EE MORGAN / INTRODUCING

TARDO HAMMER / TARDO'S TEMPO
TARDO HAMMER-p
DENNIS IRWIN-b
JIMMY WORMWORTH-ds
Sep 18 2003
SHARP NINE
1.LAST I SAW PARIS
2.I WAITED FOR YOU
3.RUSSIAN LULLABY
4.PHILLY TWIST
5.JORNEY TO LIECHTENSTEIN
6.MINOR MISHARP

7.VERY EARLY
8.LITTLE MAN
9.THELONIOUS
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  実は昨日、同僚のところに生まれたての赤ん坊を拝見しにいった。生まれてから暫く低体重ということで新生児室にいたから、面会に行ってもガラス越にしか逢えないと聞いていたので、じゃあ、母子ともに退院してからと思っていた。この手で抱っこして、あの何とも言えない匂いと肌の感触も含めて味わいたかったからだ。
 で、退院して2日目だったそうだが、お目にかかることができた。遭遇・・・というのが適当なのだろう。「初めまして」という言葉が自然と出た。彼女、そう彼女なのだが、にしても、何ものだという感じだったかも知れない。
 ともかく飽きることなく彼女の表情、動きを見させて貰った。とにかく色んな表情をするのに見とれて時間の経つのも忘れていたのだが、まさに百面相なのだなとあらためて思った。

 で、それより前に、テレビの美術関係の番組で、法隆寺(いや正倉院だったかな)の所蔵する仏像他が展示されたのを観た。その中に、釈迦が誕生したときに唱えたという、「天上天下唯我独尊」を仏像化したミニチュア像があったのが、特に印象的だったのだ。この天上天下唯我独尊とは、釈迦が誕生した時、四方に七歩ずつ歩み、右手で天を、左手で地を指して唱えたという言葉で、宇宙の中で我より尊いものはないことを言うのだが、この右手に天、左手に地を示すポーズ。先日会いに行った赤ん坊が伸びをした時に、それと同じことをするのを思い出して、そういえば、赤ん坊こそこの天上天下唯我独尊を唱えた釈迦そのものじゃないかと言う気がしたものだった。
 何も釈迦だからではない。須く赤子とは、それなのだなぁと。

 それで僕も天上天下唯我独尊を決め込もうと思ったわけではないのだが、時代がいくら変われどもピアノ・トリオの原点はこれだというのに、最近遭遇した。
 タード・ハマーである。彼こそ現代を生きるバップ・ピアニストだ。思い起こせば、随分と僕はピアノ・トリオに関してはあれこれと迂回してきた。年を経るに従い贔屓が変化する。で、このところアルバム選びをする時、帯やレビューに「リリカル」とか「叙情的」とか言う言葉が入っていたら、まずパスする癖がついた。かわりに「バップ」とか「バップ魂」なんて書いてあったら迷っていてもそれをみた途端、ポンと背中を押された気になる。
 「お買いなさい。バップですよ、あなたの好きなバップ・・・」とね。

 振り返れば、ヨーロピアン系のを中心に聴いていた頃、国内盤でWHAT'S NEWレーベルというのがあるのを知った。実は当初目当てにしてのが無かったので偶々聴く羽目になったのが、吉田桂一のMUSIC FOREVERである。へー、今時バップねぇとその希少さに驚いたものだった。それから暫く彼のようなのを変わり者と思っていた。
 でも、あれこれ色んなものを聴いてきて、つい最近になって自分の嗜好が変化してきているのを薄々感じていた。ビル・チャーラップやケニー・バロン、エリック・リードあたりはまだまだ、最近のバリー・ハリス、遡ってレッド・ガーランド?、ウォルター・ビショップ Jr?!なに?!・・・自分でもどうかしちゃったのかと思ったくらいだ。
 で、とどめはこのタード・ハマーである。多分、世の中僕がヨーロッパ系のものを中心に聴いていた頃と事情はさほど変わってはいないと思う。しかし、僕は・・・。
 これは、彼の3作目になると思うのだが、ぞっこん惚れた僕は、他の2枚も即注文した。2枚のうち1枚はまだ手元にないが、そのうち来るだろう。

 このアルバム、どこがどうのなんてものではない。丸ごとひっくるめて彼のバップ魂を感じる羽目になる。
 なんなら、最近ウラジミァ・シャフラノフが弾いたRUSSIAN LULLABYをお聴きなさい。彼の実力の程がわかろうというものである。全く誤魔化しない。モーダル、ヨーロピアン、叙情的もへったくれもない。骨の髄までバップが行き渡っている。バップしてたって、情緒綿々となる。これこそ本物の叙情である・・・と、僕は思っている。
 
 今時、バップ?ダサイと思われるかも知れないが、まあ、それも致し方ない。でも、時代がいくら変わっても、誰が何と言おうとも戻ってくるのは、ここだと思う。迷わずストンと腑に落ちる。
 
 バップ、バップでっせい!
 
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