!」
「変な魔導士には足止めされそうになるわ、ポスポスに追っかけまわされるわ、デカウサギに遭遇するわ、白兎といると必ずこういうことが起きるのがオチだからな。
 この間白兎と一緒に組んで仕事した時、科学捜査班の失敗作の怪物を倒す羽目になったし……。
 白兎が一緒だとイヤなことが必ず一回は起きるっていう事が今となってよ〜くわかったからな。」
 うわっ!本人の前でそこまで言う?!
 ズゴゴゴゴゴゴゴ………
 あ、後ろのほうでとてつもない殺気たたせてる人いるし……。そろそろ止めた方が…いいかなぁ〜……。
「北都そろそろ…………」
「だいたい今回のことだって白兎が一緒にいただけで……………」
「いい加減にするよろしぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」
 すぱぁぁぁぁぁっんっ!!
『あだっ?!』
 今まで黙っていた白兎がついにブチ切れ、俺と北都の頭に思いっきりハリセンで叩き倒す。
 俺達はあまりの痛さにその場で頭を抱えた。
 白兎はブチ切れると白衣の中に隠してあるハリセンでよく叩く。
 くっそ〜っ!俺の場合は単なるとばっちりなのにぃ〜!
「いくら北都の言葉に切れたからって俺まで叩かなくてもいいだろっ!」
「ああっ。洸琉の場合はただ単に近くにいたからついでネ。」
「ついでって……」
 サラリと言う白兎に俺は唖然となった。
「くっきゅるぅっ!」
 がばっちょっ!!
「のわアル?!」
 そこにデカウサギが再び白兎に飛びついてきて、、もがく白兎。
「いい加減に抱きつくなアル!」
 すぱぁぁぁぁぁんっ!!
 デカウサギに白兎のハリセンが炸裂する。
「くきゅうっ!」
「うわぁぁぁっ!」
 しかし、ハリセンの効果は全くナシ。デカウサギはちっとも離れようともしない。
 あ〜あ、何やってるんだか……。
「見つけましたよ!我らの敵!」
『?!』
 ザザザッ!
 どこからともなく声がすると思ったら、いきなり目の前に立っている太い木の枝の上で決めポーズをしている露玖那。
 お〜そーいえば、こんな奴らもいたねぇ〜。
「さーっ!大人しく観念しなさい!!」
「ところでさ……君……ダレだっけ?」
 こけけけっ!
 北都のナイスボケに木の上ですっコケる露玖那。
「だから、露玖那ですってばぁっ!覚えてくださいよ〜!!」
「だって……あんたら影薄いじゃん」
 ぐさっ!
 動揺もせずサラリと言った北都に決定的な致命傷の言葉は露玖那にモロ食らったらしく、木の幹に「の」の字を書いて暗くなっている。
「……確かにね………たった一回しか出てないし、大したコトもやってないさ。
 初登場の時だってしょっぱなから初級魔法に慌てふためいた挙句、作者に忘れ去られるしろくな事がなかったわよ。
 でも……ちょっとぐらい覚えてくれたっていいじゃない……。しくしく……めそめそ……」
 あ〜あ、完璧グレてるよ、コイツわ………。
「隙アリっ!!」
「?!」
 ぎぃぃぃぃんっ!!
 いきなり露玖那の背後から現れたフード野郎が俺に切りかかってきた。俺は腰に携えていた日本刀を引き抜き、なんとか奴の剣を受け止めた。
 こいついつの間に露玖那の背後にいたんだ?!
「ちぃっ!」
 奴は舌打ちをすると、後ろに飛んだ。
「洸琉!!」
「わかってるよっ!北都、他の敵の方任せたよ!」
 俺は大声で言うと刀を構えた。
 こいつ……かなりの剣闘士の使い手と見た。でなければ、気配を消していきなり切り付けることなんてできない。
 腕がしびれている……。さっき奴の剣を受け止めたのがまだ残っている。もしまた同じのが次ぎ来たら受け止めることも難しくなってくる。
 さて……どうするか……
「子供のくせにやるじゃないか。こんなに心が踊るのは久々だぜ。
 奴はそう言うと、フードつきのマントを脱ぎ捨てた。
 マントの下から現れたのは、逆立っている金髪にがっしりとした体格をした俺より二周り近くでかい男が現れた。
 両腰には剣が数本携えられ、胸当てやショルダーガードを身につけている。
「俺の名は孟螺!お見知りおきを…『疾風の天狼』殿。」
 こいつ…俺の別名知ってやがる。
「その名で呼ばれるなんて光栄だね。まさか、あんたらにもその名が広まっているとは思いもしなかったよ。」
「そうか……喜んでもらえてうれしいよ!!」
「うわっ?!」
 いきなり攻撃してきた孟螺に俺は大きく後ろに飛んでかわすことができた。それと同時に俺は呪文を唱え始める。
世界に集いし六つの紋の一つ氷の大精霊の長よ
 我が声に応え我を護り凍れ!

 術を放つと、俺の周りに俺を護るように氷の結界が現れる。
「ふざけた真似を!そんなもん俺の剣で叩き割ってくれるわ!!!」
 ごぎゃっ!!
「な゛っ?!
 孟螺は氷の結界に剣を振りかざすが、鈍い音を立てて剣が折れ、驚愕の声をあげる。
「ふふ〜んだ。この結界はそんじょそこらの結界とは違うのさ。」
 驚愕している孟螺に俺は結界の中で自慢げに言い、それと同時にぱちんっと指を鳴らし氷の結界を解除させると、氷の結界は音をたてて崩れていく。
 この氷の結界は氷系魔法の中では珍しい結界の役目を果たしている魔術である。ただし、この魔術は風系魔術との混合結界でもあり、かなりの高等魔術とも言える。分厚い氷を結界代わりにするからには相当な魔力の消耗を覚悟しておかなければならない。
 まぁ…上級の俺たちにはあんまり関係ないことだけど……。
「俺を魔法騎士だということを忘れられては困るなぁ。というわけで、今度はこっちから行くよっ!」
 俺はそう叫ぶと、孟螺に向かって攻撃を仕掛けたのだった。

 

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