ヘリオブルー
レディッシュ
3
ええと、
ここは男子校で
そして……
アレ?
「久堂蘭丸(くどう らんまる)ですっ、蘭ちゃんって呼んでね♪
蘭丸なんて呼んだら、脳天かかと落とししちゃうゾッ」
私立華宮男子高校1年B組。
入学式を終え、彼らは今まさに恒例であろう自己紹介の真っ最中なのだが…。教室内の異質な存在に、クラス一同フリーズしていた。
(お…女の子……?)
生一が困惑するのも無理はない。生一の隣で自己紹介をする久堂蘭丸その人は、『女子の制服』を着ていたのだ。…そう、男子校には決して存在しないはずの女子の制服を…。
生一同様、クラス中に?マークが飛び交っているのがわかる。
「ちなみにー、当たり前だけど私は男の子ですっ。面接の時に女装して行ったら、合格した後に理事長が『こんな事もあろうかと用意してあった物が役に立った』って言って、このスカートとリボンタイをくれたので、ありがたく受け取りましたっ」
なるほど、理事長が用意していたのなら、この完成度の高さもうなずける。皆の制服のズボンと同じ柄のスカート、同じ色のリボンタイ。この学校が共学校だったら、女子の制服はきっとこんな感じなのだろう。ふわふわの長い髪に大きなリボンを結んだ蘭丸にはとてもよく似合っていた。というか、どう見ても美少女にしか見えない。
でも、
「こんな事も
あろうかと」
って…何!?
もしかして、他にもなにか用意してあったりするのだろうか……。謎だ。
ていうか、いいの?
「せ〜いちゃんっ」
「わっ、ら…蘭…ちゃん」
今日の予定が終わり、寮に戻ろうと生一が席を立つと、隣の席の蘭丸が抱きついてきた。
そして、抱きつかれてみて初めて、この女装少年の上背の高さに驚く。
身長がある分、一見華奢に見えるが、意外にもしっかりと筋肉は付いているらしく、触れる腕や胸板はふわふわとした外見に見合わず、がっしりとした男の身体だった。
キョウと同じくらい…?などと生一が思いを巡らせていると、後ろから抱きついたままの体勢で蘭丸が顔を覗き込んできた。
「ねえねえ、もしかして生ちゃんって寮生?」
「あ、うん。家から遠いから…」
「あ〜〜ん!やっぱりそうなんだっ。こんなに可愛い子が居るって知ってたら、私も寮に入ったのにっ!!」
え……?
「しょいがないわ…。今年一年は我慢して、来年から寮に入るとして――。でも生ちゃん大丈夫かしらー?可愛いから心配だわ〜っ。いーい?生ちゃん、なにかあったらすぐに私に言うのよ?私はこう見えても小さい頃から空手と柔道をやってて、喧嘩なら負けた事ないんだからっ」
えっ…?
「それから…。一目惚れですっ。お友達からでいいので、お付き合いして下さい」
………。
えええええええええっ!?
一見 美少女風オカマの久堂蘭丸は
どうやら一癖ありそうだった…。