Fallin'
11
「舞、自信の方は?」
「バッチリ!……多分」
今日は中間テスト一日目。
現在3時間目の休み時間で、4時間目は問題の英語のテストだった。この日の為に必死で勉強してきたという自信はあるが、それでも100点という壁は厚い。
「どうしよう、弘人…。なんか緊張してきた」
「あはは、トイレ行ってきたら?」
「そ、そうだな。一応行っとくか」
そう言って舞は、ガタンと音をたてて立ち上がり、その勢いで椅子はハデな音と共に後ろに倒れた。
「……。じゃ、じゃあ、行ってくる」
(舞……、お見合いするんじゃないんだから……;)
(あ〜どうしよ、マジで緊張してきた。…とりあえず出すモン出してすっきりさせるか)
「あ…」
舞が生徒用トイレのドアを開けると、トイレの隅でたむろしていた男子生徒の一人が声を発した。
(ゲッ……)
そこに居たのは4人の一年生で、そのうちの3人は先日千歳にからんでいた生徒だった。
「うわぁスッゲェ偶然。今、お前の事話してたトコだぜ?」
「ムカツク〜、って」
ニヤニヤと笑いながら近付いてくる4人に背中を向けてトイレを出ようとするが、一人に腕をつかまれた。
「なに逃げてんだよ?3対2なら向かって来るクセに、4対1じゃ逃げんのかよ。“まーくん”それはイタダケネーよ?」
「都合の良い理屈言ってんじゃねーよ。テメー等こそ1対1じゃ何にも出来ねークズのくせに。つか、“まーくん”言うな」
「ほらな、生意気だろ?」
先日は居なかった一人に、バカにした様な顔で確認するのに、ムカッと腹が立つが、今はこんな所で喧嘩している場合ではない。
「今日はテメー等の相手してる暇ねーんだよ。離しやがれ」
「そんな事言われたら余計、離す訳ねージャン。バカじゃねーの?お前」
「!!」
(舞……、長いな…)
まさか大きい方か…?などと弘人が考えていた事は、舞には内緒にしておいた方が良いだろう。
(それにしても、そろそろ戻って来た方が良いと思うんだけど…)
時計の針は、もうすぐ休み時間が終わる事を示していた。
「誰かぁ!!出してくれっ!!」
その頃、舞はトイレの掃除用具室で力いっぱい叫んでいた。しかし、トイレの両隣は廊下と空き教室で、テスト期間中という事もあり廊下に人気は無く、舞の声が誰かに届く事はなかった。
「クソッ!ふざけんな!なんでこんな時に…っ」
用具室のドアに体当たりをしようと試みても、体育座りのような形で両手と両足をベルトで一まとめに締められている為に、ほとんど身動きがとれない。
(ちーちゃん……っ)