You are my
reason to be… 2
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「じゃあ、行って来る。夕方までには帰るから」
「……いってらっしゃい」
「慶介先輩?」
「え?」
出掛ける前の出流(いづる)の様子を思い出してボーっとしてしまっていたようだ。
出流が、七瀬との事をあまり快く思っていないのは、先日の屋上での様子から気が付いていたが、七瀬の事をただの後輩としか思っていなかった慶介としては、どうしていいのか分からなかった。
七瀬の事は、自分を慕ってくれる後輩として大事に思っており、しかし出流を大切に思う気持ちとは全くの別物なのだが……。結局何も説明できず、出流の気持ちをなだめられないまま今日が来てしまった。
(帰ったら、ちゃんと話した方が良さそうだ)
「慶介のバカヤロウ……」
一人の部屋で、出流は空しく呟いた。
そういえば、最近まともに話していない。……原因は十中八九、出流のトゲトゲしい態度のせいなのだが…。
(こんなんじゃ駄目だよな……)
一人になって少し冷静になった出流は、自分の態度を反省し、慶介が帰って来たら今までの態度を謝って、意地を張らずに素直な気持ちを話そうと、目尻ににじんだ涙を拭った。
慶介ならちゃんと受け止めてくれる。……よね?
買い物を終え、七瀬に誘われた喫茶店で一服していた慶介は、腕時計で4時を少し回っている事を確認すると、そろそろ帰ろうかと、向かいの席に座っている七瀬に視線を向けた。
「……?どうしたんだ?」
赤い顔で俯いていた七瀬は、
「ごめんなさい、先輩……。僕、なんだか具合が……」
と、申し訳なさそうに弱弱しい声で言うと、また辛そう俯いた。
「歩き疲れたんだな…。大丈夫か?……もう帰ろう。家まで送るから……」
「はい……。済みません」
七瀬は、中学の頃からこのように突然発熱することがあった。
そういえば、部活中に倒れて、慶介が保健室までおぶって行った事があったなと思い出す。
さすがに、街中でおぶって歩く訳にはいかないが……。
「おじゃまします」
七瀬を片腕に凭れ掛けさせながら玄関を開け、人の気配が無いのに気付いた。
「誰も居ないのか?」
「はい……、今日は皆出掛けていて……」
「そうか……」
(まいったな……)
具合の悪い七瀬を、家族の居ない家にこのまま残して帰るのは気が引ける。
(家族が帰るまで、様子を見てから帰るか)
……遅い。
部屋の真ん中に正座した出流は、イライラと時計を見上げた。
…もう8時を過ぎている。
夕方までには帰ると言って、部屋を出たはずだ。
(まさか、慶介に何かあったんじゃ……)
急激に不安に襲われた出流は、携帯で慶介の番号を呼び出し、コールボタンを押した。
Prrrr!Prrrr!
突然部屋に鳴り響いた携帯の呼び出し音に、ビクリと驚く。鳴っているのは、出流の携帯ではない。
おそるおそる音源を確認すると、慶介の机の上で空しく鳴り響く携帯電話の存在があった。
出流は、力いっぱい携帯を切り、
「……あんのバカっっ!」
怒りに打ち震えた。
慶介は、出流からメールが入っていないかと、ズボンのポケットを探り、目当ての物が指に触れない事に気付く。
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あ……。
携帯忘れた。
(しまった……;)