You are my
reason to be… 2
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「具合はどうだ?」
「はい、大分楽になりました」
慶介が作ったたまご雑炊を食べ、自室のベッドで横になった七瀬は、ある程度回復したのか、顔色も戻ってきていたが、その頬はまだ少し赤い。
まだ七瀬の家族は帰っていないが、もう帰っても大丈夫だろう。
さすがにこれ以上遅くなるのもマズい。出流(いづる)も心配しているだろう…。
「じゃあ、俺はそろそろ帰るよ」
慶介がそう言って立ち上がりかけると、七瀬は「えっ…」と慶介の腕を咄嗟に掴んだ。
「先輩……、帰っちゃうんですか…?」
「え?…ああ。そろそろ家族も帰って来るだろう?」
「帰って来ないです」
「え?」
「今日は、誰も帰って来ないんです……」
え……?
「先輩…、帰っちゃやだ……」
今にも涙が零れ落ちそうな瞳で懇願され、慶介は心底困っていた。
「七瀬……」
慶介は、なんとか宥めようと声を掛けるが、七瀬は慶介の背中に両腕を回してしがみ付き、イヤイヤと首を振る。
「やだ……。先輩お願い…、帰らないで……。一人にしないで」
(まいった……)
慶介は、降参とばかりに天井を見上げた。
9時……。
まだ二人は一緒に居るのだろうか…。
(何やってんだよホント……。慶介……)
遅くなるなら一言連絡くらい入れてほしい。遅くなること自体も嫌だが、こんな風にいつ帰ってくるかも分からない状態はたまらない。
携帯を忘れて行ったために、出流の携帯番号が分からないとはいえ、ちょっと遅れるくらいならともかく、こんなに遅くなるのなら、電話帳で寮の電話番号を調べて、出流を呼び出してくれても良いではないか。
(慶介の中で、俺の存在ってこんなモンな訳……?)
自分が心配しているなんて事は考えないのだろうか。もしかしたら、外で出流の事を思い出すことなどないのかも知れない……。
自分は、どこに居ても、何をしていても、慶介の事ばかり考えてしまうのに……。
そういえば、慶介の口から「好きだ」と言われた事があっただろうか……?
(言われて……ない)
自分は、何か勘違いをしていたのだろうか?付き合っていると思っているのは自分だけで、慶介は……。
いや、違う。椎名に「付き合うことになった」と報告したのは、慶介の口からだった筈だ。
「もう……、訳わかんないっ。慶介のバカっ……」
出流は、慶介が帰ってきた時に自分が泣いていたらビックリするだろうと思い、グスっと鼻を鳴らして涙をこらえた。
その頃の慶介は、七瀬の懇願に負けて、ベッドの横に布団を敷きながら悩んでいた。
(電話……しても良いんだろうか?)
時刻は9時を回っている。
最近、出流は寝るのが早い(フテ寝なのだが…)もう眠ってしまっているかも知れない。
(まいった……。ほんと…、まいった)
携帯…、ちゃんと持って歩かないとな。
慶介は、本来あたりまえの事を、改めて心に刻んだ。