俺達は這いつくばってでも北都から離れようとしない早百合をボコボコにど突き倒し、トンズラするかのように叉玖磨棟梁がいる棟梁室に逃げていった。
 ばぁんっ!!
『はぁー…っはぁー…っ』
 ドアを体で押さえつけ肩で息をする俺達。
「二人とも何やってるんだ?」
「……早百合が来た」
「は?」
 北都の言葉に叉玖磨棟梁は眉をひそめた。
「あの早百合が来たんです……」
「なにぃ?!」
 北都の言葉に叉玖磨棟梁は驚愕した。
 あれ?叉玖磨棟梁も知ってるの?
「あの極度のナルシストのオカマがきたのか?!」
 きょ…極度のナルシストぉ?!
 うわっ!!やだよ、俺。そいつと言葉交わすの。
「それはそうと幸夜さんもう来た?」
「な……なに……やってるんですか………?」
 …ってオイ。幸夜さん俺達が入ったとたん机の隅に隠れないでよ。
「罠のほうはどうなったの?」
 ドアを抑えながら俺は叉玖磨棟梁に尋ねた。
「一応できたんだがな。仕掛け人がいなくて困っているんだ。」
 俺をじーっと見ながら叉玖磨棟梁は応えた。
 な…なんか…すっっごく、嫌な予感がするんだけど……。
「というわけで、洸琉。おまえが頑張れよ。」
 ってやっぱり俺かい!!
 俺の予想を見事的中させ、叉玖磨棟梁は俺の方をぽんっと叩いた。
「よ……よかったですね……父さん………仕掛け人が見つかって……」
「そうだな。いいタイミングに帰ってきてくれたよ。
 これでわしらも一安心じゃて。」
 呆然としている俺をよそに幸夜さんと叉玖磨棟梁は喜んでいた。。
 も…もーどーにでもして………。
 失神寸前の俺にとどめの一撃をしたのは俺の相棒の北都だった。
「こういう仕事こそおまえに合ってるよな。うん。」
 ひ…人事だと思って、何勝手に納得してんだよ!!
 そう思ったとき、幸夜さんが何かを思い出したように呟いた。
「あ……そうだ………。父さん、早百合の件はどうします……?
 …か……彼の行動には目に余るものがありますし……。だ……第一……彼がいたらこの計画はすべて水の泡ですよ………。」
 幸夜さんの言葉に叉玖磨棟梁は腕を組み考え込むと、
「こういうときは奴がゾッコンとなっている相手を泳がせば何とかなるだろ。」
「……ですね」
「棟梁…それってもしかして……」
「そ。おまえが早百合を相手するんだ。」
 ががぁ〜んっ!!
 叉玖磨棟梁のキッパリとした発言に北都はモロに衝撃を受け、へこんでしまった。
 へへ〜んっ。いい気味だね。よりにもよって早百合の相手をする羽目になるんてね。ぷぷぷっ。

 

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