1.ソリューションの視点

誰にとってのソリューションなのか、立場と言い換えても良い。ソリューション、すなわち問題解決の成果・利益の受益者をどう考えるかである。例えば以下のように考える。

・国家的視点
・都市の視点
・企業の視点
・特定の集団の視点
・コミュニティの視点
・家族の視点
・個人の視点
・地球視点(環境要因)

 どの視点から問題を解決するかがまず確認されなければならない。昨今の問題とされる現象の多くは利害関係者が多岐にわたることをまず認識すべき、そして利害関係者のみならず、見落としてはならないのは、社会的責任や環境要因すなわち地球視点からソリューションを考えていかなければならない。

2.問題の構造  
視点や立場によって問題が変わってくる。同じ現象・実態であってもある集団や人の立 場からは問題ではなくとも、ちがう集団や人の立場にとって問題ということがある。殆どの場合がそうである。

 したがって問題は立場によって変わってくるということであり、問題と、問題の構造を 明確に把握する必要がある。

 問題とは、 「あって欲しいという願望と実態とのギャップである」また「解決しようとすることがら である」−こう定義できる。  (解決しようとの意識<いわゆる問題意識>がなければ問題とはならない。)

 その際、どの視点・どの立場から「あって欲しいと願望」するか、換言すれば目標をどう設定するかで、問題が決まってしまうということであり、どう設定するかは視点・立場 の置かれている条件によって異なってくる。

 したがって、問題の構造は、目標と視点・立場の置かれている条件(制約条件)によっ て決定される。

 
 尚、問題には積極型と消極型がある。
 前者は2つあり、あるべき姿のビジョンを設定し積 極的に実態とのギャップを創り出し問題解決を図ろうとするビジョン実現型。

 もう1つは 現時点では問題が発生しているわけではないが、自ら一段高い目標を設定し、意識的にギ ャップをつくりだすという向上型である。 後者も2つあり、1つは同じく現時点では問題 は発生していないが、このまま放置していると近い将来何らかの問題が発生するであろう という予測型。もう1つは発生してしまった病を治す場合のように不満や不備の解消を図 る発生型である。

 したがって問題には積極型、消極型の2つあり、 「過去−現在−将来」の時間軸に沿って換言すれば、   
・発生型
・予測型
・向上型
・ビジョン実現型        

の4類型があるということが出来る。

 そして発生型と予測型は「モグラたたき型」、向上型とビジョン実現型は「目標志向型」 と言いかえることができる。  

3.ニーズに関して

■組織にとってのニーズと個のニーズをわけて考えた方がよいと考える。顧客(個客)が自己のニーズをどう扱っているか、すなわち「組織人としての」と「個 としての」との両方の狭間の中で、慣性的かつ本能的な判断を下していることが多いと考 えられる。実際「組織にとってのニーズ」というのは一人では決め難いし、目的・目標なり方針が 明確に示されること自体、極めて少ないからでもあるが、その本質は個たる人の根源に関 わるところにあると考える。

 すべてのことを最高責任者一人が決める訳にはいかない。 したがって大方の組織人は、自部門の組織目標はこうであり、自部門の組織ニーズはこうであろうとの仮説の元に決定 を下さざるを得ない。 購入決定を下す組織人にとって最も楽な目標設定の道は「最も安い こと」という設定である。

 それが個にとって最大のニーズである責任回避を最も楽に満たす方法だからであるし、部外者に最も判りやすい評価指数であるからである。 多くの勤勉な組織人を弁護する理由を敢えて探すならば、上に述べた理由により「ニーズ そして課題が不明確」だからでもある。(単純に言えば、自分で探して決めないからである。)

 したがって「価格以外は同程度だから・・・」という言い方がよくされるが、それはニ ーズの把握がその程度にしか認識されていないからの裏返しの表現に過ぎない。一方「高いけれどもこれに決めた」というのは、ニーズを的確に把握しているとも言え る。  

 このように、 最低限「これ」が秀でていたからという「これ」という理由がなければニ ーズに対応した判断とは言えない。なぜなら、価格以外の要因が全く同一ということはあ り得ないからである。

 このような事態の根源は「個のニーズは好かれること」と言って良いからである。 個の ニーズは他に生きる術がない限り、周辺から「好かれること=嫌われないこと=受け入れ られること=責任を追及されないこと」ということではないだろうか。個体の生命原理か らきていると考えられる。  
 
 一方で組織の目標、ニーズは極大利益の獲得である。組織(法人)は個の意識や感性を 持たぬが故、合目的的行動を採る。 組織のニーズと個のニーズには以上の関わり合いがあ ると考えられる。日本人の多くは目的や組織ニーズを課題と考えるよりも自己及び自己の周辺に配慮した、 すなわち上に述べたような個のニーズを優先して決定を下す事が多い。

■ここに日本人特有の思考文化的問題が所在する。
(アージリスは人間の自己防衛について、次のようにも述べています。
 →アージリスの紹介コーナーへのリンク
■ソリューションの提供とは!  

 従って、ソリューションを提供すると言う場合、上に述べ たニーズ認識からのアプローチが不可欠となる。先の項で述べた問題の類型に照らし合わせソリューションを考えていくことが、提供者としての責務となる。また営業者にとって みれば、他社と差別化した優位な注文を獲得するための戦略課題となる。

 すなわち顧客側 の個のニーズと組織ニーズとの見極めが必要であり、営業者は当然ながら組織課題に対するソリューションの提供を目的とするということである。
顧客の組織課題を明確にする事もソリューションプロバイダーの責務である。


 【補足】:
 組織目的・目標の上位概念として、組織としての価値の共有があれば、個のニーズを凌駕すると考えられるます。例えば、宗教的非合理的価値共有、団体スポー ツにおけるゴール実現後の感動と栄誉への価値共有等。  

 上記のニーズに関する所見はこれらがない組織(殆どの組織が該当する)を前提に述べ ています。      


本コーナ1.2項は以下を参考にしています。
『問題構造学入門』(佐藤允一 著)


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