ヘリオブルー
レディッシュ


「それで、せいちゃんに冷たく当たる理由は何なのかしら?」
 しばらく無言で引きずられていた蘭丸の突然の質問に、共一は足を止めた。
「……お前に関係ないだろう」

「関係大アリよっ!!」

 突如豹変した蘭丸に圧され、共一は一歩後ずさる。
「私は正々堂々とせいちゃんをゲットしたいの!お兄ちゃんに冷たくされて落ち込んでる所につけ込むようなのはイヤなのよっ」
「なっ……」

「それに、せいちゃん……、きっとアンタのことが好きよ…」

「………」



「あのね、僕とキョウの名前は『共一と生一、ふたりの一≠合わせて二≠ノして、学年が離れてしまっても二人で共に力を合わせて生きていけますように≠チていう意味で両親が考えたんだって」



 そう嬉しそうに頬を染めて話す生一は、まるで大好きな恋人との事を惚気てでもいるような温もりに満ちていた。

「…その顔は、言われなくても知ってるって顔ね」
「……俺とあいつは兄弟だ。…そんなのおかしいだろ。許されるはずないっ」
 苦々しく吐き捨てた共一に、蘭丸は呆れ顔で溜息をついた。
「なによそれ?バカみたい。許されないって何?アンタ、誰かに許してもらえなきゃ人を好きになる事もできないの?大体、近親婚が許されないのは、万が一、近親間での繁殖が繰り返された場合に、奇形や極端に身体の弱い子供が産まれる可能性が高まるからよ?要は、子供が出来なきゃ関係ないじゃないっ」

 そこまで言って、これではまるで生一と共一をくっつけようとしている様だと気付き、次の言葉を探して、しばし無言でにらみ合う。

「とにかく。私が身も心も真っサラになったせいちゃんをモノにするためにも、あんた達には仲直りしてもらいたいのよ。それでせいちゃんの気持ちを受け入れられないなら受け入れられないで、ハッキリさせてあげなさいよっ。いつまでもこんなんで良いと思ってるわけじゃないんでしょう?」

「………」

 何も言わない共一に、蘭丸はハァ…と溜息をついた。
「せいちゃん言ってたわよ。『キョウが理由もなく僕を避けたりする訳ないから、きっと僕が何か嫌われるような事しちゃったんだ…』って。……別にせいちゃんの事、嫌いになったわけじゃないんでしょ?」

「っ………」

「まったく、しょうがないわねっ。ホラッ、とりあえず教室まで私を送ってよ」
 そう言ってまたもや首に腕をからめてのし掛かってきた蘭丸を、共一は渋々引きずって歩き出した。
 敬語はどうしたとか、後輩のくせに態度がでかいとか、言いたい事は山ほどあったが、今はこれから1‐Bの教室へ行く自分が、はたしてそこで生一にどう接するべきなのか、その事で頭が一杯だった…。

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