ヘリオブルー
レディッシュ


「せいちゃ〜ん、帰りましょ〜
「う…うん」

 入学式の日に告白されて以来、生一は、蘭丸と校門までの短い距離を一緒に帰るのが習慣となっていた。
 そんな短い時間の中でも、しゃべっているのはほとんど蘭丸の方で、こんな会話一つ満足に膨らませられない自分と一緒に居て何が楽しいのか生一は不思議だったが、蘭丸にとってはそんなところも可愛くて仕方がないのだ。

「あ、生一君っ」
「あ……」

 生一達が生徒用玄関を出ると、ちょうど二年生の方の玄関から現れた遙に声をかけられた。
 一緒にいた共一は、横目でちらりと生一を一瞥して先に歩いて行ってしまう。

「生一君、これから帰るとこ?僕たちは図書館に行くんだけど、良かったら―――」
「遙!…行くぞ」
 良かったら一緒に…と言おうとした遙の言葉を遮った共一に、生一の胸がシクリと痛んだ。
 遙は共一の様子に苦笑すると、肩をすくめて「じゃあね」と生一達に手を振った。


「今のが…、お兄さんと…清水先輩?」
「……うん」
 肩を並べて歩いていく二人をうつろな目で見つめる生一に、蘭丸が肩に手を添えながら問いかけると、心ここにあらずといった声で返事が返る。

「お兄さんと…、喧嘩でもしたの?」
「………んーん…」
 答える声が涙声になっている事に気付き、蘭丸が顔を覗き込むと、生一の目には今にもこぼれ落ちそうな程の涙がたまっていた。

「わかんない……。僕…なにかしたのかなぁ……?」
「せいちゃん…」
 堪えきれずに泣き出してしまった生一を胸に抱きしめ、蘭丸は自分のあごの下に引き寄せた頭を、よしよしと優しくなぜた。
「せいちゃん…、これから私の部屋に来る?一人暮らしだから、ちょっと散らかってるけど…」

「…うん」

 生一の小さな返事に、蘭丸は心の中で軽くガッツポーズを決めた。

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