ヘリオブルー
レディッシュ

17


 疲れた。とにかく憂鬱だ…。

 共一は、朝の廊下を教室に向けて歩いていた。…仏頂面を引っさげて。
 本当なら、今日は学校になど来るような気分ではない。何てったって、昨日から機嫌は最悪だ。仮病でも使ってサボりたい所だが、そこは寮生の悲しい事情…。余程うまくやらないと、仮病はバレる。

(何で寮になんて入っちまったんだろうな……)

 遠い目でそんな事を考えてみるが、理由は至極単純で、寮に入った方が安上がりだったからだ。これはしょうがない。

ハアッ

 大げさに溜息をついて教室まであと一歩という角を曲がると、共一のクラス前で大柄なオカマが仁王立ちしていた。

 猛烈な脱力感と共に再び大きく溜息がもれる。もう、足を動かす気力も根こそぎ殺がれてしまった。
 もう歩きたくない。何も考えたくない。つーか、帰りたい。

「ちょっと、朝っぱらから何 疲れきってんのよ」
 共一が廊下の壁にもたれ掛かりながらグッタリとうな垂れていると、いつの間にか目の前にまで来ていた蘭丸に、呆れたように声をかけられた。

 ああ、やっぱり俺に用事なんだな…。まあ、そりゃそうか。

「何の用だ……」
 共一がゆっくりと顔を上げ、不機嫌丸出しの顔を見せると、蘭丸は挑戦的な目でフンッと鼻を鳴らした。
「話があんのよ。ここじゃ何だから、場所変えましょ」
「……わかった」
 共一の返事を聞いて歩き出した蘭丸の後を、共一は重い足と感情を引きずりながら歩きだした。





「あれ。どうしたの?二人で」

 共一と蘭丸が連れ立って歩いていると、横からのん気な声がかかった。
 それは蘭丸も聞き覚えのある声で…。

「遙……」
 共一の口から怒りのこもった声がもれる。

(清水遙……!)

 今回の騒動の元凶だ。
 蘭丸は勢いよく体を反転させ、ギロリと遙をにらみ付けた。

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