ヘリオブルー
レディッシュ

24


「はあぁ〜、もう…。私も学校サボっちゃおうかしら……」
 蘭丸は、階段を下りる足を止め、全身を脱力させると、壁に寄りかかり大きく溜息をついた。

 今朝、蘭丸が 生一は今日は休みだと告げた途端、教室とは逆方向に歩き出した共一は、きっとあのまま生一のもとへ向かったに違いない。
 しかし、一時間目の授業が終わり、二人の事が気になって共一のクラスを覗きに行った蘭丸だったが、そこに共一は居らず、蘭丸の姿に気が付いた遙によって、共一がまだ戻ってきていない事を知らされたのだ。

(共ちゃんってば、このままサボる気ね…。……という事は…、まさか生ちゃんと良い感じにっ…!?)

 有り得る話である。いや、むしろそうとしか考えられない。
 生一は確かに寝不足などもあり体調が悪そうだったので、今日は休むように勧めたが、だからと言って看病が必要な程ではないのだ。そんな生一のもとから、小一時間たった今も戻っていないということは…、………誤解がとけた拍子に二人の思いが通じ、他に誰も居ないのを好機とばかりにイチャついているとしか……。

(イヤー――!!)

 嫌な想像が頭を過った蘭丸は、目前の残り6段の階段を一気に下まで飛び降りた。

グキッ

(アラ……?)

「いったぁ〜いっ!!」
 自身の忌まわしい想像に焦りすぎた蘭丸は、踏み出した足をあらぬ方向に捻ってしまった。

(ああ…、ついてないわ……)

 その時、捻った足を押さえてうずくまる頭の上から、溜息と共に呆れたような声が聞こえた。

「何をやっているんだ、お前は…」

「え……」
 蘭丸が顔を上げると、眉間にしわを寄せた共一が、呆れ顔で自分を見下ろしていた。
「共…ちゃん……」
「お前はバカか?変なのが壁に張り付いてるかと思ったら、いきなり階段を飛び降りるなんて…。パンツ丸見えだったぞ」

(う……っ。…パンツ見られた……

 まさか見られていたとは……。蘭丸は完全に周りが見えていなかったらしい。足だって挫くはずである。



 共一の顔を見上げた蘭丸は、ある事に気が付いた。
「共ちゃん、目が赤いわ。……泣いた?」
「っ、泣いてない」
 赤くなった顔を背けた共一は、そのまま背を向け、蘭丸の目の前で腰を落とした。

「?」
「早く乗れ。ケガ人」

 予想していなかった共一の言葉に、蘭丸は目を丸くして驚いた。

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