VINは盗難を防ぐのではくて、転売をできなくする(04.11.29)


このサイトを開設したのは、98年の8月。すでにISDNを私は利用していましたが、一般的にはまだまだ電話線によるダイヤルアップ接続が普通でしたので、ホームページのデータはテキスト中心の軽いものにして、フレームも使わずにサクサク動作するようにしていました。

盗難バイクをデータベース化するに当たって、どんな情報を掲載して、どんなデータは載せるべきではないか、を検討して、バイクリストのpage 1 にある項目でスタートしました。車体番号とエンジン番号がIDのように利用できるはずだ、と漠然考えていました。

車体番号はフレームに打刻されるもので、日本のメーカーが日本で販売するバイクの車体番号は、モデルを特定する頭コードと、ハイフンに続いて通常7桁のシリアル番号が振られているのが普通です。

たとえば登録No.1は私のCBXですが、それは

   NC07-1064766

です。NC07がモデルを表して、同排気量の他のモデルには数字が変わります。ホンダの場合、オンロードスポーツバイクの400ccにはNCを、250ccにはMC、ナナハンになるとRC、を当てるようです。

一方、日本のメーカーの輸出モデルや、ハーレーなどの輸入バイクの車体番号は、これよりもずっと長いものです。同じpage 1 の登録NO.16 CBR1100XX は

   JH2SC35A8VM007417

page 2 No.102 ハーレーFXSTS のそれは

   1HD1BLL14NY021770

というように、英数の17文字で構成されています。当時、これらの謎めいたコードの意味は詮索しないでいましたが、下6桁がシリアル番号であることは見当がつきました。そのために、この番号がリストで見やすいように、このシリアル番号の前にわざとスペースを入れておりました。

   NC07-_1064766、JH2SC35A8_VM007417、1HD1BLL14NY_021770

ホームページ上の表では、このスペース部分で自動的に改行されて2行になり、数字部分が目立つことを意図したものでした。やがて、データが増えて検索の手段が必要になったとき、携帯電話でも利用できるサーチプログラムを別に作成しました。そのプログラムは数字4桁で十分機能します(最大8桁まで入力可)。

そしてこの度、これまで車体番号を分割するために付加していたスペースを全リストから消去して、本来の連続英数字に戻しました。そのために、車体番号の欄が広がっていますので、テーブルのバランスが今までと違って、見にくいと感じる方もいるかも知れません。

なぜあえてそこまでするのか?

それは、当時は想像もしなかった、Googleに代表される検索エンジンがインターネット利用環境を大きく変えているからです。現在そのGoogleは当サイトの全ページをキャッシュしてくれています。ですので、ナンバープレート、たとえば「多摩を9452」とキーワードを入れると、掲載されているリストのページがヒットします。

同じように、英数だけからなる車体番号をキーワードにすれば、プレートの陸運局の漢字かなを必要としないので、世界のどこからでも検索ができます。ご自身の車体番号をフルでキーワードにして検索してみてください。ただし、英数直接入力(半角英数)です。(Googleのサーチロボットが回ってくるのに数日かかりますので、ヒットしなかったらしばらくお待ちください)

前回のエッセー「VINはワインの香り」で取り上げましたが、VINはアメリカで制度化されている車両識別番号でVehicle Identification Number の頭文字。車とバイクに個別に与えられるIDです。17桁の英数字で構成されています。17桁のVINがないと、アメリカでは登録できません。これは盗難車の転売抑止のために導入されたもので、販売、登録、盗難情報、転売など、すべてこのVINを明示することで履歴がわかるようになっています。

かたや、日本の「車台番号」はパーツとしてのフレームの製造番号です。車検証に記載されていますが、通常は意識することはまずありません。これは車検や登録のための整理番号程度にしか扱われていないためです。

この車体番号を、メーカーのパーツ番号としてではなくて、アメリカのように、車とバイク1台1台に固有のIDとして与えることにする。そして、車検や登録時は当然のこととして、転売、輸出申請の際には、このVINを提示することを法律で義務づける。もちろん、ネットオークションや雑誌上での個人売買にも適用する。すると、盗難届がでたらすぐに車体番号をデータベース化するだけで、転売が難しくなる環境ができる。ネットオークションは盗品の売りさばく格好の場であるが、VINを掲載することで、今度は被害者が検索エンジンを使って逆に監視することが可能となる...これは夢ではなくて、現実にできることです。すでに技術と手段は存在しているんだから、やればいいだけのことではないか、と思わずにはいられません。

盗んだバイクを転売できる環境、条件があるから、窃盗が横行する。逆ではない。だから、その環境をそのままに、いくら犯人を検挙しても、窃盗はなくならない。けれど、盗品を転売しにくい環境さえつくれば、バイク窃盗は自ずと減るはずです。「車体番号」ではなく、「バイクのIDとしてのVINの運用」の議論を、折に触れ続けていこうと思います。



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