台湾から第2次分の8台のバイクが帰還 (05.2.19)




台湾から第2次の引き取りバイクが横浜に到着しました。初回の奪還に続き2度目となる今回は、じつは同じことの繰り返しではありませんでした。

今回も無事到着

私たちが昨年8月に台湾に渡って3台のバイクを引き取った際に、台北と高雄で警察に押収されているバイクで、所有者が分からないままでいるものが多数ありました。そのVIN(車体番号)を当サイトに掲載しておりましたが、所有者と連絡がついたバイクのうち、取り戻す意思を表明したオーナーの3台と、8月以降に新たに押収されたバイクから5台の計8台が、今回返還が実現して、横浜で2月8日にコンテナから取り出して現物を確認するとともに、取材にきてくれたテレビ、新聞、雑誌記者のインタビューに応じました。

すでに『ヘッドライト・テールライト』にて速報でお伝えしておりますが、その8台とは以下の車種です。

 BMW K1200RS (8月訪台時に高雄警察にて現物チェックしたもの)
 HONDA VTR SP-1 (同上)
 YAMAHA FJR1300(同上)
 HONDA CBR600F4i(当サイト登録番号 2'856)
 HONDA CB1300
 HONDA RVT1000R
 SUZUKI GSXR-1000
 SUZUKI GSXR-1000

returned bikes1
returned bikes2

これら8台はすべて高雄警察が保管していたものです。この8台のうち、2月17日現在でオーナーからの書類の揃った4台がすでに通関手続きが完了し、いつでも引き取れる状態にあります。しかしながら、今回の返還対象車はじつは10台でした。


2台は消えていた

私たちが台北で現物チェックしたバイクのうち、

 BMW R1200C
 HARLEY LOW RIDER

の2台についてオーナーが確認できて、うちハーレーのオーナー夫妻が12月の訪台に同行したのですが、いざ愛車に対面しようとしたら、なんとそれが処分されていたというのです。私達の代表とともに他にテレビ朝日、読売新聞の記者が同行取材しましたので、その生々しい映像をテレビでご覧になった方も多いでしょう。

なぜこの2台だけが処分されていたのか、

8月訪台時に会見に応じてくれた大同警察署は今回も歓迎してくれて、協力的でしたが、2台が保管されているという屋外の保管ヤードに行くと、あるはずのその2台が無く、しかもヤードの責任者から取材拒否をされてしましました。

台湾では押収されてから3ヶ月以内にオーナーが引き取らないと、バイクは処分されてしまうので、8月から3ヶ月以上経っていたために、誤って処分されていた、と最初は想像しました。ところが、8月に見た他のバイクがまだヤードにあるので、正確には、この2台だけが行方不明になったというのが事実です。台北の警察が調査中とのことですが、ここにも、海外からバイクを取り返すことの難しさの一端が見え隠れします。


インターポルを介しての返還

今回の返還が初回と違うところは、8月の返還訪台では、該当車が当サイトの登録者であったために、すぐに本人と連絡がとれて返還の意思を確認することができて、台湾に飛ぶことができたことでした。警察自体は盗品の返還事務を行うことはありませんので、初回の奪還レポートに記したように、現地に乗り込んで取り戻す手続きを決行しました。

ただ、レポートでは詳しく触れなかったことがあり、それは準備作成した書類についてでした。とにかく、オーナー証明、本人証明、盗難証明、車両登録(廃車)証明、など、現物確認と所有権申し立てができるよう、考えられる書類を皆そろえた上に、それらの台湾語への公式翻訳まで添付しました。

その結果、台湾での引き取りのみならず、現地での船積み通関、さらに横浜での輸入通関と陸運局での再登録に不備はありませんでした。けれど、手間とコストがかかったのも事実です。

それに対して今回は、日本のインターポルが台湾のインターポルからの依頼に基づき、バイクのVIN(車体番号)情報から、それらが日本で被害届がでているものかどうか、調査してくれたものです。届けが出ていたら本人に連絡をとり、取り返す意思があるようなら、私たち「全国二輪車環境改善ネットワーク」が返還事務を引き受けている、と言い添えてもらっています。

したがって、日本と台湾の警察が捜査の一環として被害者情報を交換しておりますので、その情報は当然私たちに知らされることはありません。オーナーからの連絡があって、初めて何台のバイクを取り戻せることになるのか分かる、という状況です。

利点は、日本のインターポルが被害者確認を台湾に伝えてくれているので、台湾での引き取り時に盗難証明やら、オーナー確認の書類が省けて、すんなりと引き渡されたことでした。

さらに、インターポルが介在してくれることで、台湾のみならず、他の国で同様のケースが発生した場合でも、私たち民間ではでききれないことが、両国の警察間で調整がつくようになるものと期待できます。これが今回、インターポルの協力が得られたことの成果です。


ライダーも島国から飛び出せ

「水を発見したのはすくなくとも魚ではない」ということわざがあります。水の中にいる魚は水を意識することがない、という意味で、水から出て初めて、自分は水の中にいたんだ、と気づくことの喩えです。

同じような日本のことわざに「井の中の蛙大海を知らず」があります。これは、上のことわざ風に言い換えると、「井の中の蛙、井を知らず」となります。大海を知らないのではなくて、自分の住んでいるのがちいさな井とは気づかない。もっと言うと、自分の井を大海と思っている、ということになりましょうか。

バイクを海外から取り戻したという事実ができたので、少しずつですが、ライダーの意識、メディアの扱いにも変化が見られます。なんといっても、窃盗団が国際的組織ですので、ライダーや警察が自国に閉じこもっていては話になりません。敵がインターナショナルなら、こちらもさらにインターナショナルで対抗しなければ勝てるわけがありません。

これまで、「海外に持ち出されたらもうだめだ」と勝手に諦めていた蛙根性を払拭する、これがいいきっかけになればと思います。

オーナーに知られずに、あるいはオーナーに見捨てられて、処分されるのをただ待っているバイクたちが今も台北と高雄の警察の保管所に佇んでいます。その新しい写真はありますが、もはや掲載する意味がありません。オーナーに見放されたバイク、オーナーに捜してももらえないバイクは、せっかく助けてくれた人がいても、かわいそうですが、救うことはできません。

タイや台湾では、日本で盗まれたバイクが自国に入ってきていると聞いても、一般の普通の人たちからは「日本人はお金持ちだから、バイクくらい盗られても平気でしょう」という反応が返ってきます。とんでもない、と私のような貧乏ライダーでなくても義憤にかられそうですが、同時にそれが全くの的外れではないことに気づかされます。



[楽しいバイクライフのために] へ戻る